第37話 停止とその後
サーチに応答しすると、
「大丈夫だった!?」
と大声で言ってきた為、何があったのかを伝えた。
「フーチェがそんな……!」
「大丈夫だ。今は呼吸も落ち着いている。そっちは大丈夫だったか?」
俺がそういうとリリアナは安堵した。
そして、状況を話し始めた。
「こっちも状況は変わったわ。人……じゃないけど話せる魔物を捕まえたわ」
「本当か!? すぐにそちらへ向かう」
俺はそう言って、ハナにフーチェの看病を任せ、施設のモニタールームへと戻った。
「タスクを遂行シマス。拘束を解いてクダサイ」
「こいつ、ずーっとこれしか言わないのよ」
そうリリアナが指さす魔物の見た目は、完全に機械で出来たロボットだった。
そのロボットは少しだけ浮遊しており、幅と高さは30cm程で、形は正八面体、左右には十徳ナイフのようなアームが二本ついている。
「魔物か……」
機械やロボットの概念がこの世界にはない為、こういった生物は全て魔物となるわけだが……。
これを魔物と呼ぶのは違和感しかないな。
「拘束を解いてやる。但し条件がある」
俺はロボットにそう言った。
すると、
「ワカリマシタ。条件を提示してクダサイ」
と言ったので、まずは名前やここへ来た目的、人は来ないのか等を質問した。
「順番に回答シマス。ワタシの名称は[管理用ロボットD-85]デス」
ロボット改め、D-85はそう続け、質問に順次回答していった。
D-85は施設を管理するロボットで、緊急時以外は現地まで来ることが無いそうだ。
0.0システムに警告が出ていたので原因を調査した後、必要な機材をもってここ転送して来たと言う。
そして、人は長い間見ておらず、今はAIロボットのみで施設の管理や運営を行っているそうだ。
「部品なども転送されてきていたが、それも全てAIロボットで判断したのか?」
「そうデス。生産用ロボット達がドームで部品を生産してオリマス」
「ドームとはなんだ?」
「ドームは我々が普段活動している場所デス。D-85のデータは転送されますが、この本体は戻れマセン。魔法陣が一方通行の為デス。これ以上の質問は受付マセン。拘束解除の条件を提示してください。」
色々聞きすぎてしまったようだ。
ドームとは一体、どこだろうか。
「わかった。ではこれが最後だ。拘束を解いたら何をするんだ?」
「施設の再起動をシマス。人口が規定内に収まるまで起動し続けマス」
予想通りの回答だった。
「再起動はやめてくれないか? 多少人口が増えても問題ないだろう?」
とダメ元で言ってみるも、
「遂行内容の変更は権限を掌握する者以外、不可能デス」
と言われてしまった。
しかし、言い方にすこし引っかかった。
権限を掌握する者……随分と回りくどい言い方だな。
「ちょっと試してみるか……」
そう思って、俺はD-85の目と思われる部分を見ながら、
「下位掌握」
と唱えてみた。
すると……
「下位掌握の発動者をスキャン中」
と言い、D-85kara放たれたレーザーの様な光が俺をスキャンするように巡った。
そして……
「現地人以外の知識を保有、D-85の自動作業を停止、権限を対象者に委譲シマス」
と発言しお辞儀をしながら、
「おかえりなさいマスター。ご命令を」
と言った。
「ちょっと! どういう事? 何をしたのよ!」
一連の様子をじっと見ていたリリアナがついに声を出した。
が、俺はちょっと待ってねと言い、D85に
「とりあえず、D-85! 生産施設の再起動は一旦中止だ」
と伝えた。
「このまま再起動しない場合、完全停止状態となり1年半は再起動できません。本当によろしいデスカ?」
「ああ、大丈夫だ」
D-85にそう言うと、
「ワカリマシタ」
とだけ言って静止した。
そして、拘束を解いてあげた。
「とにかく、1年半くらいはこの施設は動かないらしい。完全に解決とはいかないが……当面の危機は去った」
「1年半ね……それまでに何とかしないといけないわね」
俺はリリアナと顔を合わせ頷いた。
AIロボットについては殆ど未知の状態のままだ。
道場に持ち帰って調査をしないといけないな。
幸い俺の言う事はある程度聞いてくれるみたいだ。
D-85を担いで施設を後にした俺とリリアナはすぐにハナとフーチェの元に戻り、皆で道場へと帰還した。
当初の目的だった、この異常事態を止めるという目標は期限付きではあるが達成できた。
少なくとも1年半……下層に魔物が沸く事はないだろう。
それまでに調査を終わらせなければ。
・・・
・・
・
第二章 完
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