きたる猛暑の夏にぴったりの怪談話でした。
土地の迷信や言い伝えというものは、現代においてはそのまま素の形で受け止められるものは少ないと思います。
だからあまり深く考えられることもなく、「まあ、昔の人はそうだったのかな」ぐらいで済まされてしまうことがほとんどかもしれません。
けれど迷信や昔話にも必ずその核となったイベントがあるはずで、語り継がれる禁忌が破られれば必ず何かの報いがある。
理由がよく分からなくても、破ってはいけない掟がある。
なにかあればすぐにロジックを求める現代人ですが、時にはエビデンスを伴わなくとも守り継いでいかなければならない言い伝えもあるのではないか。
そう思わせてくれた作品でした。
作者からの返信
>那智風太郎さん
ご丁寧なコメントと評価をいただき、ありがとうございます。
オカルトネタを怪談につかえる祟りにまでもっていくのって意外と難しいですが、楽しんでいただけたようで、何とか成功したかな、と思えました。
一読して2014年の広島市の土砂災害における旧地名「蛇落地悪谷」の逸話を想い出しましたが、蛇落地が上楽地に名称が変わったというのは、あれは実はフェイクなんですね。今知りました。
大蛇の首が落ちていく伝説はあるようなのですが、蛇落地悪谷なる地名があったことはないそうです。
でもこんな感じで、日本各地に「あそこは……」と土着の民の間でだけ、密やかに囁かれている場所は多いでしょうね。
戦時中、徴用していた工員の死体を埋めていた土地が今は新興住宅地で家が建っていて、古い人たちはそこがどんなところかを知っているけれど口が裂けても云えないという話をどこかで読んだことがあります。
「黄色い幡のひるがえる」というタイトルがとても良いです。面白かったです。
作者からの返信
>朝吹さん
ご丁寧なコメントと評価をいただき、ありがとうございます。
作品のキーとなる地名は、書いていて面白いと同時に頭を悩ませるところだと思います。
タイトルは、付けた後で地味かな……と思っていたので、評価していただけてとても有難いです。