フリーター俺、異世界出身少女と同居する。

伊井ひろひと

第0話 -No Data-

「そろそろバイト行かねぇとな」

 俺は20歳のフリーター。大学を中退してから親にも勘当され、このぼろいアパートで自堕落な生活を送っている。特に何をするでもなく、バイトして帰ってきて飯を食って寝る。それだけだ。

「いらっしゃっせー。」

「1080円になりまーす。」

「あざっしたー。」

 ただ時間が過ぎるのを待つ。これからずっとこの生活なのか。彼女はできるのか。次の休みはいつか。いつ死ぬのかなんて、どうでもいいことを考えていた。

「五希くん、今日はその品出し終わったら上がっていいよー。」

 やった……! 早く家に帰ろう。こんな俺にも、一つだけ趣味がある。クワガタだ。卵の頃から育てているオオクワガタのクワ丸さん。その大きく黒鉄のような躯体がたまらなく美しい……。

「ただいまー。」

 いつもの玄関、いつもの廊下。だがしかし1つおかしいものが……いや少女が……倒れている。

「だ、誰だっ!」

 どうやら気を失っているようで、俺の悲鳴にも似た怒号に少女が答えることはなかった。しかし、慄きは直ぐに憂慮に変わる。少女は泥と傷だらけで、息も浅い。

「大丈夫か!?」

 小さな肩を軽く揺さぶるも、やはり反応がない。それに、とても熱い。高熱を出しているようだ。致命傷はないように見えるが……。とりあえずベッドに運ぼう。

 持ち上げてみて驚いた。めっちゃ軽い。

「痛くないか?」

 ベッドに眠る少女はまだ答えない。とりあえず、

「ごめんっ……。」

できるだけ意識しないようにして泥だらけの服を脱がし、タオルで体を拭う。深い傷は内容で安心したが、体調は依然として危機的なままだ。俺は朝まで休むことなく額の濡れタオルを交換し続けた……。

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