物理系魔法少女、碧水の魔法少女と探索中

 「さっきから上の空⋯⋯どうした?」


 「いえ。魔法を使えそうな気がして⋯⋯気のせいでした」


 ステッキの見た目が変更でき、それが魔法ならと⋯⋯期待したが無理っぽい。


 そもそも魔法スキルを会得してないと魔法が使えないって、ウィキにもあった超一般常識なんだよ!


 そうだよなぁ。俺も調べて知ってたし⋯⋯それでも期待してしまった。


 ⋯⋯そう考えると、なんで現実の俺は普通に魔法使えちゃうの?


 貞操を守ると魔法使いになるって、マジなのかもしれない。


 ダンジョンで使えなきゃ意味ないのにさ。


 「次、やって⋯⋯ゴブリンの群れ」


 「ふっ。余裕ですね」


 「油断、禁物。ランク上がってるから、連携する、上位種、居る」


 「それでも所詮ゴブリンですよ」


 そうやって油断して敗北し、陵辱されたり生きた盾にされる作品を知っているけど。


 それらのゴブリンは漏れなく殺されている。


 ⋯⋯さて、余裕だとは思いながらも油断はしないつもりでいる。


 命大事に、それは紗奈ちゃんとの永遠の約束だ。


 「ピンチになったら助ける」


 「厳しいかなぁって思ったら助けてください」


 足に力を込めて、目の前のゴブリンに向かって走る。


 「ごぎゃ!」


 その一瞬で全員が俺の存在を認識するが、最初の一体を殴って倒す。


 「攻撃が大振り過ぎる。囲まれたらピンチ」


 と、説明してくれたは良いけど、既に囲まれた。


 同時に攻めて来るのは四体⋯⋯弓兵が二体俺を狙っている。魔法の準備をしている奴も居る⋯⋯俺の知っている魔法使うゴブリンよりも衣装が豪華だ。


 「そらっと」


 大きなうちわにステッキを変えて、強い風を起こす。


 それだけで矢は俺には届かないし、ゴブリンも止まる。


 「ただの長い棒!」


 バットよりもこっちの方が射程が長いので、素早く倒せる。多分ね。


 ゴブリン四体の頭を粉砕して、魔法を使いそうな奴に接近する。


 「弓兵は邪魔」


 フリスビーでも適当に投げて牽制しておくか。


 魔法が飛んで来る。


 「げっ、冷気を飛ばす系の魔法は止めて!」


 形無き魔法は俺の天敵なんだよ! しかもステッキ投げちゃったし。


 ⋯⋯あれ?


 でも凍る気配は無いな? ちょっと寒い程度。


 耐性スキルなんて持ってなかったはずだけど⋯⋯紗奈ちゃんのおかげかな?


 ならば、そのまま突っ込む。


 「殴る、蹴る以外にも、素手で刺す。やってみて」


 「刺す⋯⋯」


 手刀を作って、ゴブリンの腹に向かって突き出す。


 うげぇ。刺さったけど感触が気持ち悪いからしたくないな。


 「ぐぎぎ」


 「ありゃ、死んでないや」


 手を抜き取り、蹴り上げる。


 落ちたタイミングに合わせて後ろ回し蹴りで倒しておく。


 残りは弓兵か。


 「ま、楽勝よな」


 ゴブリンの群れを倒して、魔石を回収しておく。


 杖だけがレアドロップ的な扱いで出て来たので、へし折っておく。


 「売れるのでは?」


 「一般的に人間よりも知能が低いと言われているゴブリンに魔法を使われるって、ムカつきません?」


 「めっさ分からん」


 だけど刺す⋯⋯これは中々に使えるかもしれない。


 内蔵の感触とかあるので、正直使いたくないが手札は多い方が良い。


 このステッキも尖らせたらかなり刺さるし⋯⋯殴った方が早いと思って使ってないが。


 投擲とか、突き刺しとかも練習必要かな?


 「ステータスカードを投げて突き刺す⋯⋯良いと思いません?」


 「どっか飛んで無くしたらシャレにならんぞ」


 「冗談ですよ」


 「冗談を言い合う程に仲は深くないぞ」


 「すんません」


 移動をしていると太鼓の音が聞こえた。隠れ見ると、沢山のゴブリンが居た。


 「ここは無視」


 「なぜに?」


 「⋯⋯数が多い。それとあの椅子に座っているでかいゴブリン、あれ、ホブ。術士も二体。避けるの安定」


 「⋯⋯そうですか。それだとあの捕まっている人達死にません?」


 「ッ!」


 檻に入れられた人達が居る。俺達に気づいたのか、助けを求める様にこちらを見ている。


 全員女性である。


 ⋯⋯あ? なんか違和感を感じるぞ。


 こう。心臓をゾワゾワって来る。


 「助ける」


 「無視の方針では?」


 「救える命は救う。それが魔法少女」


 ミズノさんが出るので俺も出る。


 ゴブリン全員がこちらを見て⋯⋯笑った。バカを釣り上げた様な笑みだ。


 ラブレターを偽装してバカを釣った、ヤンキー共を思い出した。被害者が強くてボコボコにされていたのも、一緒に思い出した。


 「あ、消えた」


 「⋯⋯幻術だった」


 「罠⋯⋯あれをずっと維持していたのかな?」


 そう考えたら、レベルは高そうだな。


 違和感の正体は幻術だったからか。うん。納得。


 普通に音は聞こえなかった⋯⋯気づかれないために声を抑えるのは分かるけど、全くの無音は違和感ある。


 それに、ずっと目が合っていた気がする。幻術なので、自分から見やすくなっていたのだろう。それがおかしいと感じる点を生み出した。


 「ヤバくないですか?」


 「背後にも居る、逃げれない。戦う。ホブ倒したら、逃げれる」


 「りょーかい」


 ホブゴブリンが大剣を手に取る。


 「オオオオオオオオ!」


 「とっても配信したい気分だよ」


 「真剣に、戦え」


 俺達は同時に駆け出した。


 「水の魔、形容、クナイ、ウォータースピア」


 ミズノさんの魔法か。クナイとか言っておきながらスピア?


 ただ、見た目はクナイである。それが飛んでゴブリンの脳天を貫く。


 さらに水色の筋を残しながら斬り捨てる。


 俺も負けてられないな。


 「ミズノさんみたいにカッコよくは戦えないけど」


 俺にできる事は殴るか蹴る⋯⋯結果は同じだけど。


 武器を砕き、本体を砕き、倒す。


 ステッキを利用したスイングで投擲武器は弾き返す。


 カキン、頭上で弾く音が聞こえる。振り返るとミズノさんの剣だった。


 「どったの?」


 「投石、頭狙って来る。油断、するな」


 俺の足元には手のひらサイズの石が転がっている。


 「助かりました」


 「それがミズノの役目だから」

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