第3話 スキルと魔法
「おお!! これが【アイテム通販】か!!」
ハッキリ言って驚いた。
まず、取り扱ってる品の数が多い。
何よりも……。
「この『異世界産アイテム』ってのが凄いね!!」
なんとこの【アイテム通販】、地球で買えるもの以外にも取り扱っている品があったのだ。
それが『異世界産アイテム』である。
傷を一瞬で癒やすポーションを始め、武器や防具まで、異世界で作られた幅広いジャンルのものが買えるらしい。
「ほう。我の世界にあったものを取り寄せることができるのか。これは面白いスキルだな」
「あれ? でもこれ、どうやって買うんだろ? ポイントが必要って書いてあるけど……」
「ふむ。スキルは大抵、魔物と都合良く戦わせるために作られている。おそらく、魔物を殺せばポイントが貯まるのではないか?」
「げっ、マジかよ」
魔物という危険から身を守るためにスキルを貰ったのに、そのスキルを使うためには魔物と戦う必要があるとか聞いてないよ。
そのマッチポンプは流石に酷いと思う。
「ん? あっ、ポイントを増やす方法が書いてある。何々? 『ポイントは魔物を討伐するか、物品を売却することで獲得可能』だって」
「ふむ。前者は我の予想通りだが、後者の物品を売却するとはどういう意味だ?」
「うーん。売却、か」
僕は学校の鞄からシャーペンを一本取り出し、スキルを強く意識する。
「売却!! おお!! シャーペンが消えてポイントが増えたよ!!」
「ふむ。本当に興味深いスキルだな」
どうやら僕が売却したいと思った物をポイントに変換することができるようだ。
というかこのスキル、要らないものをポイントに変えちゃえば便利過ぎるスキルなのでは?
そうと分かれば早速行動しよう。
「む、イサト。どこへ行くのだ?」
「うち、家の裏側に蔵があるんだよ。じいちゃんが生前に集めてたよく分からんお土産とかあってさ。父さんも処分に困ってたし、売っちゃってポイントにしようかと」
「お、おい、良いのか? 祖父のものだろう?」
「大丈夫大丈夫。というか、ホントによく分からんものばっかで困ってるんだよ。夜中に動き出す人形とかあるし」
「それは……お土産なのか……?」
僕はシルを連れて、蔵へと足を運ぶ。
すると、不意にシルが目を細めながら、少し声を震わせて呟いた。
「これは……凄まじいな」
「ん? 何が?」
「この蔵、色々と住み憑いておるぞ」
「色々って、魔物とか?」
「いや、もっと危険なものだ。祀ろわぬ神の類いの気配もいくつかある。我ですら寒気がする程のものだ」
「何それちょっと怖い」
じいちゃん、マジで何を買ってきたんだ。
「まあ、今は【アイテム通販】を使ってみたいし、気にしないけど」
「もう少し危機感を持て……。いや、そなたは好奇心が強いのか。その上で脳天気な馬鹿だから、危機感が無い。厄介な主め」
「喧嘩売ってんなら買うぞ。お前の身体をコロコロしてやる」
僕は頭の中に、商品名が何か分からないカーペットをコロコロするやつを思い浮かべた。
コタローはあれが大嫌いで、掃除しようと手に取るといつも全速力で逃げていたし、きっと犬の天敵に違いない。
「うわ、埃が凄いことになってるね……」
ここ数年、中の掃除をしていなかったせいもあるだろう。
蔵の鍵を開けて中に入ると、凄まじい埃が床や物に積もっていた。
シルが鼻をすんすんと鳴らしながら、嫌そうな顔をする。
「やはり、何かいるな。今の我よりも弱いが、強大な力を感じる。さっさと用事を済ませようぞ」
「そうだね。あんまり長居したい場所じゃないし、ポイントに変えるもの適当に見繕って、さっさと退散しよう」
僕はまず、テーブルの上に置いてあった一冊の分厚い本に目を付けた。
テーブルの隣には本棚があり、高そうな本が何冊も並んでいる。
じいちゃんは時々蔵に籠もって何かしていたが、まさか読書していたのだろうか。
僕は首を傾げながら、本の表紙を見る。
「うわ、どこの文字だろ? 中国語、かな? めっちゃ古い本だね」
「おい!! 触るな!!」
「うぇ!? な、なに!? 急に怒鳴ってどうしたの!?」
「その本は、駄目だ。かつて我が食い殺した邪神と同じような匂いがする」
「じゃ、邪神って、そんな大袈裟な……。あっ、このメモ帳、この本の翻訳が書いてあるみたい。どれどれ?」
僕はじいちゃんが書いたであろう、本の内容を翻訳したメモ帳を見た。
『ルルイエ異本』
さっとメモ帳を閉じて、最初から何も見なかったことにした。
「他のものにしようか。これは駄目な奴だ」
「それが賢明だな」
僕はテーブル周辺を漁るのを止め、他の場所を見て回ることにした。
「奇っ怪な土塊の人形だな……」
「土偶だね。昔、じいちゃんが自慢してきたから覚えてるよ」
その後もポイントに変換するものを適当に見繕いながら、蔵の探索を続ける。
そして、ある程度見繕ったところで僕はあることに気が付いた。
先程、テーブルの上にあったはずの本が無い。
「シル、さっきの本どこかに隠した?」
「む? 我は知らんぞ」
じゃあ、本はどこに?
僕が首を傾げた、その時だった。
僕とシルの背後から「ずるずる」という、本のような何かが這いずるような、不気味な音が聞こえてきたのは。
……。
「売却!! 売却!! 悪霊退散!!」
「わふっ!! わふっ!! 立ち去れ邪神め!!」
僕はそちらを見ないよう細心の注意を払いながら、【アイテム通販】でポイントに変換した。
おお、結構なポイントになってる……。
それだけあの本がヤバイ代物だった、ということだろうか。
僕とシルは居間へと戻り、スキルで色々と買ってみることにした。
「【アイテム通販】って便利だなぁ」
僕はスキルを使いながら、思わず呟いた。
最初は外れ臭さを漂わせるスキルだったが、やはりショップ系のスキルはチートだね。
何が凄いって、注文したら次の瞬間には目の前に現れるのだ。
配達を待つ必要が無いのは十分チートだと思う。
シル用のブラシや首輪、リードがすぐに届いたのはありがたかった。
「さて、シルに必要なものは買ったし、今度は異世界産のアイテムを買ってみるか」
タップするのは『異世界産アイテム』の項目。
武器や防具、ポーションなど、およそ現代ではお目にかかれないような代物ばかりである。
「うーん。武器や防具を持ち歩いてたら怪しまれるだろうし、何か無いかなぁ?」
「魔法書はないのか?」
「ん? 魔法書? 何それ」
「読むだけで魔法を使えるようになる書物のことだ」
何それすごい。
「おっ、あった。あったけどすっげーお値段。一番安いものでも30万ポイントするよ」
「高価なものだからな。しかし、魔法は詠唱すれば使える代物。この世界で魔物から身を守るには重宝するだろう」
「うーん。でもどれが良いか分かんないよ。何かあすすめは無い?」
そう訊ねると、シルは少し悩みながらも答えた。
「……ふむ。収納魔法はどうだ? そなたのスキルと相性は良さそうだが」
「収納魔法? 名前から察しはつくけど、どんな魔法なの?」
「物品を異空間に収める魔法だ。ダンジョンに挑む冒険者の間では、覚えておくと良い魔法として有名だな」
ダンジョン。
少し気になるワードだが、今は収納魔法の方に注目する。
「なるほど。収納魔法が使えるなら、武器や防具を持っていても怪しまれる心配は無いね。よし、それで行こう。予算もギリギリ足りてるし」
僕は収納魔法の魔法書を購入し、早速習得してみることにした。
時間にして数分だろうか。
魔法書を開いて中を読み始め、僕はものの数分で収納魔法を覚えた。
「これ、すっごい便利だね。重いものでも普通に運べるし、使い道が多そう。ダンジョンで使われてるってのも納得だよ。……ダンジョンかぁ。地球にもないかなぁ」
「あるぞ」
「……え?」
「ダンジョンならこの世界にもあるぞ。近場に」
「ええ!?」
僕は今日で何度目になるか分からない驚愕をするのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます