物理的魔法少女、空高くトブ
確かに俺は「全力で来い」と発言したさ。
だけどな、それは卑怯じゃないか?
「空飛べない相手に空を飛んで戦うな! 降りて来なさい!」
鳥のような翼を紫炎で形成して広げ、空を飛んでいる。
当然、俺の言葉は届く事はなく、返事の代わりに来たのは無数の炎の矢である。
精霊達は森が壊れるのを嫌う。
うちわだと一回振るった隙に撃たれたら対処できない。
「必殺マジカルシリーズ」
だったら、全体的に一気に吹き飛ばすのではなく、一つ一つ確実に砕く。
「
光り輝く拳を高速で突き出して矢を次々に破壊していく。
矢が終わるタイミングを見て、地面を思いっきり蹴る。
飛べないけと跳べる。
アオイさんの高さまでジャンプしようと思ったら、できるのが魔法少女だ。
手刀の形を作る。
「必殺マジカルシリーズ、
片方の翼目掛けて、俺は全力でチョップを繰り出した。
片翼を失えばバランスを崩して、地面に向かって落ちる。
それも炎を利用して着地するけどね。
「それでも飛ぶか」
だが、魔法で形成された翼は破壊されても何度でも蘇る。
落ちながら再び翼を作り出して空を飛んでしまった。
俺が再びジャンプのために膝を曲げていると、全方位から紫炎の鳥が迫る。
落ちている途中で地面に用意していたのだう。
「オラッ!」
両手を組んで、地面に向かって叩き落とす。
それが生み出す衝撃波で炎の鳥を破壊したのだが、今度は上から鳥が迫ってくる。
俺に自動防衛なんて羨ましいモノは備わってない、それを見破られたのだろう。
だから貫通力よりも火力を優先し、広範囲かつ火力も高そうであり、扱いやすそうな鳥にしたのだろう。
普段から自由な鳥は魔法を使う時のイメージもかなりしやすいのだ。
空飛ぶカエルや水中を泳ぐ鳥、普段は見ない存在だとイメージは難しい。
イメージで幻術を使えて、魔法が使えると知られてからちまちまみんなで遊んでいた結果、そう分かっている。
イメージだけで顕現できる魔法は確かに強力だが、その分扱いが難しい時もあるのだ。
「そんなん。いくらやっても変われねぇよ!」
一個一個砕く。
俺もさっき地面にクレーターを作ったばかりだけど、元凶と戦っているので精霊達は許してくれるご都合解釈で、今の俺は戦っている。
正面から迫る炎の鳥達を見て拳を固めるが、それを察知してから軽やかな動きで周囲を包囲する形になった。
「めんどくさいな」
そう呟くと、強い風が拭いて炎の鳥が細切れになって消える。
風の斬撃ってのは通ると何となく分かるけど、基本見にくいので厄介だ。
風魔法ってかなり強いな。
「うちの想いは助けたい。せやけどな、アオイちゃんを蝕む痛みから解放してやりたいのも本音や」
アオイさんを正気に戻すまで戦う間、彼女は苦しむだろう。
痛みから即刻開放される場合、アオイさんを殺す事になる。
どっちも本音か。
「少しでも正気があるなら、答えてやアオイちゃん。自分はどないして欲しいねん!」
そんな難しい質問を上空にいるアオイさんに投げかける。
その声が届いたのか分からない。だけど魔法は飛んで来る。
しかし、その魔法はゆらゆらと揺れてとても遅い、そして美しかった。
「花?」
「アサガオや。⋯⋯うちは。アオイちゃんを助けたい。アオイちゃんが自ら悪魔から助かると信じてる! だから、少しでも暴走状態を弱めるために、戦う」
「分かった。そんじゃ、一旦地面に落とす。足場をお願い」
俺がそう言うと、察してくれたのかミドリさんは刃を分裂させて足場をアオイさんに伸ばす。
その刃を使って高速で接近する。
「くっ」
放たれる魔法を諸にくらうが、歯を食いしばって耐えて、腕を掴んだ。
身体を捻って、力任せに地面に向かって投げる。
炎を使って落下速度を弱めて、炎をクッションのように形成して着地する。
そのタイミングでミドリさんが魔法を使って炎を薙ぎ払う。
俺には炎の鳥が、ミドリさんには炎の矢が飛ぶ。
「しゃらくせぇ!」
「魔力をもっと消費しーや!」
互いに炎を破壊する。
アオイさんが両手を天に掲げ、巨大な鳥の炎が形成される。
「フェニックスドライブ⋯⋯そんな魔法アオイちゃん使えんだ。知らなかった」
「暴走状態だから、戦いに関してのセンスが上がっているのかもね」
魔法にそんな名前のがあるんだな。
俺の知っている魔法を使う人達って、大抵がイメージだし、ミズノだって案外シンプルな名前だ。
イメージだけで大規模な魔法を構築する⋯⋯厄介な。
「うちの全力で止めてみせる」
ミドリさんが魔法陣を展開した。
そういえば、今までは魔法陣を展開せずに風を操っていた。
剣を使うと当時に魔法を使っていたよな。あの剣には色んな能力がありそうだ。
巨大な魔法に備えていると、急激に炎が小さくなり始めた。それでも巨大だが。
さらに、ダンジョンの中なのに雲が濃くなり、大雨が降る。
その雨が炎をさらに弱める。
「近くに居てくれて良かったのじゃ。さぁやるのじゃ!」
「全く」
「こんな面倒事を持ち込んで⋯⋯」
火の精霊と水の精霊が幻の精霊の後ろからやってくる。
強者感溢れる二人の登場だったが、身体が少しだけ薄い気がする。
本当に色んなところの問題に対処して来たのだろう。
良くあるモノで考えれば、力を使って魔力が減っているから、身体が薄くなっているのだろう。
「ありがとうございます。あれだけ弱くなれば、コイツで壊せる!」
俺はステッキを強く握りしめる。
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