音
「はーい!どうも皆さんこんにちはー!夏美です!」
私はあのダンジョンに潜って以降、初めての配信をした。すふとすぐに同接人数が2万人になった。私の配信では2万人なんて数見たことがない。初めてのことだ。それほど慎也の影響力は強いということだ。
『夏美ちゃん久しぶり!』
『久しぶりに見たな』
『もう大丈夫なの?』
「大丈夫ってなにがー?」
私は今までのキャラを保つためにわざとイライラが募るような話し方をする。
『そりゃあのダンジョンでのことだよ』
『もうダンジョン潜れるくらいまでには精神的に安定したの?』
『そもそも精神的に参ってないんじゃね?』
「私があの程度でメンタルやられると思ったのー?」
何とか…何とか今までのキャラで…
『あ、もうそのキャラ通すの無理だからww』
『慎也に化けの皮剥がれたの知ってるぞw』
『お前が普通のjkだと言うことは既に分かっているんだ!』
「な、なんのことかなぁ?」
不味い。私の素がバレてしまっている。だが今更引けるわけがない。今更このキャラを変えるなんてこと絶対出来ない!だって…恥ずかしいじゃん!
『もういいてww』
『さ、その配信スタイルはおしまいにしましょうねー』
『慎也に助けて貰った時みたいに素直になればいいんだよww』
「…」
私は何も言えなかった。恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
『あれー?wwお顔が真っ赤だよ?w』
『炎上商法からは足を洗うんや…』
『素直に行こうぜ』
「…わ、わかったわよ!もういつもの配信スタイルなんて知るか!」
『こっちが素かww』
『絶対そっちの方がいいよ』
『慎也のせいだなww』
ほんとにそうだ。慎也のせいだ。
『あー、今までより全然いいわ』
『それな』
『正直炎上商法してた時は嫌いだったけど今の夏美は何となく好きだ』
「そ、そうかな…」
私は照れながらそう言った。
『おいおい…まじで誰だよ…』
『可愛いじゃん…』
『最初からそうしてればよかったのにw』
でも慎也のおかげでこういってくれる人がいるってことがわかった。きっと私だけだったらこんなことにはならなかっただろう。これまでの変わらず炎上商法を繰り返していたと思う。
『慎也の影響力やべーw』
『もはや日本で1番強いまであるよなww』
『夏美ちゃん、慎也に助けられて惚れてるんじゃね?w』
『適当なこと言うな』
『な、夏美ちゃん?』
「そ、そそそ、そんなわけないでしょ?!」
コメントでからかわれてついムキになって言い返してまった。っ!安易な発言だった。配信が異性を好きだなんて…
『まぁ…あれは惚れるわな…』
『仕方ないよなぁ』
『慎也程いい男は居ないもんなー』
『ここに…(スッ…』
『お前は引っ込んでろ』
「あ、あれ?」
何故かコメントは荒れていなかった。それどころか仕方ないと言った雰囲気になっている。
「み、みんな怒ったりしないの?」
私は恐る恐るそう聞いた。
『まぁ慎也なら…』
『あいつには文句言えないよなぁ』
『良い奴だってことは知ってるからな』
私は目の前の光景が信じられなかった。否定的なコメントはほとんどない。あるのは肯定的な意見と仕方ないという意見ばかり。きっとこんな結果になったのは慎也の人となりがあまりにも良すぎるからだろう。
「…」
私はなんとも言えない気持ちになった。配信者になる前から覚悟はしていた。自分には自由に恋愛なんて出来ないだと。でも私の中にあったそんな常識を慎也は壊してしまった。ほんとに慎也は凄い。
「ふふっ…」
私は自然と笑みがこぼれてしまった。慎也という男の子の常識に囚われない力がなんだかおかしくて。
『っ!今夏美ちゃんが女の顔したぞ!』
『あー…まじで好きなんだな…』
「な、何言ってんのよ!そ、そんなんじゃないし!も、もうダンジョンに行くわよ!今日は中級ダンジョンに…」
その時、どこからともなく轟音が響いてきた。その轟音に混じって悲鳴まで聞こえる。
「な、何?」
『今の音なんだ?』
『それに悲鳴も聞こえないか?』
「…とりあえず音のした方へ行ってみようかな」
そう言って私は音のした方向へ足を動かした。
【あとがき】
面白い、もっと読みたいと感じた人は評価お願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます