第42話 宝物

 どうして俺は、ユモの涙をまるで自分の涙のように感じるんだろう。

 ユモの顔を見つめて、俺は、できるだけ笑顔で言った。


「俺も、ありがとう。誰にも言えなかったことを聞いてもらえて、楽になった気がする」


 この胸の高鳴りは、悪魔の誘惑でも魔法のせいでもない。ただ、彼女に対する素直な気持ちだけだ。

 俺は、瞳の奧からしっかりユモを見た。今度は、ユモが悲しい目をしている気がする。


「でも、ダメよ、コフィ。あなたには、スピカがいるから。私なんて、見てはダメ。ごめん、私、ちょっと欲張りすぎた。いやらしい女だわ」


 俺は、心を見透かされたような気がして、汗が吹き出す。


「何をあやまるの?ユモ」


 ユモは、海を見上げながら、目に涙を溜めた。それから、優しく微笑んで涙をこぼした。


「いいの。今夜を私の宝物にするわ。コフィの角が当たって欠けた貝殻も」


 俺は、どうしていいかわからない。

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