物理系魔法少女、帰還を喜んだ

 布団を広げる。


 「どうぞ寝てください」


 「座って寝られる。それに肉体年齢なら、18歳なんだ。問題ない」


 「客人をそんな扱いにはできませんよ」


 「横になると、建物を死なせてしまう可能性があるんだ」


 そのための解決策はあるが、それをしてしまう勇気はない。


 なので俺は壁に背を預ける。


 「俺だけ布団を使うのも、不公平ですからね」


 俺はイメージで身体を強化する。


 彼女には魔法も意味無いだろうな。紗奈ちゃんの氷を死なせたんだから。


 「⋯⋯」


 え、なんかすごい驚いた顔をしているんだけど。


 「あ、すまない。中々に膨大な魔力を有していて、びっくりしたんだ。悪いのだが、スマホでとある動画を見せて欲しい」


 「おやすい御用です」


 テレビに繋げた方が見やすいと思い、繋げだ。


 そして言われたチャンネル名で調べる。


 「⋯⋯こ、これで、合ってるんですか?」


 「ああ。ありがとう」


 「嘘、だったりしますか?」


 「嘘なんて、君に言った事は無いよ」


 嘘だろ? 嘘だと言ってくれ。


 なんで俺のチャンネルなんだ!


 あ、チャンネル登録者数が20万人ってかなり行ってた。


 お礼も何もしてねー。


 最新のコラボじゃない動画を流す。


 元々がライブなので、とても長い。それを食い入るように見る。


 「⋯⋯やっぱり何も見えない。どう言う事だ?」


 すごく動画に集中しているが、何か言っている。


 まぁ良いか。


 動画は自動再生されるだろうし、俺は寝るとしよう。


 「君はどうして魔法が使えるのか、疑問に思った事は無いのか?」


 「疑問には思った事はありますが、使えるから使えるんだって、考えるの止めました」


 「気にならないのか?」


 「気にしたところで、ステータスやらスキルの詳細が分かる訳では無いので。俺、諦めるの得意なんですよ」


 元社会人としてダメ発言をした気がするが、気にせず寝た。


 魔法を使っても少しだけ腰とかが痛くなった。


 ユリアさんも寝ているようで、壁に背を預けていた。


 「寝顔は高校生っぽい⋯⋯肉体年齢18って言ってたけど、16くらいな気がする」


 中身は数万年も生きているのだろう。


 世の中には不思議がいっぱいだ。


 「ん? おはよう。朝は早いのだな」


 「おはようございます。早めにギルドに行くので、その癖ですね」


 「そうなのだな。どんな魔法が使えるのか聞いても良いか?」


 俺は色々な魔法を披露した。


 色々と出す事はできる。俺の魔法は幻術と言う嘘を創り出せるモノだと思う。


 その嘘を真に変換する事も可能なのだ。


 「ふむ。探索者はこの魔法で戦っているのか?」


 「いえ。筋力が高いので、殴ってますね」


 魔法使えないし。


 「そうだよな。あのデタラメなパワーだよな⋯⋯」


 何かブツブツと言っているけど、大丈夫かな?


 紗奈ちゃん早く帰って来ないかな。


 「不思議だな。ステータスカードが表記を間違える事は無い⋯⋯それも間違いでは無い、何か違うのか? 変身系のスキルを使うと能力値が上がる⋯⋯」


 何か色々と考えているらしい。


 それから紗奈ちゃんが帰って来たのは二日後だった。家に直接転移で帰って来た。


 「星夜さーん! 遅くなりましたー!」


 「あれ? 先生?」


 「やぁ。おじゃましてるよ」


 紗奈ちゃんがいきなり抱きついて来た。


 「ごめん。せっかくくれたネックレスが⋯⋯」


 「良いよ。紗奈ちゃんが無事なのが一番大切だからさ。今度また買いに行こ」


 「うん。指輪が良いな」


 ネックレスを壊してしまった事を悲しんでいたようだ。


 何をしていたのか俺が聞く事はない。仕事内容を聞いてもね、理解できないから。


 それになんか怖いんだよね。あの本部長が絡んでそうで。


 あの人が未だにどんな人か、俺分かってないし。


 「帰ってそうそう、休まずにご飯作ってくれるの?」


 「はい! そのために食材も買ってきたんだから! 豪勢に行くよ!」


 「やった!」


 なぜか秘書さんも喜ぶ。ユリアさんが疑問に思ってるぞ。


 「君も一緒に晩御飯を食べているのか?」


 「最近じゃ朝もお世話になってますね〜あはは」


 「人の事を言える立場では無いのだが⋯⋯良くないと思うぞ」


 紗奈ちゃんの豪華なご飯を食べた。


 紗奈ちゃんの魔法でユリアさんは普通に手が使えるようである。


 「明日からギルドに行くのか?」


 「あ、いえ。明日は星夜さんと引越し予定だったんですよ。本当は一日出張の予定でしたからね⋯⋯」


 「それだけ⋯⋯忙しかったのだろう?」


 ユリアさんが何かを言いかけて、俺をチラ見して言葉を最後まで言った。


 うん。俺には言えない事なのだろう。


 だからと言って仲間外れ感は無いよ?


 俺にとって紗奈ちゃんは推すだけでも全然良いから。


 「私、かなり転移多用したのに明日もか」


 「ご馳走してるんだから、雑用くらい手伝いなさい」


 「いつも感謝しております」


 そんな日常会話を横流しで聞いて、手狭なこの部屋を布団で埋めつくした。


 まさかの四人で寝るらしい。そろそろ秘書さんは近くのビジネスホテルを使って欲しい。


 「先生居るから大丈夫だよ。あんたは自分の家に帰れよ」


 「紗奈意地悪言ってる? 事情知ってるよね? もうあの家は名義だけが私なの!」


 「「ん?」」


 何かあったのだろうか?


 それよりも狭いな。


 寝返りしないことを祈りながら、俺は眠りについた。


 久しぶりに紗奈ちゃんと同じ空間にいる気がする。たったの数日なのに⋯⋯。


 翌日、俺達は数十分とかからずに引越し作業を終えた。


 空間魔法ってスゲー。


 それと、内覧した時よりも部屋のサイズがかなり大きくなっていた。


 具体的に何が変わったのか、まず部屋が六つになってた。


 つまりは、四人分の部屋は普通にあるのだ。その一つは大きかった。


 「なーんでこうなった」


 「これで家賃が変わらないって、良いね」


 「いやもう逆詐欺なんよ! 怖いわ!」


 なんでこの三人は平然としての? いや、ユリアさんは元を知らないのか。


 キッチンとかも大きくなってるし! 意味分からん!


 「それじゃ、初キッチンで昼ご飯でも作りますか!」


 ヤター。

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