第33話
「……ふっ……はは……はははっ……」
傍から見たら怖がられるだろう。自分でも情緒なんてわかったもんじゃない。あのとき感じていた寂しさ、怖さ、怒り、憎しみ、閉じ込めていたどす黒く渦巻く感情を振り払うかの如く、言葉が溢れ出す。
「忌み子……? 異端児……? 黙れよ……俺は期待されるために生まれてきたんじゃねえ。蔑まれるために生まれてきたんでもねえ――! 婚外子上等! 俺の人生は、俺のもんだ!!」
感情とは裏腹に、俺の頭は澄み切っていた。
ぱちんと蓋を開けると人差し指で表面をなぞる。赤くなった指先で空間に五芒星を描き、それをぐるりと円で囲んだ。黒板にチョークで絵を描くように、一筆書きの筆跡がついてくる。
そして俺は最後に、五芒星の真ん中に点を突き刺した。
「
俺の後ろから音もなく現れたのは、この浄化術の七人目。宝剣で敵を撫で斬りにする、召喚したが必殺の女丈夫。しかし俺は鞘の召喚が、厳しい条件の下に成り立っていることを知らなかった。
しかしそれを無視できるほどの浄化力の総量、激情の中にいてなお保つことのできる冷静さ、浄化師としての天性の才能。与えられなかったから与えられたもの、忘れ去られていたものはあまりにも大きかった。俺は自分の急激な成長を身にしみて感じ、俺を冬に閉じ込めていた奴らに向けて嘲笑った。
浄化力の天井を突き破ったとはいえ、一気に浄化力が消費されたのを感じる。鞘を召喚するには莫大な浄化力が必要なのだ。それでもまだ安心できない。再び紅を空間に滑らせ、二画で止めた。
浄化術の詳細は久々宮さんが話していた。まさか俺が持っているとは知らなかった……いや、忘れていたわけだが、久々宮さんは最初から知っていて黙っていたのだろうか。
「
先程とは対照的に、ゴオッと炎が燃える音とともに一八が現れる。
「一八、お前は先輩のところへ行って敵を焼き払え。間違えても先輩方は焼くなよ」
「焼いてしまっていいのですね。ありがとうございます。もちろん、大切な人は傷つけません。お約束します」
そう言って上昇気流に乗って、ふわりと舞い上がって去っていった。
(よしあとは……頼むぞ、鞘。浄化力は全額ベットだ)
「穢れよ、参る」
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