物理系魔法少女、依頼品と思われる物を発見する

 「右撃つ」


 「了解!」


 二本の剣を持った、動物要素のないロボット。


 ルミナスさんが右側の肩を正確に撃ち抜いて壊した。


 反対側の剣が重いのか、バランスを崩した瞬間に俺は接近して、回し蹴りを決めた。


 「ふぅ。倒した倒した」


 「同じ個体でも硬度が大きく違ったりするね」


 「これもイレギュラーの一つなんかね?」

 

 だとしても、倒したら普通に倒れる⋯⋯なんて良い事なんだろうか。


 生物感がなく、むしろ硬質感があって殴りがいのある魔物。


 同じ見た目でも、一発で倒れる奴から十発で倒れる奴もいる。


 「さっきの良い動きだったよ」


 「それはこっちの台詞だよ。⋯⋯なんかサポートに回しちゃってごめんね?」


 「いやいや。さっきのも六層なはずだから、僕の相棒じゃ倒せないよ」


 そう言って微笑む。目線はチャージライフルに向いている。


 あの正確に小さい部分である関節を撃ち抜く⋯⋯こんな技術があるなら普通に倒せると思うんだけどな。


 それともこれって普通なのかな?


 「他の魔物が来るかもしれないから、急いでこの場を離れよう」


 「おけ」


 経験者の意見に従って俺は動いているのだが、最低限の戦いだけでポイントの場所に移動している。


 一つ目はハズレ、今はその近くの新たなポイントに向かって移動をしている。


 「ここは世界観が違う感じがするな⋯⋯ほんと」


 「自分の事言ってるの?」


 「⋯⋯そうかもしれん」


 ルミナスさんもこのダンジョンもメカメカしいのに、俺だけ魔法少女だ。


 ある程度移動して、個室に入る。


 「こう言う小さな部屋に宝箱とかありそう⋯⋯」


 「ん? このダンジョンにそんなのは出現しないよ」


 「え、そうなの?」


 「うん。まぁ限定アイテムはあるけど、宝箱ってのは無いね」


 「そっかー」


 ちょっと残念。


 休憩なので、弁当を食べる。ルミナスさんは軽食だ。


 「自分で作ったの? すっごいね」


 「あ、いや。違う。えっと⋯⋯」


 「お、もしかして彼氏か!」


 「彼氏かぁ。絶対に要らんな」


 俺は彼女⋯⋯も要らないか。


 紗奈ちゃんがいるので恋人は募集しておりません。


 弁当をどう説明するか⋯⋯紗奈ちゃん。


 「ん〜お姉さん?」


 「良いお姉さんやね」


 「そうだね」


 休憩も終わり、次のポイントに向けて移動を再開した。


 ポイントの場所を遠目で確認すると⋯⋯ビリビリした球体を発見した。


 「あれか?」


 「えっと違うかな? あんな魔法の塊みたいなのじゃない」


 「でも⋯⋯」


 ポイントの場所だし、ビリビリしているのだ。


 あれが依頼品だと思う。


 「多分あれだと思うから、ちょっと回収してくるよ」


 俺が隠れている場所から出ようとすると、腕を引っ張られる。


 力が弱くて、腕を引っ張られるだけで終わったけど。


 「あれ見て」


 「ん?」


 熊か?


 両手に光る剣、背中から蜘蛛の足のように合計八本の剣が伸びている。


 全部で10本の剣を持っている熊がその球体を守っている。


 「十層出身の魔物、推奨レベル4だけどその中では上の強さ。機械熊メカトリックベアー電子剣武装エレキトルソードカスタムだよ」


 「⋯⋯」


 な、名前が長すぎるしカタカナで分かりにくい。


 「大丈夫?」


 「大丈夫! えっと、メカベアって強いの?」


 「メカ⋯⋯ベア⋯⋯そりゃあ強いですよ。ギリギリレベル4推奨ってレベルやからね」


 そっか。危険だよなそれだと。


 命大事にが紗奈ちゃんとの約束である。


 でも⋯⋯本当にそれで良いんだろうか?


 「確かに、俺じゃ火力不足かもしれない。だけど、試す価値はあると思うんだ」


 「⋯⋯へ?」


 「それじゃ、行って来る」


 「いやいや、待ってて」


 まだ掴むか。


 目的のアイテムが目の前にあるなら回収したい。


 俺の目的はそれだ。


 別に倒す必要は無い。手に入れる物だけ手に入れるだけで良い。


 「危険だって」


 「大丈夫。無理だと判断したら逃げるから」


 「追いつかれるかもよ?」


 「それは大丈夫じゃない?」


 依頼品から光がゆらゆらと出て、熊に吸収されている。


 予想だが、アレからエネルギーを吸収しているのだろう。


 そう考えると、追って来る可能性は低いと言える。


 「そんな仮説だけで動くのは危険だ。引き返そう」


 「⋯⋯すみません。わがままで。それでもやります」


 リュックを置いて、俺は動く。


 相手も俺に気づいたのか、咆哮をあげる。


 だけど攻めて来る様子は無い。


 「あ」


 他の魔物が依頼品に向かって進むと、熊が動いてその魔物を倒した。


 依頼品を守った⋯⋯ってよりも餌を奪われないようにしただけか?


 「そうか。イレギュラーの原因はアレか」


 「ん?」


 ルミナスさんが言葉を出す。


 「あれが魔物を呼び寄せてるんだ。深い理由は分からないけど、アレがエネルギーの塊で餌だとするなら、それを奪うために下層から魔物が来る」


 「ほうほう」


 「軽いな。下層の魔物が上層に来て、あそこに留まったら、このダンジョンの難易度は一気に跳ね上がる。⋯⋯それは嫌だ。⋯⋯あれが依頼品なら回収するんでしょ? イレギュラーが収まるかもしれない」


 弾倉を確認するルミナスさん。


 「一緒に戦う。相手の行動パターンもある程度知っている」


 「ルミナスさんって、自分の探索可能範囲外の魔物の情報に詳しいですよね」


 「え、あ、いや。色々とあってね。あはは」


 深く詮索されたくないんだろうな。


 ならしない。その必要は無い。


 「それじゃ、行く」


 「おーけー」


 俺がまず走る。


 「アイツの攻撃は基本薙だ! 刃の向きを見れば君なら回避できる。斬撃を放つ攻撃があるから気をつけて」


 「了解」


 バットにステッキを変えて、攻撃をする。


 剣で防ごうとするのを、強く攻撃して飛ばす。


 二本、剣をへし折った。


 「やっぱアカツキさんの力えぐぅ。アレでレベル2って本当ですか視聴さん⋯⋯」


 ボソボソと言った言葉に俺は反応できない。


 重要な事だったらどうしようね。


 「やっぱり数が多い分回避が難しいな」


 回避できない部分はバットで弾く。


 ⋯⋯あれ?


 へし折ったはずなのに、復活している?


 「アレの吸収したエネルギーで武器を修復してるんだ! ここの魔物はそれを普通にやる!」


 「え! なにそれずるっ!」


 破壊不可能なステッキもズルいとか、知らね!


 「どう倒すの!」


 「本体をぶっ壊すか、エネルギー吸収を断つ。それから倒す」


 「おっけ」


 リッチのようにならん為に、引き剥がすか。

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