第35話 戦闘開始
俺が落ちてきたハナに驚いていると、ハナは俺に気がつき、
「お兄ちゃん!! 会いたかったよぉ」
と言って抱きついてきた。
「半年以上ぶりくらいだな。まさかハナがここから落ちてくるとは思わなかったけどな!」
と言って俺もハグで返した。
久しぶりに見たハナはどこか凛とした顔つきとなっており、一見華奢に見えるが、しっかりと筋肉も育っているようだ。
以前と比べてかなり大人っぽく雰囲気になっていた。
「お兄ちゃん……凄く強くなってる気がする……赤い蒸気がハナよりはるかに大きくなってる」
と俺をじーっと見た。
「ハナも少し増えてるだろ? この赤い蒸気、闘気って言うんだ」
と言うと、どこで知ったの?と質問してきた為、
俺は道場で学んだんだ。ハナも是非学ぶべきだと思う。かなり強くなるはずだと答えた。
「時間があれば是非学びたいな。でもハナにはする事がある」
ハナはそう言って、下層の状況と来た理由を説明してくれた。
「月に1回魔物が穴から来るのか……」
とりあえず俺もハナにこの施設の状況等を共有した。
「じゃぁ来月からは魔物は現れないんだね!」
そう喜ぶハナに俺は多分な。と答えるしか出来なかった。
完全に止まったとは言い難い状況だ。
管理者が来て再起動されたまた稼働するだろう。
それを何としてでも止めないと。
「てかハナがこうやって降りて来られるって事は俺も下層と最下層で行き来出来る訳だな」
俺がそう言うとハナは本当だね、ちょっとでいいから一緒に帰ろうよ! と嬉しそうに言った。
「ロフルさん、サーチが光ってます!」
フーチェが俺の腕を指しながら言った。
俺は頷きすぐにサーチを発動した。
そして、出た瞬間、リリアナは大きな声を出した。
「出るの遅い! 大変よ! 蜘蛛型機械が二体降りてきた入り口へ走って行ったわ」
俺達はそれを聞いて、すぐに入り口まで戻った。
道中ではサーチを定期的に唱え、
蜘蛛型機械の動きをしっかりと確認した。
「二手に別れたな。フーチェ、ハナ! 一体任せる。俺はこっちの遠い方へ行く」
そう言うと、ハナが一人では危険! と抑止した。
するとフーチェが、
「ロフルは大丈夫ですよ。物凄い技が使えるようになったんです!」
とハナに言った。
そして俺は、
「ああ、一瞬で倒して合流する。それまで耐えてくれ!」
と言って走る速度を上げた。
・・・
・・
・
先に蜘蛛型兵器に追いついたのはハナ達だった。
「私達には目もくれませんね」
フーチェがそう言うと、
「バインドを二人で撃って止めるしかない! 構えて!」
とハナは声を上げた。
フーチェは分かりましたと頷き、同時にバインドを放った。
――ガシャッ!
バインドの鎖は脚部に絡みつき、動きを止める事に成功したが、
数秒で解除されてしまった。
だが、意識を向けさせることには成功した。
蜘蛛型兵器は真っ直ぐにハナ達の元へと走ってくる。
咄嗟にフーチェはハナの前に出た。
ハナは左腕の魔法輪が無い為、バインドのインターバル終了までエンハンスが纏えない。
万が一被弾したら危険だと判断したためだ。
しかし、
「あの程度の速度なら回避できる! フーチェさん、あいつの攻撃は全部回避した方が良い。とても嫌な感じがする」
ハナはそう言いながら腰に携えた二本の剣を構えた。
それと同時に蜘蛛型兵器の頭部砲台二本が光始め、ブラストの様な高圧縮された魔力の弾がマシンガンの様に射出された。
二人は大きく左右に分かれ回避し、なんとか被弾する事は無かった。
ハナは一瞬魔力弾の飛んでいった先を見た。
そこにあった木や岩は容易く貫通しており、破壊されていた。
撃つと装填にしばらく時間が掛かるのだろうか、撃つのを停止している。
「三輪、エンハンス。フーチェさん、脚部を削いで機動力を奪う! 関節部分なら攻撃が通るかもしれない!」
ハナはその隙にエンハンスを纏いなおしながらフーチェに言った。
フーチェは大きく頷き、それぞれ蜘蛛型兵器へ距離を詰めた。
ハナはマシン系の魔物に対する弱点を熟知していた。
最下層から湧き出てくる魔物が全て機械で出来ていた為、嫌でも身についた知識である。
全身が硬い機械の魔物で形も多種多様だったが、全てに共通して言える弱点は、可動する関節部分の脆さだった、
(大型になった所で弱点は変わらないはずだ)
そう思って脚部の関節部分に剣を突き刺した。
だが、刃はギャリン! と音を立て折れてしまった。
少し傷をつける程度……。
この剣では破壊できない。
そう悟ったハナは剣を手放し、右太腿あたりに帯刀していた黒い小刀を抜いた。
この黒い小刀は黒吸鉄(こくきゅうてつ)
と呼ばれる鉱石で作られた刀である。
黒吸鉄には使用者の闘気を吸収し、強さを増す作用があった。
板状に加工すれば硬度が増し、
鋭利な形状に加工すれば鋭さを増した。
そして、刀になったこの鉱石は当然刃の鋭さを増すようになっていた。
昔から素人が扱えば木の枝すら断てない。
しかし、強者が使えば最強の刃となると言われてきた代物で村には6本の小刀が保管されていた。
ハナが戦乙女と呼ばれ始めた頃、それら6本の全てハナに授与された。
そして、肌身離さず保持していると、保持している時間が長くなる程、刃が鋭くなっている事に気がついたハナは
常に二本携帯するようにしていた。
――ザン!!
ハナはこの小刀で関節部を奇麗に両断した。
だが、それと同時に小刀の刃は焼き落ちるようにバラバラになってしまった。
ハナはその刃に目もくれず、すぐさま左太ももの小刀を抜き、同じようにもう一本脚部を両断した。
それと同時に、フーチェも打撃では関節部の破壊が出来なかった為、バーストで破壊に成功していた。
「フーチェさん! 下がって!!」
ハナのその一言でハナとフーチェは同時に後退した。
その瞬間、外れた脚部が大爆発し四散した。
「近くに居たら巻き込まれていましたね……それより、脚部は一本しか破壊できませんでした……」
フーチェは悔しそうに言った。
「私は小刀を使って二本破壊できたけど、小刀は全て壊れてしまった。もう壊す術は残されていない」
そういうハナをじっと見て、フーチェは
(なんだかハナさん、凄く頼りになります。話し方も何だが凛々しくなっている気がします……!)
と思っていた。
「フーチェさん、聞いているか? もう貴方のバーストで決めるしかない!」
とハナに言われフーチェすぐに我に返った。
「さぁ仕切り直しだ」
「ええ、そうですね!」
そう言って二人は再び構えた。
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