魔女の冒険譚 〜イエナ・エステカンドの手記〜

黒川宮音

エピソード0  「魔女狩り」

<魔女狩り>という言葉を聞いたことはないだろうか。


人が魔女を迫害(狩る)ことを指し、約1000年前の手記にも魔女狩りが行われたと記録されている。


約1000年前。人間と魔女は互いに交流を持ち、互いの知識を教え合ったりしていた


しかし、それより数年後突如として人間が魔女に対する迫害を行ってきたのだ。


ある魔女は<火炙り>にされ、そしてある魔女は<*斬首>されたという。


*ギロチンのこと


魔女たちは逃げるように人間から遠く離れた土地で自分たちの国を造った。


その国の名は「サイレサ」


魔女たちの<安泰を授ける場所>


しかし、その安泰は長くは続かなかった。


今より100年前。二度目の魔女狩りが行われ、魔女の数も数千と減少した。


身分制度と<魔女協会>の前身ができたのもこの頃である。


逃げ惑う魔女の中で唯一人、人間と協和しようとする魔女がいた。


彼女は<至高の魔女>の二つ名を持つ魔女「イェンカ」


彼女の願いは唯一つ《ただひとつ》<人間と魔女の協和>であった。


そして、彼女は魔女狩りの身にも関わらず各国の王や皇帝に謁見えっけん


魔女狩りをやめること。


魔女たちの人権を保証してほしい。


と交渉した。


彼女の交渉もあってか、各国は将来<魔女狩り>を再度行わないように


人間と魔女との協和を宣言した。


盟約も結ばれ晴れて自由に生きることができると思えた魔女だったが


約80年前。 <至高の魔女>「イェンカ」が魔女狩りに遭い奪命されたという


知らせが魔女たちの耳に入った。


魔女の中では余計なことをするから...と魔女「イェンカ」を嫌悪する者や人間に対しての憎悪が再び湧き出した者もいた。


そして、今から約70年前。


人間の間で協和会議が行われた。


議題は「今後の魔女に対する人権保障」


70年前には既に魔女狩りのほとんどがなくなり人間の間でも一度話し合う必要があるということでこの会議が行われた。


というのは建前で、本当は人間の行った<過去の過ち>を魔女に対しどう謝罪するかを話し合う会議なのだった。


人権保障....はたまた人民権を与えるのか。


国家間で議論が行われた結果。


「魔女に対する一切の迫害を禁止し、魔女の人権を永久的に保証するものとする」


という今の形へとなった。


これが魔女狩りの一部始終である。


一方魔女はというと.....。


そんなことを知る由もなく自分たちの生活を維持する準備をしていた。


具体的には身分制の廃止と<魔女連邦組合>と<魔女組合>の統合。


これにより、身分制は等級へと変わり、現在の<魔女協会>へと定着した。


<魔女協会>の主な仕事としては...。


・若い魔女の育成


・後世の魔女をどう残すか。


・「サイレサ」の運営(現在のサイレサは、協会本部が国の運営を兼任している)


・人間との和解について(現在は廃止)


 などが中心である。



 尚、現在は人間と交流が盛んに行われており、


「サイレサ」以外にも<魔女協会>の支部が建てられている。



<その後の主な時代背景>



50年前。魔女の等級が作られる。



40年前。魔女の多くが人間と交わる。(この頃に等級が十に分けられる)



30年前。<至高の魔女>「イェンカ」の石碑が建てられる。



20年前。各地に「イェンカ」の像が建てられる。



10年前。「イェンカ」の伝記が発見される。



5年前。「イェンカ」の伝記を頼りに石碑を探す。



3年前。魔導山に石碑があるのではないかと言われる。



2年前。 魔導山調査が行われたが、山には立ち入ることができなかった。



そして現在。


人々の多くは魔女狩りの歴史を忘れてしまっている。


きっと魔女狩りについて伝えられなかったのだろう。


時が経つにつれて歴史も忘れ去られてくる。




用語解説)


[魔女関係]


<魔女> 中世よりひとならざる者とされ迫害の対象とされていた。


<魔術者>魔女とは別に存在していた魔女の古き良き理解者


<サイレサ>約1000年前に魔女たちが建国した国。

 *現在は、魔女協会本部が運営を任されている。


<魔女狩り>魔女を人間が狩ること


<魔女協会>魔女関係の組合<ギルド>みたいなもの


<イェンカの伝記>100年前の魔女狩りについてや自分の願いについて記されている


<イェンカの石碑>魔導山に建てられたイェンカの石碑。読んだ者に知識を授けるとされている。


<十等級>魔女の位を十で位分けしたもの。魔女協会で申請する。

(等級ごとに条件があり、適性検査を十分に行った上で魔女協会から認定を貰える。

魔女の等級は冒険者ギルドで交付されるギルド証明書に組み込むことができる。

一度組み込めばギルド証明書と等級証明両方に利用できる。)


<二つ名>別名とも言ったりするが、現時点では<至高の魔女>「イェンカ」のみ

二つ名が確認されている。


<魔術界>魔法を使うことのできる者(人間以外)のみ立ち入りを許される世界。

例)魔術者、魔女


[ギルド関係]


<ギルド証明書>カード型の証明書で各地のギルドで発行されている。*冒険者としての証明になる。*一部例外あり


<等級証明>等級証明の申請をすれば協会以外の一般ギルドでも*魔女等級を開示する事ができる。*魔女のみ


<冒険者ギルド>世界各地の国、帝国に設置されており冒険の依頼、受諾を行う事ができる。また、ギルド間の情報は月に一度エルカザール王国 中心王都「ハイゼル」の<冒険者統合本部>に集計される。


<冒険者統合本部>世界各国の冒険者ギルドの管理・運営を行っている。

収集する情報は各ギルドの登録情報並びに依頼受諾状況など。

依頼の受諾量・難易度によって<ランク>が上昇する。


<ランク>冒険者をする上でなくてはならないもの。

ランクにはA・B・C・D・E の5ランクがあり、年に一度、冒険者統合本部で行われるSランク昇級試験を合格することでS・SS・SSSのランクが基本ランクになることもある。


 [その他]


<魔法>

魔女、魔術者、人間共に魔法を使うことができるが、魔女と魔術者は別格で人間がギルドカードを使ってスキルや魔法を習得するのとは違い

魔女と魔術者は生まれつき高い魔力やコントロール、魔力認識力が圧倒的に強い。

魔法習得も自分のみで行うことが殆どで熟練の魔女ならば新たな魔法を生み出すことも可能らしい。




                   次回:第一話 「師匠と弟子 母親と娘」



















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