悪役貴族に転生したけど、シナリオ無視して最強の幻獣軍団を作りたい~もふもふカーバンクルが才能と記憶を引き出してくれました!~
こがれ
第1話 カーバンクル
「ここって『オリジン・ファンタジー』の世界だ……」
黒髪の少年は呆然と呟いた。
『オリジン・ファンタジー』。略してオリファン。
それは高い自由度が売りの学園RPG。
戦闘、恋愛、生産、育成。様々な要素を楽しめる神ゲーだった。
前世の『彼』も昼夜を忘れてやり込んだ。
「そして俺は『ルカ・ランフォード』。なんで、よりによってコイツなんだよ……」
『ルカ』はゲームの敵キャラだ。
敵キャラと言ってもザコのお邪魔虫。
偉い貴族の家に生まれたこと以外は、なんのとりえもない男。
甘やかされて育ったせいで、わがまま放題のクズ野郎。
序盤中盤と主人公に嫌がらせをして、終盤に呆気なくぶっ飛ばされる。
最終的には国外追放。
その後どうなったのかは、ストーリー中では語られない。
よくいるかませの敵キャラ。
主人公たちの恋愛を盛り上げるための舞台装置。
そんな『ルカ』に『彼』は転生してしまった。
「オリファンの世界に転生できたのは嬉しい。だけど、どうせなら主人公とかにしてくれよ……」
ルカは寝ころびながらブツブツと呟く。
首を動かして周りを見ると。
「っていうか、どこだよココ。なんで森?」
そこは森だった。
人の手が入っているようで、荒れてはいない。
暖かい木漏れ日が差し込んでいる。
前世の記憶もあるが、ルカとしての記憶もある。
ルカは先ほどまでの記憶をたどる。
「あー、そういえば遊びに来てたんだっけ、確かその途中で――うぉ⁉」
胸に衝撃。何かが乗って来た。
「こ、こいつは……!」
そこに居たのは小麦色のモフモフ。
少しふっくらした狐みたいな生き物だ。
額には真っ赤な宝石が輝いている。
「きゅん?」
首をかしげて、くりくりの瞳でルイのことを見つめている。
「カーバンクルだ……!」
カーバンクルは、オリファンに登場する幻獣だ。
幻獣とは、簡単に言えば仲間にできるモンスター。
前世でオリファンをプレイしたときには、幻獣集めに没頭したものだ。
特にカーバンクルは、最初に仲間にした幻獣。
思い出深い一匹だ。
「そうだ。森に遊びに来たらコイツが居て、捕まえたら頭がぐわんぐわんして――お前のおかげで前世を思い出せたのか!?」
カーバンクルは『秘められた力を引き出す』能力を持っている。
もしかすると、前世の記憶を引き出してくれたのかもしれない。
「きゅーん♪」
カーバンクルは嬉しそうに鳴くと、ぺろぺろと顔を舐めてきた。
「わぶ⁉ なんだ可愛い奴め。全力で可愛がってやるからな!」
「くるる♪」
わしゃわしゃとお腹を撫でると、カーバンクルは嬉しそうにもぞもぞしていた。
くるくると喉を鳴らしている。
不思議なほど人懐っこいやつである。
「もしかして、前世のゲームで育てたのと同じ個体だったり……そんな訳ないか」
ゲームでも可愛がっていた。
幻獣とのふれあい機能も充実していたため、カーバンクルともたくさん遊んだものだ。
しかし、それはゲームのデータだ。
この世界には反映されていないだろう。
「また幻獣たちを育てたいな……」
悪役として転生してしまった。
しかし、そんなのは関係ない。
せっかく好きなゲームの世界に転生したのだ。
好きなことをして生きていこう。
自分が不幸になるシナリオなんて、知ったことではない。
「また最強の幻獣軍団でも作ってやるか!」
「きゅーん!!」
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