物理系魔法少女、急速展開に戦慄した
ミュータントゾンビは水の拳で沢山のパンチを繰り出す。
何かしらのバフ効果を与えるであろう矢をゾンビに放つのはミュータントスケルトン。
『あれ? 終わった?』
『せめてルミナスさんが逃げれるくらいの時間稼ぎしろよ』
『脳筋無能』
『無知はお前らだろ』
『アカツキがこの程度でへばる訳ない』
『この程度、蚊に刺された内にも入らん。そうだろ!』
攻撃が終わって満足したのか、ゾンビ達はルミナスさんの方に歩く。
弾丸は炎の矢やスケルトンの矢で相殺される。
「おい待て、どこ行くんだよ」
地面の中から手を出して、スケルトンの足を掴む。
「まだ勝負は終わってねぇぞ」
「アカツキさん!」
『なんでそこから?』
『こわっ』
『ホラーやん』
強く引っ張って片足を地面に埋め、地中を強く蹴って俺は脱出する。
空高く跳んだ俺は回転して、かかとをスケルトンに叩き落とす。
「ゾンビにスケルトン、まずは俺を倒してけや!」
「案外余裕そうだね!」
「ふっ、連打されると思って地中を泳いで逃げたんだよ。俺って賢い」
「はは。それを可能にできる君が凄いんだよ」
言うて最初の一撃は確かに効いた。効いたけど、動けない程じゃない。
拳を打ち付け、ゾンビを睨む。
ゾンビが火の玉を、スケルトンがクロスボウを向ける。
まずは回復とかして来る厄介なスケルトンをどうにかしたい。
その為に重要なのはルミナスさんの攻撃だ。アンデッドに有効だからだ。
スケルトンなら本気殴りで倒せる。しかし、その為の『溜め』が致命的な隙となる。
だからルミナスさんに倒してもらう必要がある。
「次はキャッチボールしようぜ! ボールはてめぇの魔法だ!」
火の玉を両手でキャッチして、矢に向かって投げる。
燃え尽きる矢を見送りがら、スケルトンの頭上にすぐさま移動した。魔法は使われずに手が伸びて来る。
「ルミナスさん! なんとか隙を作るから、スケルトンを倒してくれ!」
「りょーかい!」
ゾンビの攻撃を躱しながら、二人を相手する。
時々攻撃を受けたが、防御してなんとか耐える。
『ミュータントと二体相手にここまで動けるのか』
『成長したな』
『パンチかキックか魔法返ししかしてない』
『三つ目は誰もできんって』
『再現はやろうと思えばできる。実戦向きではない』
『再現しかできない』
何回かの攻撃を耐えた後、ゾンビの攻撃に合わせて地面を踏み抉る。
バランスを崩しそうになるスケルトンは跳躍して一時的に逃げる癖がある。
同じタイミングで跳躍する。
相手の方が高く跳ぶのは知っている。だから、俺の方が速く跳んだ。
「そら、沈め!」
回し蹴りで相手を叩き落とす。
スケルトンが俺を見上げた瞬間、スキルを使用した弾丸が奴の頭を貫いた。
残りはゾンビだ。
落下の勢いを乗せたかかと落とし!
「防ぐかっ」
弾かれて、魔法を纏った拳の反撃が飛んで来る。
軽く吹き飛ぶが、もう慣れたのですぐに着地する。
「ほら、今度はこっちの番だ」
地面を蹴飛ばして接近して、腹にパンチを決める。
返しの拳を受けて地面に埋まるが、再起して攻撃を返す。
攻撃しては反撃されを繰り返す。当然、アンデッドの相手にはあまり通じてないだろう。
「今回はただの、ゴリ押しじゃ、ないぜ!」
なぜならルミナスさんが居るから。
アンデッドに有効な弾丸を持つルミナスさんの攻撃はゾンビに明確なダメージを与える。
俺はルミナスさんにゾンビを近づけないようにすれば良い。
「まだまだぁ!」
魔法が放たれたなら、蹴り返す。
徐々に銃痕が目立ち始めた。
「へへ。最期の全力か?」
巨大な炎の球体が夜空に太陽のように顕現した。
てかさ、ゾンビとか特に火に弱そうなのに⋯⋯魔法使うんだな。
「だけど、形ある魔法は意味ねぇよ」
『お、その構えは?』
『来るか?』
『来ちゃいますか?』
「必殺マジカルシリーズ、
巨大な炎の球体を殴る感覚が拳に広がり、弾けて爆ぜる。
最期の最後の灯火を使い果たしたゾンビはルミナスさんの弾丸に貫かれて、眠りについた。
ドロップアイテムを回収してルミナスさんに近づいた。
「おつかれ」
ハイタッチを求められたので、合わせる。
「ああ、おつかれ」
パチン、と爽快な音が鳴り響く。
それから移動しようと足を進めようとするが、背後からまた音が鳴る。
「流石にこれは⋯⋯」
「無理ゲーが過ぎる」
大量のミュータントスケルトンとミュータントゾンビが夜の荒野に現れる。
この数は流石に無理だ。逃げるしかない。
そう二人で考えて、走り出そうとした瞬間、銀色の光がドローンカメラを貫いた。
「うっ」
「ルミナスさん!」
ルミナスさんが仰向けでゆっくりと地面に倒れた。
何が起こった?
「なに、あれ」
空から降り注ぐ光がアンデッド共を貫いて行く。一発で一体を倒している。
とてつもない火力だ。
「あー弱い、弱過ぎるぞ!」
そう声を荒らげて、月に照らされてふわりと降りて来るのは⋯⋯魔法少女だった。
だが俺は知らない。魔法少女のコスプレイヤーかもしれない。
「あ? イレギュラーはこれで終わりじゃないのか?」
「誰だ?」
「誰? この俺が誰かと? 良いだろう!」
俺と同じ高さになる。
「俺は銀光の魔法少女、シルバー! 世界最速の魔法少女だ」
は?
世界最速を自称してるの?
「弱いなぁ。レベルが低いからしかたないか? でもさぁ」
刹那、俺の周囲に光の線が集まる。
「今の一秒で俺はお前を三十回は殺せている。弱い弱過ぎる」
「えっと、なんの用かな?」
「いや、ただの挨拶だ。お前のような雑魚はもうのんびり遊んどけ。今日からは俺達のような強い魔法少女が本格的に動く」
言うて俺は魔法少女として活動した記憶は無いけど。
アオイさん達を攻撃する使徒とは戦ったけど。
「じゃあな。しっかり帰れよ」
「なんだったんだ?」
でもまぁ助かったか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます