第34話 3人で添い寝



 俺は生粋のドSだけど、これでも結構我慢してると思うんだ。

 濃厚なキスをしたり、抱きつかれたり、迫られたりしても、俺は自我を保ってる。

 ……まぁ、先輩もそうなんだけどさ。


 添い寝はどうなったかって?

 今まさにしてるところ。

 何もできないってわかってるくせに、俺の心臓の鼓動は早くてうるさい。


 今は3人、川の字で寝てる。

 客間の入り口から、先輩、若菜、俺の順番で。


 ーーだいたいさ、若菜のパジャマが悪いんだよ。なんで大きめのボタン付きTシャツにショートパンツなわけ?

 はたから見れば、ショートパンツを履いていないような、超ミニワンピースに見えるんだぞ?

 若菜に悪気はあろうがなかろうが、こういうのを誘ってるっていうんだよ。

 俺、間違ってないよな?


「2人とも起きてる?」

「はい、起きてます」

「俺もです」


「今日は俺のわがままに付き合ってくれてありがとう。前にも話したけどさ、俺の両親、早くに他界しちゃってね。弟妹と3人で暮らしていたんだ。その時俺は高校でさ。なんとか弟妹を学校へ通わしてやりたいって足掻いてたんだ。

 でもさ、みんな同じで。2人も俺を大学に入れてやりたいって思ってくれてた」


 先輩は、天井の橙色の照明を見ながら話を続けた。


「結局、子どもの力だけでなんとかするって、無理だったんだよね。母方のおじさんおばさんに頼んで、手続きとか一切合切手伝ってもらってここにいる。幸いにも、両親はお金と家を残してくれたから、特に揉め事にもならず済んだんだけど」


 先輩は、若菜と俺に向き直って言う。


「こういう寝方してると思い出すんだよね、昔を。もう弟妹は俺の手を離れたけれど、やっぱりしみじみするよ」


「先輩……!」


 ーー!


 若菜は感動のあまり、先輩を抱きしめてた。

 俺は苛立ちと焦りでザワザワする。


「ねえ? 慰めてくれる? 若菜ちゃん」


 先輩は若菜の上に手をついて四つん這いになり、おでこ、頬、首筋にキスを落としていく。


「あ、んっ」


「若菜ちゃんのその声。そそるんだよ。まさか、誘ってるの?」

「誘ってなんか……い、ま……」


 ーー俺も、負けてられない。

 絡み合う2人の方へと移動して、若菜の耳元で囁いてみる。


「今日、下着何色か当てようか」

「えっ? 下着……?」


 こうしている間にも、先輩はガンガン攻めていっている。


 ーー負けられない。


 俺は若菜の首筋にキスをしながら、パジャマのボタンをぷつり、ぷつりと開けていく。


「んんっ雅貴、やっ、やだぁ」

「どうして? こんなに可愛いのに」


 俺たちはいつの間にか、若菜の手を一本ずつ拘束していた。若菜は、バンザイした格好でなすがままにされている。


「俺のために下着買ってくれたの?」

「今日、頑張るって決めてたから」

「じゃあ、下も脱がせて?」

「ひゃあっ!」


 俺は布団を剥いで、若菜の全身を露わにする。

途中まで解かれたボタン。

 バンザイで無抵抗の若菜。

 ショートパンツを脱がせれば……。


 若菜は、赤い下着に黒いネグリジェを着ていた。ネグリジェは透け、赤い下着が薄ら見えてそれがまたいやらしい。


 若菜の目は潤んでいた。

 でも、俺も先輩も、もう止められない。


 若菜の全身に、キスと愛撫を落としていく。

 身をよじりながら逃げようとする若菜は、最高に可愛い。


 俺は胸を触りながら、若菜に熱いキスをした。

 先輩もどうやら、胸を触りながら首筋にキスをしているようだ。


「こっ、降参です。今日のところは、勘弁してください……」



 ーーこうなるとは思ったけど、キッツイな。


 若菜の可愛いお願いに、俺たちは仕方なく応じた。


 もう一度言うけれど、ここで止められるのはかなりキツイ。褒めて欲しいくらいだ。


 攻めるのはやめたけれど、若菜の乱れた格好を視ていると、それだけでそそられる気持ちは変わらなかった。


「若菜、可愛すぎだろ」

「ありがとう、若菜ちゃん」

「はい……」


 若菜はすっかりトロンとしていた。

 俺はパジャマを直してやり、頭をポンポンと撫でると、若菜はなぜか急にピタリと止まった。


「あっ!」

「どうした?」


 若菜が急に叫ぶもんだから、びっくりして大声出しちまった。先輩も同様に驚いている。


「先輩、足の方にもキスマークつけてましたよね?」

「だめだった?」

「あの……、ファンデーションで隠さないと、制服着られないなって」


 それは困る。

 若菜の全身についたキスマークは、「出来事」を想像させるから、特に営業職のヤツらには見せたくない。


「私いつもスカートですけど、明日はパンツルックな制服の方にしようかな。スカーフは巻かなきゃだけど」


 ーーパンツルックにスカーフか。


「髪の毛を上げてくれると嬉しいな、若菜ちゃん」

「それ賛成です。結構高めの位置で結んで欲しい」

「ええっと……ボブだから難しいけど、頑張ります!」


 ◇


 すぅーすぅーと、可愛い息遣いが聞こえる。

 若菜はトロンとした後、そのまま寝てしまったみたいだ。


「鈴木、起きてるか?」

「はい、起きてます」

「鈴木はさ、若菜ちゃんが俺と付き合ったらどうする?」

「嫌ですけど、若菜が選んだのなら仕方ないかなって。でも、その場合は親友関係を続けられると思います。こっぴどくフラれたんじゃなくて、悩みに悩んで選んだ末に敗れたのなら、関係を断つ必要はないと思うんで」

「先輩は、どうですか? もし、俺が若菜と付き合ったら」

「正直、耐え難いね。でも……、俺はもう、近くで見てるのは厳しくなるかな」

「俺だって、そうですよ」

「やっぱりそう、受け取るよね」

「……?」

「さぁ、もう寝ようか」

「先輩、寝られます?」


 先輩はうーんと唸る。若菜を横目で見て、


「無理!」


 と言った。俺もそうだ。


「飲み直すか」

「いいっすね」


 俺たちは深夜まで語らいあった。

 ここまで深く話せる友達、他にいないかもしれない。もともと、先輩からは同じ気質を感じてたんだ。それを今日、確信した。




 ーー先輩は、俺と同じドSだって。





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