第7話 さよならトモダチ

 Twitterでの親友が、退会した。

 宣言通りの別れだった。


 私は、ネットでの繋がりの方が好きである。現実の閉塞感を打破するヒントをくれるのも、私の行動を肯定してくれるのも、みんなネットの自由民だった。時には国籍を超えてまで、私にわざわざ賞賛をくれた。

 血縁や土地に恵まれなかった私は、直接会えない距離からの声援に救われた。彼らのおかげで小説を書くようになり、その評価で病気まで克服できた。

 だから、ネットの友との別れは現実より重い。


 その人は私に医学薬学の知見をくれた。私もどうやら、彼の商売について少しは役に立っていたらしい。何かのおりに感謝された。

 ……でも、私という人間は自分が何をしてやったのかなんて覚えていないらしい。昔から、その辺はバカだバカだと笑われていた。欲がないと言えば聞こえはいいが、実際はタカれる時にタカれないお人好しだ。


 もしも彼と現実に会っていたら、私は彼と距離を置いただろう。わたしを直に知っている人は、私が相方の黒子以上にならない事に気づいているはずだ。私は、相方という壁を越えて現実と関わるつもりが無いのだ。というか、正直現実なんかと関わりたくない。私は口から出る綺麗事を信じ込めるような、そんな幸福な人生など歩んではいない。


 予告された別れ、これだけが救いだ。ずっと覚悟を決めて彼を見てきた。こんな人がいたと心に刻んでツイートを読んでいた。

 私もSNSから距離を置きたいタイミングだから良かったな、なんて自分を慰める。それでもきっと、彼は私を支えた歴代のネット自由民として心に残り続けるのだろう。


 彼とはいつか、ネットの海で会える予感はしている。だけど全くあてはない。

 予感を事実にしたいと思いつつ、今は深い感謝の意を述べよう。


 いままでありがとう。

 現実の世界で、しっかり頑張ってね。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る