第3話 ラッキースプリット 

離れていても遅くはないと

帰ってきて 

触れる 

いっそ手に取る


胸が切なくなるような

あんなふうな痛みは

もはや俺には 

残っていない


形を変えて降ってくる

というより

苦悩は

自身の中から湧いてくる


随分違う世界の

扉を開けて

今 俺は

ここに

住んでいる


お前

良かったな

生温なまぬるいみたいだが

ツイていやがる


だがな

俺だってツイてる


歯の隙間から漏れ出す

息の温度で

暖を取る日々だとしても


あの頃の俺が 

そう言った気がした








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