レグルス・フラグメンツ
古根
【英霊の墳墓】一次調査#1 - 5.18.843 - カヅミ
危険な場所とは往々にして本能的にわかるものだ。
そのことを、例えば【
【英霊の墳墓】は、後者だった。
王都マハトより徒歩五日の距離に再発見されたそのダンジョンへと降り立ったとき、僕にはそれが
「……どうする?」
赤燕が口を切った。大規模クラン【アルカディア】から調査隊に参加した【
要するに、『どうする』か?
すなわち、『このまま進むかどうか』ということだ。
であるからして――。
「……進みましょうか。計画に変更ナシで」
たっぷり十秒くらいの沈黙の後に、リーダーであるアンタレスが告げた。きっと、僕と同じような思考を辿ったと思われるが、一方で、まだ踏ん切りが付き切らない雰囲気で彼はこめかみを揉んだ。赤燕は「了解」とだけ答え、隊列に戻る。それを見届けた後、アンタレスは手早く指示を出し始める。アンタレスの指示に従い、僕らも坦々と準備を整えていく。
『計画に変更ナシ』。
すなわち、『本編成で可能な限り実地調査し情報を持ち帰る』ことが、当初通り、僕たち『【英霊の墳墓】一次調査隊』の目的である。
もちろん、犠牲は前提としない。
*
暗闇、静寂、それから土埃の香る空気。
それらが満ちた空間を、僕たちは少しずつ進んでいく。ひんやりした静寂の中で、僕たちの立てる物音だけが、ひたすらに大きく感じる。
【英霊の墳墓】の正規の入り口は、未だに発見されていない。
地下広くに建造された地下墓所の、おそらく天辺と思われる地点の天井が崩落した跡を便宜上の
今進んでいる空間は、どうやら回廊のようだった。壁面、天井、床ともにすべて石造りかつ同質の空間である。ぼんやりとした明かりで判然とするそれらの材質は艶がかった黒色であり、キッチリと水平に磨かれた表面が、僕たちの携えた照明をチロチロと反射している。
『非常に高度な石工技術の存在が伺える』。
記録担当が、そういった事柄を次々とアライアンスチャットへ書き記していく。
『幅十メートルに及ぶ』と記載のあるくらいに、そこそこ広めの回廊。僕らは、【探知】技能により順次マップした範囲の中を、【索敵】【気配察知】技能担当が索敵した上で、会敵しないルートを検討し辿って進む。各担当はローテーションで技能を使い、全員が
はっきりいって、牛歩である。
しかし、戦闘不能がすなわちゲームからの脱落を意味している今、未踏ダンジョンの調査にあたっては、特別の理由が限り、この、いわば『牛歩スタイル』がスタンダードとなっている。かくいう僕も、長らくソロプレイで培った高レベルの【索敵】【気配察知】技能を買われ、ここ数月に渡って未踏ダンジョンの調査作戦に参加しているのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます