いじめられっ子の僕が異世界のフェンリルを拾ったら、チートスキル【アイテム通販】を獲得したのでダンジョン攻略動画をネットで配信すると、神CG編集と勘違いされて鬼バズり、魔法少女や追放令嬢と仲良くなった話
ナガワ ヒイロ
第1話 フェンリルを拾った①
放課後の校舎裏。
僕は突き飛ばされて後頭部を地面に強打する。
「うぐっ」
「おいおい。大丈夫かよぉ、亜門クン!! ぎゃははははははははッ!!」
「……」
僕の名前は
苗字が珍しいことと、学校でいじめられていることを除けば普通の男子高校生だ。
あ、いや。やっぱり普通じゃないかも知れない。
自分で言うのもなんだが、僕は自分の容姿にあまり関心が無い。
髪は伸びっぱなしで顔が隠れており、「ザ☆陰キャ」みたいな雰囲気を漂わせているのだ。
いじめられている原因は、もしかしたら僕の方にあるのかも知れない。
直そうとは微塵も思わないけどね。ははは。
「ちょっと男子ぃ、暴力は良くないってー」
「ねー。野蛮だよー」
「大丈夫大丈夫。こいつ、中学ン頃からいじめてっけど全然やり返してこねーから。先生にチクる度胸も無ーし」
いじめっ子の心情も、まあ、理解はできる。
僕という弱者をいじめることで、自分は強者なのだと女子にアピールしたいのだ。
女は総じて強い男に惹かれるもの。
特に学生時代なんて、何か一つでも他者より秀でていれば異性から評価される場所だしね。
いじめっ子がイキるのも分かる。
「おい、亜門。いつものアレやれよ、気持ち悪い笑い方!!」
「あ、あはは、気持ち悪いって、酷いなぁ」
「おら!!」
笑ったら顔面を蹴飛ばされた。
痛い。
歯が折れたり、鼻を骨折したりしないのが我ながら不思議だ。
「っと、キモくてついつい蹴っちまった。わりーな、亜門クン。許してくれよ?」
「う、うん。大丈夫だよ、気にしてないから」
「そりゃ良かった。あー、あと明日さ。金持って来いよ。持って来なかったら一日中サンドバッグの刑な」
そう言って、いじめっ子たちが校舎裏から去る。
僕はいじめっ子たちがいなくなるのをしっかり確認してから、その場で座り込み、愚痴る。
「どうせお金を持って行ってもサンドバッグにするくせに……。クソ。クソクソクソクソ!!」
いつか絶対にぶっ殺してやる!!
心の底から、いじめっ子に対する殺意と憎悪を滲ませる。
僕だって普通の人間だ。
理不尽な暴力に対して無感情でいられる程、心は壊れちゃいない。
もっとも、言ってるだけで復讐する度胸や勇気なんてちっとも無いんだけどね。
そんな自分が嫌になる。
「っと、いけないいけない。じいちゃんの遺言、其の参。『どんな時も笑顔を忘れるな』」
数年前に死んだじいちゃん。
旅行が趣味で、世界中を飛び回っては怪しい品々をお土産として買ってくる少し変わった人。
僕に数々のアドバイスをくれて、とても優しかった祖父である。
そして、じいちゃんは病院で息を引き取る際、僕に三つの遺言を残した。
其の一、自分で決めたことは最後までやり抜く。
其の二、困ってる人を見捨てるな。
其の参、どんな時も笑顔を忘れるな。
これら三つの遺言を、僕は小さい頃からずっと守り続けている。
特に理由は無い。
ただ、いつか死ぬ時までこの三つの言葉を守ろうと決めたから、守っているのだ。
其の一の遺言を破らないようにね。
「……笑顔、良し。帰るか」
僕は校門を出て、自宅へと向かう。
もうすぐ春休みなので、新入生歓迎の準備やら何やらで部活動や委員会は忙しいだろうが、帰宅部の僕には関係無い。
早く帰ってゲームや漫画、アニメなどで心を癒やしたいのだ。
「ん?」
その道中、自宅まであと少しというところ。
商店街を抜けた先にある雑木林の前で、僕は足を止めてしまった。
「こんな場所に、神社なんかあったっけ?」
大きな鳥居があった。
地面は石畳で舗装されており、神社へと続く参道のようだ。
僕は鞄からスマホを取り出して検索してみるが、やはり神社のようなものはこの近くに無い。
……すごく、気になる!!
「少し寄り道してこっと」
僕は鳥居をくぐって、参道を進む。
歩くこと数分。
やがて、僕は小さな社がある広場へと出た。
「こんな場所が近所にあったんだ……。知らなかったなぁ」
どことなく神秘的な空気というか、心が落ち着く不思議な場所だった。
しかし、他には何も無い。
ただ社が一つポツンとあるだけで、物珍しいものは何も無かった。
「……お参りしてこ」
僕は社の前に立ち、財布から五円玉を取り出して賽銭箱に入れる。
二礼二拍手一礼。
「どうか僕をいじめてくる連中に災いがありますように。毎日五回、足の小指をタンスの角にぶつけますように」
『なんとネチネチした呪いだ……』
「え?」
ふと、誰かの声が聞こえたような気がした。
思わず辺りを見回してみるが、神社の敷地内に僕以外の人の姿は無い。
僕の気のせいだったのだろうか。
「よし、帰るか。って、あれ?」
その時、僕は賽銭箱の裏側に何か大きな生き物がいることに気付いた。
もふもふな、大きな毛玉だ。
「犬? 白柴、かな?」
多分、柴犬だと思う。
普通の柴犬より一回り大きいけど、昔飼っていたから分かる。
毛並みが綺麗な柴犬であった。
「ん? この柴犬、よく見たら銀色の毛なのか。初めて見たな……」
「わふっ」
銀色の柴犬なんているんだなぁ。
「飼い犬、ではないよね? 首輪もしてないし、飼われてたとしたら少し小汚いし」
「……わふっ。ぐるるるる」
「あ、ごめんごめん。怒っちゃった?」
まるでこちらの言葉を理解しているかのように、低く唸って僕を威嚇する銀柴。
「じゃあ、僕はもう帰るからね」
「……わふっ」
神社から立ち去ろうとすると、銀柴が僕のズボンを口で引っ張った。
「え? なに? えーと、悪いけど飼えないよ?」
「わふっ」
「いやいや、無理だって。うち両親いないから、日中とか面倒見れないし」
僕の父と母は今、海外で働いている。
だから日中、僕が学校に行ってる間は面倒見れないし、飼うなんて出来ない。
「わふっ、わふっ!!」
「だから無理だってば!! 諦めて!!」
「くぅーん」
ぐぬぬ、この寂しそうな鳴き声……。
昔飼っていた柴犬のコタローのことを思い出してしまう!!
「くぅーん、きゅぅー」
「わ、分かったよ。だからそんな悲しそうに鳴くなよぉ」
「わふっ!!」
「くっ、調子の良い犬め……」
まあ、賢そうな犬だし、何とかなるよな。
「じゃあ、飼うと決めたからには名前も決めないとな!!」
「わふっ」
「コタロー二代目」
「わふ!?」
「む、嫌か」
首を振って全力で拒否の意志を示す銀柴。
どうやらご不満なようだ。
「うーん。コタロー二代目が駄目なら、毛色から取るか。銀色……シルバー……シルなんてどうだ?」
「わふ!!」
「お、気に入ったか。じゃあお前は今日からシルだ!!」
その時、不意にシルが光った。
太陽の光を反射しているとかではなく、明らかにシルそのものが発光している。
「ふむ、契約が完了したか。礼を言うぞ、人間」
「え?」
「その名はちと安直ではないか? 我はもっとカッコイイ名を所望する」
……。
「い、犬が喋ったああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
「我は犬ではない!!」
僕は軽くパニックに陥るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます