不憫な最弱職「言霊使い」は苦労人!

まめちび

第1頁 「英雄」

まぶたの裏にじんわりと光を感じ目を開けると、そこは、、、ここは、どこ?

「お目覚めになられましたか!」

「この御方が我が国を救って下さる英雄様か!」

「英雄様、万歳!」

全く状況が飲み込めない。

ようやく目が眩しい光に慣れ、視界がはっきりしてくると、どうやら俺がいる場所は、物語にでも出てきそうな大広間で、俺が立っているのは、その中でも一際豪華な造りになっているステージのようだ。目の前にはたくさんの民衆。俺の脇には立派な髭をたくわえたおじさまが1人。

「本日は、英雄召喚セレモニーにお越しいただき誠にありがとうございます!」

どうやらこのおじさまは司会のような役割らしい。

「無事に、英雄様を異世界から召喚する事に成功致しました!召喚を行った王宮魔導師の皆さんに拍手!」

パチパチパチパチ。

「それではこれより!英雄様のステータスを発表して参ります!」

「うおおおおおおおお!」

あまりの盛り上がり具合の差に、王宮魔導師?とやらが少し可哀想になった。そんなことを考えている内に、いつの間にかドラムロールが始まった。

「それでは!ステータス!オープン!!!」

大きなシンバル音と共に、俺の背後に巨大な画像が映し出される。

「英雄様のお名前は」

ん?なんだ?この文字は?全く理解できない。例えるなら、ミミズがのたうっているような、そんな形をしている。最早文字なのかも怪しいところだ。

「なんと!MPがこんなに高いとは!」

MP?なんのこっちゃ。

「お待たせ致しました!英雄様の職業を発表致します!」

沸き立つ民衆。俺だけが取り残されている。職業とはなんぞや?そして再び始まるドラムロール。シンバルの音と共に映し出されたのは、

「言霊使い」

という、漢字?そして、突然現れた見慣れた文字に驚く俺を尻目に、急に静まり返る民衆。次の瞬間。

「ふざけるな!」

「言霊使いだと!?」

「最弱職じゃないか!」

その時、さっきまでは読めなかったミミズ文字が、読めるようになっている事に気づく。

英雄の名は、、、

「ヤライアヅミ」

俺の名だ。

それと同時に、民衆の怒号の対象が俺であることにも気がついた。怒れる民が投げた、広間を飛び交う食材、食器、装飾品。その中の1つが運悪く俺の額にクリーンヒットしたところで、俺の意識は途絶えた。

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