第13話 夕日

 スピカが大きな瞳をキラキラ光らせている。


「はるか西、一万キロ離れたヨジェ村までの道のりに、いろんな冒険を想像したよね。

 そして、コフィは、今から出発しようと言ったわ。私は、やっぱり怖いから嫌だと言った」


 俺もその日のことをよく覚えていた。山の向こう、海の果て、何があるんだろうと胸を躍らせた、あの日のことを。そして、スピカに一緒に行きたい気持ちをドキドキしながら伝えて、振られたことを。忘れるわけがない。

 そして、スピカが意地悪な顔で俺をみた。


「コフィは、それから....」


 スピカが突然俺を屋上から突き落とした。スピカも一緒に空中に飛び出す。


「え?!何するんだ!」


「夕日を背に、一緒なら怖くない、俺がスピカを守るって私に言ったわ!そして、私と貯水池に飛び込んだ!」


「わわわわ!」 俺とスピカは、素早く着水の体勢を作る。

 2人で静かに着水して、水中に潜り、同時に水面に顔をだす。

 スピカが思い切り息を吸って吐いた。


「ぷはーーっ!気持ちいい!」


 俺とスピカは、貯水池の縁に上がって、座った。

 俺は、スピカに抗議する。


「何すんだよ!急に!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る