物理系魔法少女、次なる配信ダンジョンへ

 「今日はどっちにする? カレーかハヤシライスか」


 紗奈ちゃんが俺に聞いて来たので、カレーを頼んでおく。


 魔法少女に変身して、具材を等間隔に切り揃え、具材を鍋にぶち込んで火を通す。


 その後は紗奈ちゃんのアレンジを加えたカレーが完成するまで他の事をやっておく。


 「最近配信してないけど、大丈夫?」


 ユリアさんがそう質問するので、そろそろするつもりです、と答えた。


 最近秘書さんとユリアさんはチェスや将棋にハマっており、ユリアさんが常に勝っていた。


 秘書さんの十八番、転移もユリアさんの前では意味が無いらしい。不正は良くないしね。


 「そう言えばユリアさん。落ち込んでいた教え子さんは大丈夫ですか?」


 かなり彼女は心配していたので、そう声をかける。


 今は落ち込んでいる様子もないし、その子ももう立ち直ってるのかもしれない。


 「ああ。友達に支えられて、前を向くようになったよ」


 「それは良かったです」


 明日は配信すると決めたので、配信向けのダンジョンをネットで探す事にした。


 やっぱり事前に調べておく事は必要だ。


 それから数十分後にカレーが完成するが、俺はスマホと睨めっこしていた。


 自分のレベルとは違くても、ルミナスさんの知識は俺以上なので、質問もしてみる。


 配信者としての先輩であり、時々コラボもさせてもらっている。


 今では時々教えを乞うている程だ。


 そんな俺の肩をトントンとする人物がいる。振り向くと、指が頬をツンっと刺さる。


 小学生とかがやるあれ。


 「ごはんですよー」


 「ごめん」


 四人で晩御飯を食べて、順に風呂に入り、俺は広い部屋の方へと入って行く。


 明日も朝早いので、寝る。


 後に紗奈ちゃんも入って来て、ゆっくりとベッドの中に入り、寝る。


 翌朝、俺は朝起きたらお湯を温めた紗奈ちゃんからスープを貰う。種類は日替わりだ。


 冷えた身体を温める為である。


 「オニオンスープが体に染みるんじゃ〜」


 「ふふ。朝日が出るの遅くなったよねぇ」


 「そうだな。冬になった証拠だ。まだもう少し先だけど」


 そんな年寄りみたいな会話をする。新婚レベルでも、日常会話は楽しいモノだ。


 二人で和んでいると、秘書さんが部屋から出て来る。パジャマが少しはだけてへそが見える。


 だらしない格好だ。


 「紗奈、ご飯〜」


 「はいはい。座って待ってて」


 「いえっさー」


 俺も朝食の準備をして、ユリアさんが起きてきたタイミングで食べる。


 その後は各々向かう場所に向かったりする。ユリアさんは家に居る方が多いけど。


 最強の番人だ。


 ギルドに到着すると、既に他の受付嬢達は把握しているので、俺達に疑問を持つ人はいない。


 いるとしても、今目の前で憤慨している田中くんくらいだろう。


 「なんで、なんで神楽さんと同じ指輪をしている!」


 「⋯⋯」


 ここで否定すると紗奈ちゃんは怒る。絶対に何かしらの方法でバレる。


 誤魔化すのも同様かもしれない。


 素直に答えると、田中くんが面倒になりそうだ。


 「えっと、たまたまじゃないかな?」


 はぐらかした。


 結局曖昧な方へと逃げる。


 田中くんは納得いってない様子だったが、無視して受付に向かおうしたら、田中くんが先に紗奈ちゃんの受付に行った。


 露骨に嫌そうな顔を浮かべるが、田中くんは気づいてないようだ。


 「じんっ!」


 そこで田中くん、紗奈ちゃんの名札が変わっている事に気づいたらしい。


 そそくさとトイレに逃げ込み、魔法少女に変身して、フードを深く被る。


 出る際に田中くんとすれ違ったが、バレてないようだった。


 「⋯⋯なーんで認めなかったんですか?」


 これはちょっと拗ねてるな。敬語だ。


 「めんどくさかったから」


 「私から言ってあげようか?」


 「それはそれで可哀想な気がする」


 「絶対に叶わない片想いはバッサリと切り捨てた方が良いと思うけどね」


 俺はなんとも言えず、今日行く予定のダンジョンについて話をした。


 「レベル5推奨ダンジョンのドレイク鉱山ってのに行こうと思うんだけど⋯⋯」


 「推奨レベル5か。レベル4と5の差はね、3と4の差の比じゃないんだ。危険だから一人で行って欲しくは無い」


 「うぐぅ」


 ま、そうなるよね。


 なんとなく分かっていたので、第二の案は用意してある。


 「だけどレベル5ならピンチの際、私が助けに行ける許可が降りるので、良いよ」


 「なんじゃそりゃ」


 「星夜さんのピンチには絶対に駆けつける、それは頭に入れておいて。常に私がいるから、傍に」


 その辺は別に心配ない。


 どこに行っても、なぜか紗奈ちゃんの気配ってのは感じるのだ。


 特に女性と喋っていると、顕著に紗奈ちゃんの気配って言うかオーラって言うか、そんなのを感じる。


 ありがたくその言葉を受け取って、俺はゲートを通って、ドレイク鉱山へと入った。


 そこは荒れた血の山であり、所々にカラフルな鉱石が埋まっている。


 それを採掘してギルドに持って行くだけでもしっかりと金は稼げる。


 だけど今回の狙いは配信であり、目標はとある魔物である。


 それが下級ドラゴンと称される、ロックドレイクと言う魔物の討伐だ。


 それを目指してライブを始めようと思う。


 「アカツキさん」


 そんな時に背後から、聞き覚えのある声がかけられる。

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