七夕の夜に 2人用台本
ちぃねぇ
第1話 七夕の夜に 2人用台本
男:仁科(にしな)…女の先輩。入社6年28歳。
女:佐山(さやま)…男の後輩。入社2年25歳。
男:おつかれ~
女:お疲れ様です仁科先輩
男:佐山今日予定ある?夕飯一緒に行かね?
女:あー…すみません、ご覧の通りでして
男:なにこの書類の山。急ぎ?
女:はい
男:これ全部?
女:ハイ…今週中に片付けなきゃいけないそうです
男:今週中って…終わんの?これ
女:さぁ…完徹3日くらいしたらいけるんじゃないですかね…ハハ
男:なんでこんなに溜まってんの
女:部長と課長のデスクのちょうど中間くらいに置かれていたそうで、どっちも長らく自分の仕事じゃないと思い込んでいたらしく
男:で、なんでそれを佐山がやるはめになってんの
女:一応決裁権限のない書類はお返ししたんですが、それ以外はまあ…体よく押し付けられまして
男:あいつらぁ…
女:なのですみません、ご飯はまたの機会でお願いします
0:佐山の隣のデスクに座る男
女:先輩?
男:貸せ。俺もやる
女:そんな、悪いですよ。お疲れでしょうし
男:いいから貸せ。書類の海に溺れて死にたいのか
女:そんな大げさな
男:大げさじゃねぇよ、鏡見ろお前。お前、昨日何時に帰った?
女:えっと…
男:タイムカード見りゃ一発でわかんぞ
女:あ、いやその…
男:まさかタイムカード定時で切った?
女:流石に定時では切ってませんよ!
男:【では】?
女:…定時+1時間で
男:お前なぁ
女:だって…最近上が残業するなってうるさいじゃないですかぁ!
男:それでサビ残しょい込んでたら元も子もないだろうがっ
女:すみません
男:で、何時まで居残ったんだよ
女:22時まで
男:アホかよ。令和に何やってんだ
女:だってぇ
男:とにかく急ぎの書類から回せ。つーか、明日締め切りの分以外は手ぇ付けんな。明日本人たちにやらす
女:え、でも部長も課長も明日外回りの予定で
男:知るか。そんなもん自分らで残業させて片付けさせろ
女:そんなこと下っ端の私に言えるわけないじゃないですかぁ。そんなこと言って明日からの仕事がやりにくくなったら
男:(遮って)心配すんな、あいつらの弱みなら割と握ってる。「仁科の指示で」って断りゃなんも言えねぇよ
女:わぁー先輩頼もしーでも笑顔が怖ーい
男:ほら、とっとと寄こせ
女:でも先輩、営業なのに書類触れます?
男:営業の前は庶務、その前は企画部。入社6年であっちこっちたらい回されて鍛えられて来たっつの。いいから貸せ
女:じゃあ、お願いします
0:30分後
男:おい、この見積もり額合わねぇぞ
女:え、うそ
男:嘘じゃねぇよ、電卓叩け。足し計ミスってる。多分セルがずれたんだろうな
女:うう…作り直します
男:あとこっち。3行目変換ミス。お食事券が汚職事件になって大問題発生してるぞ
女:えーっ?うわ、ほんとだ…はい…
男:お前なー
女:すみません…
男:あーもう…そんな落ちんな。寝てなきゃミスも起きる。いつものお前はもっとしっかりしてんだから
女:先輩…
男:俺、ちょっと飲みもん買って来るわ。お前、なにがいい?
女:あ、私は大丈夫です
男:…あっそ。んじゃ行ってくる
女:行ってらっしゃい
0:男退場
女:はぁ…ダメダメだ、私
0:男、コンビニにて
男:(M)渋谷と坂巻のやろう…あいつが言い返せないことをいいことにどんだけの仕事量押し付けてんだ、くそっ。明日とっちめてやる。…あーあ。せっかくこっちの仕事が一段落ついたからデートに誘ってみたのによ…
男:(M)にしても、だいぶ弱ってたなあいつ。なんか甘いもんでも買ってくか(ある商品を目に止めて)…お。あ、そっか今日って…
0:男登場
男:戻った
女:お帰りなさい
男:あとどのくらい?
女:明日提出なのはこれだけです
男:だけって分量じゃねぇけど、まあ何とかなるか
女:巻き込んで、すみません
男:自分から飛び込んだんだ、お前ごときに巻かれるかよ
女:はい…
男:…しゅんとすんなよ。いつもなら言い返すじゃねえか、なんか言えよ。調子狂う
女:だって…ほんとに私ダメダメで
男:あーもう!わかった、いったん手を止めろ
女:え?
男:お前に足りないのは圧倒的に休息だ。(ビニール袋を漁って)これでも食って元気出せ
女:私にですか?
男:お前以外に誰がいるんだよ。俺はこんな甘いもん食えねぇぞ
女:「天の川ゼリー」…あ、今日って七夕?
男:一個だけ売れ残ってたんだ。今日が終わればお役目御免だろ、可哀そうだから救ってやった
女:救うって…ふふっ
男:やっと笑ったな
女:え?
男:さっさと食え、残り片すぞ
女:は、はい!あ、あの先輩お金
男:要らん
女:でも
男:こういう時は素直に奢られた方が可愛いがられっぞ。年下のマナーだ、覚えとけ
女:…はい。ありがとうございます
0:1時間後
女:終わったぁ
男:お疲れさん
女:本当にありがとうございます
男:いいよ。お前電車だっけ?途中まで送ってくわ
女:え、いいですよそんな
男:ついでだから気にすんな
女:でも
男:お前さぁ…前から思ってたけどなんでもかんでも否定から入んの癖だろ
女:あ
男:謙虚なのはいいことだけど、受け取ってもらえた方が提示したほうは嬉しいんだぜ?
女:すみません
男:(ため息)…まーあ?俺と車内二人っきりが嫌だってんなら話は別だけど
女:(つっこんで)嫌じゃないですっ!嫌なわけ…ないじゃないですか
男:お、おう…じゃあ帰るか
女:はい
男:……
女:……
男:あのさ
女:はい
男:今度の休み、出かけるか
女:え?
男:お前水族館好きだったろ
女:覚えててくれたんですね
男:大学の頃サークル連中と行った時、えらいはしゃいでたもんな、お前
女:そんなでした?
男:ああ
女:…あの時私がはしゃいでたのって、水族館だったからだけじゃないんですけど
男:え?
女:好きな人が一緒だったから…だから私すごく楽しくて
男:…橋本だろ
女:え、なんで橋本先輩?
男:え、違うのか?
女:え、違いますけど
男:え?
女:え?…っていうか、橋本先輩もうすぐ義兄になるんですけど
男:は?義兄?
女:はい。先輩、お姉ちゃんと高校時代から付き合ってて来月結婚するんですよ。交際10年、すごいですよねー…って先輩?聞いてます?
男:いや、うん…俺はてっきり
女:…ふふっ
男:何笑ってんだよ
女:だってすっごい間の抜けた顔してたから…ふふっ
男:お前なぁ…じゃあ、じゃあお前の好きだった奴って誰だよ
女:えー分かりません?
男:分かるわけねぇだろ
女:えー?…口は悪いけど面倒見が良くて優しい人。新卒で入った会社で挫折した私に、うちに来いって声掛けて引っ張ってくれた人…ここまで言ったら、わかりますよね?
男:それって
女:あと、好きだったじゃなくて、好きな人です
男:お前…
女:この間商店街行ったら、一角に七夕コーナーができてまして
男:は?
女:我ながら子供じみてるなーと思いながら書いたんですよね。…「好きな人が振り向いてくれますように」って。願い、叶いましたかね?
男:っ…おまホント、早く言えよ!
女:だって~先輩の気持ちわかんなかったんですもん
男:好きでもない奴を引っ張り込むかぁ!
女:いや、先輩は誰彼構わず助けてましたよ?
男:俺は興味もねぇ他人助けるほど優しくねぇ!
女:いーえ、先輩は困ってる人がいたら誰にでも手を差し伸べてました!優しさの権化でした!
男:お前の目に映る俺、美化され過ぎだろ
女:仕方ないじゃないですか。…恋しちゃってるんですから
男:っ……その言い草はズルいだろお前
女:それで?私今すっごく勇気を振り絞って告白してるんですけど、先輩の答えは教えてくれないんですか?
男:…言っただろが、ちろっと
女:ちゃんとください
男:…好きだ。大学の頃からずっと好きだった。お前をうちに呼んだのも、助けてやりたいって思いと下心半々だ。文句あっか!
女:ふふっ…ありませーん
男:あーもう、さっさと言えばよかったのかよ、くっそ…時間無駄にした
女:あ、先輩。私今とっても焼き鳥が食べたい気分です!初デートってことで行きませんか?
男:今からかよ!疲れてんじゃねーのかよ?
女:お腹空いたんですもん。疲労より空腹が勝ってます!
男:お前なぁ…つか、初デートが焼き鳥って、それってどうなの
女:いいじゃないですか、どこでも。私、先輩となら焼き鳥も水族館も同じくらい楽しいですもん
男:っ…わかったよ!焼き鳥は行く!だけどこれはデートの予行練習だから!来週水族館、これ決定事項!
女:えー?ロマンチストー
男:うるせぇ!いいから行くぞ!
女:はーい♪
七夕の夜に 2人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます