第8話

「君の名前は? さあ、飛ぶわよ!!」

「鬼窪 功一だ!! 飛ぶって、その箒でか?!」

「うん! ……って、あれ?」


 急に辺りが静かになった。

 周囲のガラの悪い男たちが皆、何故か青い顔をして震えだしていた。

 一体こいつらどうしたんだろう?

 男たちは俺の顔を見ながら、息もできないのか喉を抑えて震えだした。


「ああ、そういえば! 君があの最凶最悪といわれた黒の骸盗賊団の頭領の息子のオニクボなの?!」

「へ……え……? ちが……」

「え? ……ちがう??」 


 ………


「ううん、そうよ……。そうだったわ」

「なんだ? 今の間は??」 

 混乱する俺にマルガリータが控えめにウインクすると何度も頷いた。

「そうそう、あなたが黒の骸盗賊団の頭領の息子でしたものね」

 マルガリータは額に冷や汗を流しながら嘘を並べた。

「あの、盗賊団の人たちに言っておきます。私は今まで頭領の息子を介抱していたんですよ」


 マルガリータが都合のいい嘘を吐くと、途端にガラの悪い男たちは、一斉に泡を吹くもの。腰を抜かすもの。この場から一目散に逃げ出しまうものがでてきた。固まったかのように突っ立っていた男たちが、やっとのことで俺たちに頭を下げた。そして、草原全体が震えだすほどの大声を出してくる。


「そ、そうだったんでやすか! すいやせんでしたーーー!!」

「そりゃ、すいやせんでしたー!!」

「うー、すいやせん!!」

 

 男たちは皆、泣いて謝ってくる。

 マルガリータが俺の掴んでいた腕を強くつねると、耳元で小声で話して来た。

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