物理系魔法少女、銃口を突きつけられた

 紗奈ちゃん達を見送った後、俺はのんびり今後についてぼんやりと考えながら茶を飲んでいたら、頭に冷たい感覚が広がった。


 それが何かは分からない⋯⋯だけどなんとなくだけど分かる。ただ身に覚えがない。


 多分だけど、銃だろう。


 突きつけられた事が無いので正しいかは分からない。


 「えっと、どちら様?」


 「冷静だな」


 「不法侵入は慣れてましてね」


 不法侵入に慣れていると言うパワーワード。


 だけど、その人達は皆美人なのだ。


 姿は見えないけどきっと彼女も美人だろう。そう思っていた方が気が楽だ。


 「エレキトルコアをどこにやった?」


 「エレキトルコア?」


 「とぼけるな!」


 とぼけてません!


 だから強く押し付けるのやめてもらっていいですか?


 怖いんで。


 つーか、本当になんだよそれ。


 「前に貴様がエレキテルタワーから回収した魔力燃料球体だ」


 「⋯⋯あー」


 「知っているな?」


 「知っていません」


 「嘘を言うな!」


 さて、どうしたもんかな。


 俺に武術の心得があったら、ここを脱出できたかもしれんが、生憎とそんなのは存在しない。


 魔法少女になったら切り抜けれるか? あれなら見た目も自由に変えられるから変身後の姿は分からん。


 変身前がバレてるので意味は無いけど。


 大体、ステッキを出した時点で発砲されたら終わりだ。


 「変に考え事をするな。撃つぞ」


 「撃ったらその⋯⋯なんでしたっけ?」


 「エレキトルコアだ」


 「そうそれ。それの情報が聞けなくなりますよ。情報を掴めているのは、俺が回収したと言うだけでどこにあるのかは分かってない、だから俺に聞こうとしている」


 あるいは他の情報源には手を出せない、出しにくいのかもしれない。


 あまり流暢な日本語じゃないので外国人なのは分かる。


 「だから君は俺を殺せない、そうだろ?」


 昔、ドラマとかアニメとかでこんな展開あった気がする。


 「そうだと思うか? お前を殺した後にアンデッドとして蘇らせて情報を聞き出せば良い。またはお前の頭の中を見てやれば良い。不可能だと思うか?」


 「それは合理的ですね。それだったら、最初からそうしていますよね? それができるなら、今俺を殺さないのは他の理由がある。⋯⋯何かと敵対してしまうとか?」


 「詮索は止めろ。どこにあるかを言え」


 俺に残された手札は⋯⋯魔法か。


 俺の魔法はイメージしたらある程度の事ならなんでもできるし、実体化もできる。


 もしもそのイメージを強くできたら、音なども再現できるじゃんないか?


 まるで、この空間そのものが幻のように。


 「早く言え、これ以上は待てんぞ」


 「俺はギルドに預けた。その後の行方は知らん」


 「嘘を言うな。一時的にお前が東京に『一瞬』で移動した情報は掴めんでるんだ」


 逆に言えば、それしか分かってないと。


 何をしていたのかは本当に分かっていないっぽいな。あるいは東京に居た事すらカモフラージュと思われているか。


 「ふっ、この俺を撃ったらどうなるか、分かっているのか?」


 「急に強気になっても、意味は無いぞ?」


 「嘘は意味無いと」


 だけど今の一瞬でさっきまでは無かった物を生み出せた。


 後は⋯⋯それらを使うのみ。


 発砲音と共にガラスの割れる音がこの部屋に響き渡る。


 成功だ。


 「なんだ!」


 「俺に銃口を向けるんだ。向けられる覚悟もあるよな?」


 「いつの間に!」


 適当にイメージした銃を俺の後ろに居る奴に向かっているように創り出した。


 結局は幻だ。


 銃弾が実体化するかは分からない。こんなケースは想定してなかったし。


 だけど警戒はしているっぽいな。


 「俺は空間魔法が使えるんだよ。護身用に亜空間に収納していた武器だ。空間をねじ曲げたら、君の銃も通じない。どうする?」


 適当な嘘をペラペラ並べたけど、通じるかな?


 正直、こんなあからさまに嘘を並べたから通じないとは思うけど⋯⋯。どう?


 「⋯⋯夜道には気をつけるんだな」


 「⋯⋯消えた、か。あ、もしかして相手の足元や俺の下にゲート出したら逃げれたんじゃね?」


 頭から抜けるんだよなぁ。


 ◆


 星夜の家に侵入したアメリカの特殊部隊の一人が拠点に帰還する。


 「すまない。情報は得られなかった⋯⋯寒くないか? 電気も付けないで」


 カチッと電気を付けると、そこで仲間達が氷の中に閉じ込めらている光景が目に入る。


 知らない女が二人、その場には居る。


 (気配を全く感じなかった?! 全員レベル8だぞ! こんな二人に⋯⋯それに自分も)


 「ハロー?」


 ポニーテールの女性が軽めの姿勢で話しかけて来る。


 スキルによって何語でも会話は成り立つと言うのに、適当な英語を並べる。


 「お前らは日本政府の手の者か?」


 「いやいや。あんな雑魚と一緒にしないでよ」


 「雑魚? 我々と対等に渡り合える強者だぞ!」


 「え、だから雑魚じゃん?」


 氷に閉じ込められている仲間を見れば、それもあながち間違いでは無いのかもしれない。


 銀髪の女性は酷く怒っている。殺気の重圧が動きを鈍らせる。


 「この人、情報とか言ってたよね? もしかしてさ

 星夜さんのとこ行ってたのかなぁ」


 「ちょ、紗奈落ち着いて? 大丈夫だって、何も無いよ。ね、だから落ち着こ?」


 「くっ、舐めるな日本人が!」


 銃を抜くが、一瞬でへし折れる。まるで空間がねじ曲がって折ったように。


 「それじゃ、話を気かけせてもらおうか」


 下半身が凍らされて、動く事はできないでいる。


 「お前達は、何者だ? この強さ、⋯⋯まさかレベル10!」


 「いや、私達レベル9だよ。10はこの世に居ないんじゃないかな?」


 「早く帰りたいから、要件だけさっさと済ませてくれない? 星夜さんに今後も危害を加えそうなら、⋯⋯私は愛の力を爆発させるよ」


 「まじで止めろよ?」

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