第40話 敵襲?
――岩剛斎 道場
俺は茶室に置いているD-85の様子を見に来た。
「お、充電終わってるみたいだな。今回は丁度二週間か」
D-85は元々再起動する為だけに送られてきていた為、小型の魔力バッテリーしか積んでいなかったようだ。
話すのには魔力を結構使うらしく、ある程度話すとスリープモードになってしまう。
放置していれば周囲の魔力を吸収し充電できるが、一度スリープに入ると2週間前後の充電期間が必要だった、
そのおかげで、持て余した時間で最下層や下層の調査が出来たと言う訳だ。
「ロフル様。ドームから進捗報告を送るように通信が来てオリマス」
「稼働が出来るようになった時期から、何か動きがあるとは思ったが……D-85、それを無視したらどうなる?」
「異常事態と判断し、別の個体がまた転送されマス」
なら無視は出来ない……どう返答すれば先延ばしに出来るだろうか。
「ねぇ、転送魔法陣を壊せばいいんじゃないの?」
突然茶室に入ってきたリリアナがそう言ったので、俺はD-85に
「なぁ、転送される魔法陣が壊れたら他の個体は来れないのか?」
と聞いた。
すると、D-85は部品の転送は出来なくなるが、ロボットは非常ゲートから来ると回答した。
「非常ゲート!? 転送とかでは無く出入り口が――」
――ドンッ!!
「なんだ?」
その質問を言い切る前に、道場前にて大きな爆発音がした。
俺とリリアナはすぐにその場へ駆けつけた。
「な……誰だお前は!」
そこには赤いロングヘアーで青い革の鎧を装備した青年がいた。
その青年は師範代であるアリアンドルをバインドで拘束していた。
「お前……? お前って僕に言っているのか。紫髪ッ!」
そういって青年は俺にバインドを放ってきた。
「いきなりな奴だな……! 四輪、バインド!」
俺は放たれたバインドに合わせるようにバインドを放ち、相殺した。
「な……何故、紫髪が四輪を使用できるんだ?」
その青年は俺がバインドを使用したことに驚愕している。
「いや、理由はどうでもいい。お前! 僕と共に来い」
いきなり攻撃をしてきた奴が突然来い……?
何を言ってるんだこいつは!
「理由も分からず来い? 何を言ってるんだ?」
俺は当然の質問をぶつけるも、
「答える必要はない。ただ僕について来て立ちはだかる敵を倒せばいい」
と言って話が進まない。
「理由も分からずついて行く訳ないだろう。誰だよお前」
そういうと青年はまた険しい表情になり、
「ふう……二度の無礼は許さんぞ紫髪! フロストハートの名のもとに貴様は処刑する」
(こんなにも無礼な紫髪がいるとは……統一を目指すにあたり、多少の犠牲は払わねばならないか)
セレナスは魔法を詠唱し始めた。
すると……
「止まりなさい。フロストハートの者よ」
とリリアナの大きな声がその青年を止めた。
「赤い髪……ここにいると言う事はユニークリングか」
セレナスはまるでごみを見るような目でリリアナを見た。
「ええそうよ。上層では生きているだけで差別され、幽閉されるユニークリング……でも階級は絶対。分かっているわよねフロストハート」
リリアナはそう言ってセレナスに家紋の様な模様が入ったペンダントを見せた。
「その家紋は……モーンブレイズ家の!」
セレナスの態度は一変し、リリアナに跪いた。
「はぁ……捨てずにおいていたペンダントが役に立つ日が来るとはね」
俺を含め、リリアナ以外はいまいち状況が読めていない。
そんな空気を察したのか、リリアナは
「皆に説明が必要ね……さて、フロストハート、とにかくバインドを解除し攻撃を止めなさい」
「しかし! 奴ら紫髪は僕に無礼を……」
青年は俺達を睨みつけながら言った。
しかし、リリアナは凛とした態度のまま、
「上層なら今ので下の階級は処刑されてもおかしくないわね。でもここは最下層……その考えは捨てなさい」
と言うと、セレナスは渋々
「わかりました……」
と答え引き下がった。
そして、一旦その場は収まり、
俺とリリアナそして青年で話をする事になった。
「さて、貴方が何者かを追求する前に、ロフルに神徒と上層について少し説明が必要ね」
リリアナはそう言って、上層は完全に階級社会で、ミドルネームSからCまでで区別されている事やユニークリングの差別教育が徹底されている事を説明してくれた。
「私もユニークリング、だけどそれ以上に階級が重視されるからこの人は逆らえない訳。腹ではどう思っているか分からないけどね」
「じゃぁこの対応を見るに、リリアナはA以上の階級って事?」
俺がそう質問すると、
「お前! モーンブレイズ家になんて言葉遣い――」
と飛び掛かってきたが、リリアナが制止した。
「そうね……ここでは名乗るのを止めたけど、私のフルネームはリリアナ・A・モーンブレイズよ」
同じ種族の中でも完全に階級で分かれているのか……。
一般、貴族、神徒で分かれていると思っていたけど、更に細分化しているとは。
想像以上に複雑なようだ。
「さて、貴方の名前は?」
リリアナがそう言うと、跪いたまま
「僕はセレナス・B・フロストハートです」
と答えた。
「そう。セレナス! とりあえず今から敬語と毎回跪くの禁止よ。何度も言うけどここは上層じゃないの」
「し……しかし!」
「それとここでは種族などは一切関係ない。差別などしない事! わかった?」
リリアナがそう言うと、セレナスは渋々了承した。
本当にリリアナが居てくれて助かった。
もしいなければこのセレナスとかいう奴はどれだけ暴走していた事か……!
「リリアナ様……リリアナがそういうから僕も態度を改めよう。だが、調子に乗るんじゃないぞ? 紫髪」
そういってセレナスは俺を指差した。
「俺の名前はロフルだ。セレナス、お前こそまた誰かに危害を加えたら承知しないからな」
「あっはっは! 紫髪のお前が僕に何が出来ると言うんだ。まぁそんな事はどうでもいい。そろそろ僕が来た理由を話そう」
そういってセレナスは改まって話を始めた。
「単刀直入に言うが、このままだと下層と最下層が消滅する」
リリアナがその言葉に、は? どういう事よ! と突っかかるが
俺はそれを抑止し、話を続けてもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます