物理系魔法少女、新たな魔法少女と出会った

 「それで今日はどうするの?」


 指輪も完成して、ウキウキで装着している紗奈ちゃん。


 言うて俺も指輪をはめてギルドに来ているのだが。


 「そうだなぁ。今日は配信の方もしたいんだよね」


 「そうだね。じゃあ、幻想森林なんてどうかな? 雰囲気がとても良くて配信者に人気なダンジョンの一つだよ」


 「お。それならそこに行こうかな」


 俺は幻想森林と言うダンジョンに入った。


 森林の中がキラキラと少しだけ輝いており、光る鱗粉のようなモノが空気中に漂っている。


 ある程度進んで配信を始めようとしたら、後ろからゆっくりと歩いてくる人の気配を感じた。


 その気配はまっすぐと俺の方に向かって来ていた。


 そのまま通り過ぎるなら考えすぎなのだが、ファンだとしたらどうしようか?


 サインなんて練習してないし、握手を求められてもして良いのか分からない。


 いっそ逃げてアカツキの見た目から変えるべきか?


 そう考えていると、話しかけられるくらいの距離まで詰められて、その気配は止まった。


 「魔法少女のアカツキさんですよね?」


 「はい」


 俺が振り向くと、そこには白色の魔法少女衣装を着た、女の子が立っていた。


 俺が返事をすると、嬉しそうに口元を歪めて笑った。


 「良かったぁ。わたくし、白闇の魔法少女、シロエでございます」


 「ど、どうも」


 ファンとか視聴者ではなく、魔法少女繋がりのようだ。


 俺の知らない魔法少女のようだが、俺を知っているならアオイさん達は知っているのだろうか?


 言われてないし、分からんな。


 アオイさん達の知らない魔法少女が居る可能性はある。


 前にミュータントのアンデッド達の軍団から救われた。それも知らない魔法少女だった。


 あれ以来会ってないが。


 「実は折り入ってお願いがあって会いに参りました」


 「そうですか」


 「敬語なんてよしてくださいまし。わたくしは一番年下だと思うので」


 「そうですか」


 「この辺は魔物がおりますので、少ない場所に移動してから話すので構いませんか?」


 俺は了承して、シロエの案内で魔物が少ない場所に向かう。


 そんな場所を知っており、案内までできて、迷いのない足取りを見て、彼女のレベルは自分と同等以上だと悟る。


 そんな相手だと言うのに何をお願いするのだうか?


 そう警戒しながら進む。


 「あまり警戒しないでいただきたいでございますわ。わたくしは敵ではありませんわ」


 「ごめん。初対面なのでついね」


 「ふふ。構いませんわ。信頼は長い時を共にして培うモノですもの」


 先程から笑顔を絶やさいシロエさん。


 このダンジョンで現れる魔物は基本的に魔法を使うらしい。


 とある木を横切ると、いきなり魔法が飛んで来たのだ。


 「きゃっ」


 シロエさんは驚き、目を瞑って手を前に出した。


 それだと回避も防御もできないと思ったので、蹴って弾く。


 「あ、ありがとうございます」


 「いや。それよりもどこから」


 「根に気をつけてくださいまし。どこかの木がトレントかもしれまああああ」


 「シロエさんっ!」


 シロエさんの足が木の根っこに捕まって持ち上げられる。スカートが垂れそうになり、手で引っ張って抑える。


 助けようとしたら、俺の方にも根っこが伸びて来て、全身を拘束される。


 根っこの出処は、真隣の木である。


 「この程度の力で、俺が拘束できるか!」


 「あら凄い」


 「だいぶ余裕がおありな事で」


 「助けてくださいまし」


 俺に放たれる風の魔法を紙一重で躱す。


 風の魔法は目視で確認するのはとても難しい。なので基本的に予測と勘で回避する。


 本体を殴り飛ばせば一気に解決するだろう。


 「よしっ!」


 魔法を一旦回避し、反撃の拳をトレントにねじ込む。


 根っこ事吹き飛びそうだったので、シロエさんを繋いでいる根っこは踏んでおく。


 殴り飛ばし、踏んでいた根っこはちぎれた。


 「きゃっ」


 「シロエさん!」


 頭から落ちる彼女の下敷きになって、落下の衝撃を無くす。


 「ありがとうございます」


 「レベル4以上なら、着地はできるでしょうし」


 「わたくし、フィジカルはとても弱くてよ」


 木の魔物がそこら中にいるのに配信者に人気な理由が分からんな。


 だいぶ危険だぞ。


 それとも、シロエさんみたいなテンプレ的な行動ができるからか?


 何はともあれ、魔物の少ない場所への移動を再開する。


 さっさと要件を聞きたいところだ。


 魔物が少なくて開けた場所に到着し、木に背中を預けて話を聞く事にした。


 「実は、お姉様を助けて欲しいのです」


 「無理だろ。そのお姉様を俺は知らない」


 「今からお話します」


 シロエさんのお姉さんは人を信用しないらしい。


 それは身内にも含まれており、シロエさんも姉に信用されてない。


 助けて欲しい内容は、シロエさんが信用できる相手と思わせる事。


 「ん? それって俺にできること無いよね?」


 だってそれは当人達の問題であって、俺にできる事なんてない。


 なのに俺を頼るのは間違っている気がする。気のせいか?


 「確かにその通りですわ。ですが、一人で行っても話すら聞いて貰えませんもの」


 「つまり、話を聞いてもらえる環境を作って欲しいと?」


 「その通りですわ」


 ふむ。

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