短編集

MiYu

七夕

「ねぇ、先輩」

「なんだ後輩」

「今週のレポート書きました?」

「書いたよ」

「見せてください」

「自分で書け」

「一生のお願いです」

「お前の一生なんて知るか」

「じゃあ僕の一生をあげます」

「大学のレポートごときにそんなものをあげるな」

「じゃあ何をあげればいいんですか?」

「知るかよ。なんか飯でいいよ」

「後輩にご飯を奢らせるんですか?」

「ぶっ飛ばすぞ」

「ふぇぇぇぇぇ」


神門煉 20歳。

大学2年生。

法学部在籍。


霧崎悠那 18歳。

大学1年生。

法学部在籍。


2人は中学からの先輩後輩であり、恋人でもある。

今、2人は神門の家にて講義のレポートを書いていた。


「そういえば、先輩」

「何だ?」

「今日って七夕ですよね」

「そうだな」

「願い事書きましょうよ」

「うちに笹なんてないぞ」

「買いに行きましょ」

「馬鹿か」

「先輩よりかは頭が良いですよ」

「しばくぞ」

「先輩~」

「何だよ。そんなに七夕を満喫したいのかよ」

「はい」

「じゃあ天の川でも見てろ」

「そうですね、見てきます」

「おう」


霧崎は、カーテンを開け、部屋の外を眺める。


「雨ですね」

「みたいだな」

「天の川、氾濫してます」

「大変だな」

「というか、雷まで鳴ってます」

「光ってるな」

「今日、帰れません」

「そう」

「泊まっていいですか?」

「好きにしろ」

「ありがとうございます」


神門は、一人暮らしをしており、マンションを借りて生活をしている。

対して、霧崎は実家住まいだ。

そんな2人だが、神門の家にて半同棲の生活を送っている。


「先輩って七夕の日って願い事してました?」

「してない」

「先輩らしいですね」

「そういうお前は?」

「僕もしてないです」

「何なんだよ」

「いやぁ、大学に笹と短冊が置いてあったじゃないですか。だから気になったんですよ」

「あぁ、『単位が欲しいです』とか書いてあったもんな」

「そうです」

「そうだなぁ、小学生の頃に学校で見かけた短冊だと『世界征服』とかだな」

「どんな小学校に居たんですか」

「んー。特に印象に残るような学校だったな」

「へぇ」

「興味無くすの早すぎない?」

「だって先輩のことですから、小学生の頃から面倒くさがりだったんでしょ」

「そうだけど」

「変人め」

「お前に言われてたまるか」


2人が付き合い始めて6年が経とうとしている。

中学の頃から付き合っているが、このような会話はいつものことだった。


「というか、お前もうすぐで誕生日だな」

「そうですね」

「なんか欲しいものあるか?」

「サプライズじゃないんですね」

「面倒」

「このダメ彼氏め」

「じゃあお前の誕生日プレゼントは、今週のレポート課題だ」

「嫌すぎる!!」

「サプラーイズ」

「いりません!!」

「ああ言えばこう言う。わがままめ」

「いや、誕生日プレゼントに課題のレポートって方がおかしいですよ!!」

「じゃあ何が良いんだよ」

「…先輩のケーキ」

「あ?」

「先輩が作ったケーキが良いです!!」

「はいはい」


神門は、料理が得意であり、特にスイーツは手作りで作ることが多い。

以前、霧崎にカップケーキを振舞ったこともあった。


「全く…。彦星も流石に先輩ほどのダメンズでは無いと思いますよ」

「織姫もお前みたいにわがままじゃねぇよ」

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短編集 MiYu @MiYu517

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