鬼の系譜

秦野 駿一

第1話

「蒸し暑いね、お兄ちゃん。そろそろ桃の収穫時期だね。」と渚


「そうだな。そろそろ収穫するか。」と颯


岡山県総社市で桃農家をしているなんの変哲もないような兄妹だが、実は鬼の子孫である。そう、あの桃太郎の。


「ねぇ、お兄ちゃん、ずっと私たち隠してるけど、私たち鬼なんでしょ?」


「シー!その話はするなって!確かに俺たちは鬼だ。しかも最後の純血種だ。」


「だって私たち力も怪力だし、角は小さい頃あったけどお父さんに折られたけど。」


「それは俺たちが普通の人間として生きていくためだ。しかしあの桃太郎だけは許せんな。元は村人を守るためにみかじめ料として徴収していたお金を飢饉が来たからって俺たから力ずくで奪ったらしいからな。あの忠誠心の高い軍師の犬と早い進軍の猿と機動性の高い雉。あの軍隊でこられたらさすがにご先祖様も太刀打ちできんわ。」


「あー、あの話って、戦争だったんだね。でも私たちは鬼に変わりはないよね。」


「あぁ、そうだ。俺たちは普通の人間じゃねぇ。拳銃だって効かない。鬼だ。だがな、それを知られたからお父さんとお母さんは国に連れていかれたんだぞ?だからあんまりこういう話をするな。」


「わかったよ。」と渚


時は2040年。2034年に2回目の東京大震災起き、皇居を比較的に安全な場所、岡山県総社市に移すということが決まった。五重の塔の側の畑を全部潰してデカい皇居が建設中である。


「しかし天皇陛下もたいへんじゃな。この田舎の所に皇居を建てるなんて。まあ、桃は美味いが。」と颯


「そうだね。私たちの桃がご用達になったらいいのにな~」と渚


「さてと、桃狩りにいくか。」と颯


2人が桃の収穫に勤しんでいるときに、近くに見慣れない黒塗りの高級車が止まった。そしてスーツを着た男二人が颯たちのもとへ来た。


「君たちは鬼の子孫だよね?」とスーツの男


「鬼の子孫?そんなのいるんですか?」と颯


「隠さなくていい。君達の両親から話は聞いている。この動画を見ろ。」


「颯、渚、これからは国にお仕えになりなさい。私たちが鬼としての生きる道ができたぞ!」


と父親の正隆が言った。


「え?お父さんが?私たちは何すればいいの?」と渚


「あなた方には天皇皇后両陛下の警護にあたっていただきます。」


「へ?俺たちが?」と颯


「はい。そうです。あなた方の両親の研究からあなた方の身体能力が最も警護にふさわしいと結論がでました。」


「え?じゃあ、桃は?」と渚


「他の人をまわします。」とスーツの男


付け加えて


「あなた方にはこれから武芸を磨いてもらいます。これから毎日、皇居ができるまで特訓してもらいます。」


「えーーー!」と渚


「う~ん。今まで隠れて生きてきた俺たちにとってはチャンスかもな。よし、引き受けよう!」と颯


「桃の方がいい...」と渚


「ぶつくさ言うな!俺たち鬼が社会に出る機会だぞ?」


「わかったよ、お兄ちゃん。」

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