第16話 映像

 夜、スピカの家族とパバリ師匠までやってきて、上映会になった。


 映像は、天気のいい湖の景色からはじまった。撮影者は、父さんらしい。

 画面を見つめる俺の心臓が、激しく鼓動を打ち始めた。

 不思議な黒い水晶のような物体が宙に浮いている。たしか、これは異次元のAI、トトだ。

 緑の土手の上を5歳くらいの俺とスピカが花冠を頭に乗せて、はしゃぎながら走り回っている。

 そこに、リオ兄とサラおばさんがランチを持ってやってきた。

 俺とスピカは、リオ兄の両肩に座りながら、泥団子を投げ合っていた。リオ兄も泥だらけだ。

 そして、俺とスピカがアップルパイに飛びつく。


「やったー!!わー!ママのアップルパイ!いい匂い!あたしが先よ!」


「おれが先だ!!」


そのあと映る母さんの姿を、俺は、瞬きしないで見つめた。


「あぁ!手がすごく汚い。自分でふきなさいよ!それに、ケーキは、ご飯を食べてから!」


 その声に胸が締め付けられる。俺は、椅子から飛び上がって、映像に手を伸ばす。


「母さん!!」


 俺は、思わず声に出して赤面してしまう。でも、誰もそれを笑わなかった。

 俺は、この映像を見て、改めて決心した。母さんと父さんのことをもっと知りたい。昔住んでいた館を訪れ、映像にも映っていた異次元のAIトトに話を聞きたい。

 何よりもアスタロトが母さんの力を悪用するのが許せない。

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