爆炎魔法と結界師
鰹節の会
第1話 「大爆発しか使えんのだが」
「夕雅ー、郵便だよ!」
「はーぃはい」
母親の声に返事して、
手渡された便箋には、オシャンなフォントで一言。
《異能保持者〝瀬戸夕雅〟様》
下には──────、
《第七回・学園特待選考により、本校への入学が決まりました。》
「ワクワクさせてくれるじゃねぇか·····」
どうやら、俺は合格してしまったらしい。
◇◇◇
2286年────。
日本の
これにより、人類の殆どは〝異能〟と称される超能力を使う事が可能となった。
·····まぁいうなれば、もうほとんど魔法である。
使える能力は個人差があるが、脳の松果体周辺で発生する魔力を全身に張り巡らせて、それを皮膚を通して具現化するのが主な原理らしい。
·····知らんけど。
魔力覚醒手術は、子供の頃に受けるかどうか決める事が出来る。まぁ歯科矯正みたいなもんだ。
殆どの子供は手術を受け、異能を手にする。
《入学までに必要な事一覧》
・教科書一式(裏のリンクより注文)
・端末もしくは書類による情報入力
・寮生活に必要な荷物(各自用意100kgまで)
広げたプリントを眺めて、夕雅は胸を抑えた。
「ちっきしょ、めちゃめちゃ楽しみなんだが」
こんなワクワクは初めてだ。
·····しかし、まさか合格してしまうとは。 いや、記録だけ見れば特待は理解できるけど。
中学入学と共に、生徒は体力測定の一環で魔力値を測る。
そこで夕雅は、脅威の〝230〟という数値を叩き出したのだ。
ちなみに、中学男子の平均魔力値は〝130〟前後であることからも、その異次元さが分かるだろう。
魔力値が高ければ高いほど、能力の威力が跳ね上がる。
そして、夕雅の能力は《範囲型爆発系炎魔法:出現タイプ》に分類される。·····ざっくり言うと爆発魔法だ。
爆発系の魔法で、さらにこの異常な魔力値·····。当たりも当たり、大当たりだ。
だが、夕雅には一つ、大きな問題があった。
·····魔法を全く制御できないのだ。
パンチ力はあっても、正確性がなければ的に当たらないのと同じように、夕雅は自分で放った魔法を全く調節できないのである。
それが理由で、小学校の間夕雅は、皆がグラウンドの魔法使用可能エリアで思いっきり能力を使っているのを横目に蛇口の水を飲むしかなかったのである。
実を言うと、別に調節ができなくてもいいのだ。夕雅の能力は、使用者を囲うように円形に展開する範囲型だからだ。
しかし、魔法を放った時点で、敵もろとも大爆発に巻き込まれるのだ。
大爆発に巻き込まれると、人は全身大火傷で病院に連れて行かれて、何ヶ月もお粥しか食えないのだ。
「ぁ、涙が·····」
そんな訳で、夕雅は歩く災害(敵にも味方にも自分にも)となるのだ。
本気で力を放てば、家はおろか街ごと消えるだろうが、当然その街の中に自分も含まれるのでやるつもりはない。
「まぁ、今んとこ街消す予定無いし、いいか·····」
兎も角、どうにかして誤魔化す方法を探さないと。
なんせこれから行くのは、世界一の異能育成学校·····。
《リアディアール異能学園》なのだから。
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