物理系魔法少女、殴れぬモノなどあまりない(知る限り)
「大丈夫ですの?」
「大丈夫です。久しぶりに反抗された」
そう言えば一定時間経つと自分から戻って来るんだよなコイツ。
しかも都合良くとは行かず、真っ直ぐ投げた速度で戻って来るかな。
魔石を拾う。
「それにしてもすごい速度でしたね。ご友人を思い出しますわ」
「ご友人⋯⋯もしかして唐紅の女の子ですか?」
「よく分かりましたね。あ、配信を観てくれまして?」
「いいえ」
アオイさんが少しだけしょげた。
何となく解散するタイミングを失い、物理と魔法のコンビで森の中を進んでいた。
⋯⋯この森って燃えないのかな?
「自己紹介が遅れましたわね。自分はアオイと申します」
初対面で丁寧な人だなぁ。
さてここでピンチ到来。
自己紹介⋯⋯名前を当然俺も言わないといけない。
しかし、こんなすぐに良い名前なんて⋯⋯。
「アルファです」
「よろしくお願いしますわね。アルファさん」
「ええ。こちらこそアオイさん」
俺なんか外人みたいな名前だな⋯⋯髪色的に問題ないかな?
アオイさん一人でここに来ているのは修行が目的かな?
やっぱり音の使徒に負けてるから⋯⋯俺も勝っては無いから何も言えないけど。
俺のソワソワが伝わったのか、アオイさんが口を開く。
「最近このダンジョンでとある悪行が働いていると情報がありまして、その調査に来てるわ」
「悪行⋯⋯」
「ええ。この格好とソレは繋がなくて良いわよ。ただの噂程度だし、本当だったら抑えてギルドに報告するわ」
悪行ね〜どんな悪行か知らないけどダンジョンに入るにはギルドを通すはずだ。
さすがにダンジョンに直接乗り込むマネはしないし、できんだろ。
だから悪い事なんてできないと思うけどなぁ。
もしもギルドに内通者がいて、その辺を上手くやっているのなら話は変わるかもしれないけど。
それをあの本部長が見逃すかな〜。
別に本部って訳では無いだろうけど、それでも他ギルドでも悪さできる奴がいるかね。
ま、悪さできる奴らの考えなんて分からんけど。
「そう言えばアルファさんはアカツキさんについてご存知ですの?」
「ぶふっ」
「?」
なぜここに来てこの俺について質問して来る。
確かに相手は別人だと思っているのだろうけども。理由が分からない。
「すごいですわよね。一人でレベル型の魔物の討伐なんて」
「偶然だと思います」
「きっと報酬はすごいでしょう」
「もしかしたら平均以下かもしれませんよ」
「アルファさんはアカツキさんの事をお嫌いですの?」
「そんな次元じゃないですね」
だいたい本人なので。
ギルド長達の会話的に報酬は平均以下だろう。がしゃどくろだって、たまたま倒せる強さだったのかもしれないし。
「すごいです。あの人は一人でドンドンと強くなる」
「⋯⋯別に一人じゃないと思いますけどね」
「え?」
俺は横目で見ながら、アオイさんに返事をする。
「一人で強くなれた人を知りません」
紗奈ちゃんだって色んな人に支えられてあそこまでおっかなくなったんだ。
ユリアさんがいなければ魔法が、あの秘書さんがいなければ友達も少なかったかもしれない。
それは紗奈ちゃんが支えられているように見え、反対に紗奈ちゃんも支えているのだ。
俺もそうだ。紗奈ちゃんに支えられている。
支えているかは不明だけど。
「一人じゃ強くなれませんよ。支えてくれる誰かがいるから、帰りたい場所があるから。生き残りたい、強くなりたいってなるんじゃないんですか?」
「そうかもしれないわね。でも自分はそんなのを望めるほ⋯⋯」
横目で見ていた奴らが動き出した。
腕を剣のような形にして俺に迫って来る。
「気づいてないと思ったかボケっ!」
「シャドウ! それは影の塊で物理攻撃は⋯⋯」
俺は黒い塊をぶん殴って、風船が破裂するように倒す事に成功した。
他にも数体襲って来たが、敵じゃなかったな。
これならがしゃどくろの方が強い。比べるのも酷か。
「これで終わりっと⋯⋯アオイさん何か言いましたか?」
「イエナニモ」
「そうですか」
どうして突っ立てるんだろう?
ようやく魔物を見つけられるようになったな。
それから昼飯を食べたりして、アオイさんと雑談を繰り返した。
一方的な初対面って事もありかなりギクシャクしたが、アカツキの時よりかは平和的な付き合いができていると思う。
「懐中電灯はずっとつけているんですの?」
「そうですね。電気関係ないんで」
「そうですの? 魔力は大丈夫ですの?」
「むしろ無いのでご安心を」
「ん?」
魔法使えたらあのレベルが異様に高いスキルの効果が発揮するのに⋯⋯魔法が使えたら。
魔法少女なのに、魔法が使えないこのもどかしさ!
ダンジョンの時でも普通の俺で入れたらな。
「⋯⋯そう言えば、ここら辺も魔物が出て来ませんね」
「そうね。ゲート付近だからしら?」
付近って言っても、かなりの距離離れていると思うけど。
移動を再開していると、人の喋り声が聞こえた。
一旦聞こえたら、クリアに全ての声が聞こえた。
「──全くめんどくせぇ」
「このガキ強かったなぁ。魔法使えなきゃ意味なかったが」
「だな」
「この緑髪どうする?」
「顔立ち良いし、一緒に売るか」
「だな。ボンボンはこう言うの高値で買うからな」
そんな会話が聞こえた。
俺が反射的に走り出そうとしたら、それよりも早くアオイさんが足に爆炎を纏って走り出していた。
足の裏で炎を爆発させて加速している。
「こんな場面に遭遇するとはな!」
俺も当然走って向かう。
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