第42話 セレナスとの決闘
セレナスたちと別れた後、
俺は道場の茶室にてD-85に
「D-85、下層と最下層を切り離してしまうなんてことは出来るのか?」
と質問した。
「強制作動で行う場合には、最高管理者のみ可能デス。現在エルミラ・S・ソヴリンスターに権限が付与されていマス」
「そこまで分かるのか……切り離された方はどうなる?」
「消滅シマス」
……概ね予想通りの事態になってしまうようだ。
強制作動か……。
ん、どういう事だ?
俺はそのままD-85に強制作動について確認した。
「切り離しは本来人口が増えすぎて、過重に耐えられなくなった場合に自動で発動シマス」
自動で発動……。
それを聞いて俺は血の気が引いた。
「自動……止められないのか?!」
「こちらは停止できまセン。それを発生させない為に人口の調整システムが存在シマス」
「……」
思わず言葉を失った。
どう転んでも……深刻な状況なようだ。
このまま平和になって、人口も増えて豊かになればいい。
ただそう思っていた。
しかし、人口増加で世界が切り離され、消滅してしまう可能性がある。
洗礼の試練で人口が増えすぎなかった結果、人口が上手く調整出来ていたのかもしれないな。
エルミラを倒し、切り離しを止められたとしても、人口が増えて勝手に切り離されてしまうのであれば意味が無い。
一体どうすればいいんだ……。
この世界は本当に何なんだ?
「ドームへの返答がまだされてイマセン。どうシマスカ?」
「ああ、そうだったな……とりあえず、あと半年以内程で再起動が完了すると伝えておいてくれ……」
「ワカリマシタ」
ドームか……そういえば、ドームってどこにあるんだ?!
「なぁD-85! ドームってどこにあるんだ?」
「ドームは……この世界の外……スリープモードに移行シマス」
「あ、充電が切れた……」
世界の外……電子音に紛れながらも確かにそう聞こえた。
詳細は分からないが、ドームに移住するってのも手じゃないのか?
とにかく絶望するにはまだ早い気がする。
本腰を入れてドームの事を探ろう。
その前に……
まずはエルミラを止めなければ、どちらにしても終わりだ。
さて、今日はもう遅い。
寝るとしよう。
そして俺は長屋の寝室へと戻った。
・・・
・・
・
――翌日
俺とセレナスは道場よりかなり離れた場所へと移動した。
この場所の地面はテニスコート二面分程平地になっており、砂と土がむき出しになっている。
その周囲は大きな丸太で囲われている。
今は全く使われていないが、ここでは昔一対一での決闘修行が行われていたようだ。
気がつけば近くではリリアナや岩剛斎、道場の生徒が見学している。
昨日言っていた魔装魂での決闘……どんな感じか想像できないな。
今思えば、俺は魔物ばかりと戦ってきた。
人と戦うのはほぼ初めてだな。
バーストチェインであれば消し炭に出来そうだが……
人と戦う場合は勝利した後情報を聞きだす必要がある場合もあるだろう。
相手が言葉を発する事が出来る状態で制圧……これが出来るようにならないとな。
「魔装魂開放」
俺とセレナスはそれぞれそう唱えた。
俺の魔装魂は昨日と同じく、全身紫色で炎のような揺らめきがあるのに対し、セレナスは赤い魔装魂だ。
「さぁ始めようか」
セレナスはそう言って構えた。
俺もそれに合わせ構え、岩剛斎のはじめという合図で決闘はスタートした。
右腕を見ると、しっかりと魔法輪が刻まれていた為、魔法は発動できそうだ。
しかし……
全く負ける気がしない!
敵を前にしていると言うのにこの心の余裕は何なんだ。
何よりもセレナスからは闘気を一切感じない。
神徒はもれなく闘気を持っていないのだろうか……。
「セレナス……悪いが負ける気がしない!」
俺は思わずそれを口にしてしまった。
すると、セレナスはすました表情で、
「はっ! 神徒が紫髪の貴様に負けるわけがないだろう。立場を分からせる必要があるようだね」
そういってセレナスは俺に真っ直ぐ突っ込んできた。
その速さを見て周囲の生徒は、
速い! 全く見えない……!
と興奮気味に観戦していた。
だがその速度……
ハナより遅いな。
それが俺の感想だった。
セレナスの右拳が真っ直ぐに俺の顔めがけて伸びてきた。
それを俺は左手で払いのけると同時に、
「六輪バースト」
とセレナスの腹部に放った。
そして、魔装魂は解除され、勝負は一瞬で決着した。
「な……!」
魔装魂から生身に戻ったセレナスは驚愕していた。
周囲も一瞬の事でいまいち状況を理解できておらず、呆気に取られていた。
「セレナス、下層に住む者は結構強いぞ? 常に死ぬか生きるかの世界だからな」
「……」
「今のままだと、俺の妹より弱い……エルミラがどれほど強いか知らないが、このままだと勝てないんじゃないか?」
セレナスはその言葉に対し、
「黙れ!」
と声を荒げた。
そして、そのまま何処かへ行ってしまった。
「あ、あいつ……!」
リリアナが追いかけようとしたが、俺はそれを止めた。
「まて、すぐに帰ってくるよ」
・・・
・・
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