第16話 『懐疑的な猫派』/「愛は犬」始まり指定

「愛は犬並みにあるってば」

 い、犬並みですか……喜ぶべきか、憂うべきか。

だって、それ私に言います?

忠犬ハチ公とか、タロとジロでしたっけ。犬は飼い主に忠誠心がある生き物だといわれますけどね、たしかに。嫌味ですか?

「なんだよ、その顔!」

 つい、仏頂面をしてしまいました。

「犬並みっていうのは、愛情度数でいえば、かなり上位スコアだぞ」

 だから、それ私に言います?

相変わらず、全然女心がわからない人ですね。

そんなに鈍いようでは、モテませんよ……まぁ、浮気の心配がないのは利点かもしれませんね。

でも、そう言いながら頭を撫でられるのは、悪い気はしませんが。

こういうご機嫌とりなら、甘んじて受け入れましょう。

 

 かまってちゃんになるのは主義に反しますが、あまりにも愛情表現が乏しい彼に時々不安になってしまうもので……。

かわいい声を出してみました。ゴロゴロ。

反応が薄かったので、彼が見ているパソコンの画面の前に顔を出してみました。

それでやっと得られた言葉が、「愛は犬並みにあるってば」ですもの。

ひょっとして……本当は犬派!?

じゃないと咄嗟に「犬並み」なんて言葉は出てきませんよね?

もしかして、散歩の有無や住環境でペットを決めたクチですか?


 猫好きは、猫愛がスパークしている人が多い印象なんですけど!

彼の方がよっぽど猫っぽいと感じます。

こんなに美人な彼女がいるんだから、もっとデレデレになっても構わないんですよ。本音としては……たくさん愛でてほしいんです。

だけど、猫はツンデレが魅力なんでしょ?

甘えん坊を隠して、がんばっていい塩梅になるように、塩対応の割合を意図的に増やしているんですよ。


 ……人間を愛するのも、楽じゃありませんね。

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