首輪を着けた人魚姫

三好祐貴

首輪を着けた人魚姫


夏の午後Tシャツの襟もだらだらとメビウスの帯なぞり続ける



まといつくモーターの音蚊の体から噴き出してきた私の血



台風の目の中にいた乳幼児チンピラ顔で私を睨む



割りばしの結合性の双子ちゃん分離されても一つの運命



からびさせ黄泉送りして湯につけて蘇らせたラーメン喰らう



項垂うなだれたカンパニュラの口元に光る吸い尽くせなかった梅雨の雨



でんでんむしむし歯磨き粉顔出したのに照屋さん



君の中にこのまま溶けて取り込まれたいアンコウの君はお風呂の石鹸



浮き沈み夜の静寂しじまに見え隠れする剃り残された腕の狐島



悠久の時を生きてきたベニクラゲ手帳は今日も埋まっていたのに



延長コード繋いだ先のスマホにはもう繋がってない あなたの気持ち



明るかったり暗くなったり一日は躁鬱病の患者だったり



夜の隙窓から入ってきた羽虫私じゃなくてランプに夢中



すりすりとすり寄ってくる人達に撫でられている普通の手すり



くださいな御願いします其の愛を私に寵愛賜りたいな



ティータイム首輪をつけた人魚姫紅の海を自由に泳ぐ



まどろみの夢の淀みに溺れしも藻掻くはずなくただ沈み行く



警察に囲まれている夢の中閉じ込めてたい私がいるの?



目覚めると別の私がここにいた記憶は同じ悲しみはない



神様の私が創ったこの世界には私が二人も存在している




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首輪を着けた人魚姫 三好祐貴 @yuki_miyoshi

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