第2話
入寮日の日、私はとても困った
だって、同じ高校というのも知らなかった幼馴染が先に同じ部屋で待っていたから
「望海!待ってたよー!」
「未来さんが…同じ部屋なんですか…」
彼女がすっと抱擁するのを私は横に避けながらそう答える
「とと…もう望海は相変わらず硬いなー」
「硬い…と言われましても…」
「そう!硬い!だからまずは私を呼び捨てにするんだよ!高校生になる記念に!」
いつものようにグイグイくるこの幼馴染に少し困りながらもどう答えるか迷っていると
「そんなんじゃ高校生になっても友だちが少なくなるぞー」
「余計なお世話です…というか同じ高校なのすら私知らなかったですけど…」
「言ってなかったからね!まあ、望海の両親は知ってたけど…全寮制に入れる最後の決め手はなんてたってこの私だから」
えっへんと胸を張る彼女の衝撃発言に私は呆然とした
「それ…どういうこと…?」
「だって、いくら女子校と言っても望海が抱えてるものは知ってる子と一緒じゃないと無理でしょ…病院のこともあるし…だから遠慮私には頼りなさい!」
おかしい…彼女にそんなことを貰えるようなことを私はしていない…
小、中と彼女は話しかけてきたけど私は最低限にしか話してないはずなのにそんな…
「私があなたを放っておけなかったから…まあ、無理やり私の両親説得して…嫌だったらごめんね…」
しゅんとする彼女を見ていられなくて
「私は…その…とても有難いけど…だって3年も同じ部屋になりますし…そ…その…未来さんが嫌じゃないの…こんな私が同室で」
「嫌なわけないじゃん!むしろ私がこんな押し付けがましくやってるんだから!」
彼女はとても優しくて、私のことを好意的に見てくれているそれがとても辛い
だって私はほんとは女の子じゃなくて、あなたにそんな優しくしてもらうなんて許されることじゃないけど…
「うん…わかった…ありがとう未来さん…」
私そのたまらなく好きな優しさに甘えてしまう
「うん!これからもよろしくね望海」
そう答える笑顔を見て胸がドキドキする
でも…私はこの胸の内の想いは明かさないと決めているのだ
――――――――――
とりあえず彼女は納得してくれたようだった
無理やり外堀を埋めて逃げられない段階まで来てからこう言う状態にしてしまったけどしょうがない
あの日に腕の中で震えていた彼女を私はどうしても放っておくなど出来なかったから
私は彼女の両親と私の両親を説得して、遠い親戚が経営する女子校に彼女を入学させて自分も入った
友だちとしてそうしたと思ったけど…
卒業式の日を思い出す
「未来…あんた…重くない?てか…私にも似たようなことあったらそうするの?」
「いや…分かんない…けどなんか望海は放っておけないの…昔から望海は寂しそうで助けて…って言ってるようで…あの出来事があって余計にそう思うから…」
友だちに言われて考える
彼女以外にそうするか…いやたぶんしない
望海だからそうすることが迷いなく出来る
けど友だちにも悪いと思うので少し濁しながらこたえた
「そ…まあ頑張って…あの子あなたにはベタ甘だけど頭はすっごい硬いから…」
「ベタ甘…?な…何が…?!」
「自分で考えな、じゃあまたいつかね」
3年間私たちのクラスメイトで友だちだった彼女はそう言って去っていった
この時言われたことを私はまだ理解していない
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