物理系魔法少女、自己流トラップ解除術を披露する

 「うっ。厄介ね。左右から矢が出て来るトラップよ」


 「炎を纏いながら進めば問題ないんじゃない?」


 左右の壁に穴が沢山空いている。


 どんな感じの魔法は分からないけど、サウナ状態なら我慢できるかもしれない。 


 「炎に耐性のある矢が飛んで来るのよ。トラップ解除のスキルや技能は無いし、解除されているかも分からないし、違う道行きましょうか」


 「⋯⋯解除か」


 無力化すれば進めるって事だよな?


 分かれ道まで戻るのは面倒だし、このまま進みたい気はある。


 故に、俺のステッキはハンマーに変化する。


 「重さも変わるのか」


 「ちょっとアカツキさん。アナタ一体何をするつもりなの?」


 「もちろん、罠解除トラップ破壊です」


 本気でハンマーを壁にぶつけて、破壊する。飛び散る罠の破片。


 塵となって消える。


 「ん。進める」


 「⋯⋯頭がおかしくなりそうよ」


 『表情リアクションあると良いね!』

 『動画じゃなくて生で見るとやっぱり何か違うんだろうな!』

 『これはコラボ=リアクションを楽しむ、だな』


 『レンジャー必要ないのか』

 『トラップを見抜く技術が必要なので、レンジャーは要るのでは?』

 『経験者が近くに居るのは良いね』


 『解除? 回避? 知らねぇなぁ。破壊して突破だ』

 『進めるなら進もう』

 『目の前に道があるなら、引き返さない。障害は粉砕だ!』

 

 次に発見したのは普通のゴーレムだった。


 「さ、一応手助けはする予定よ。物理攻撃耐性あるから、魔法をオススメするわ!」


 どんだけアカツキちゃんに魔法を使わせたいんだよ。


 ドローンカメラの調子は良さそうだな。


 スマホのカメラで撮るよりも画質が良い。


 「何よりもステッキが使えるのが大きい⋯⋯でもまずは、素手だよな!」


 マフラーにして巻いておく。


 「物理攻撃耐性って事は、普通に殴りが通じるよね!」


 俺はゴーレムに向かって拳を突き刺した。


 ドゴンっと凹むゴーレムの身体。


 「確かにこりゃあ硬い⋯⋯けど、突破はできそうだな」


 ゴーレムが攻撃をして来るが、そこまで速く無いので避けるのは簡単だった。


 攻撃が当たらないなら、後は倒れるまで殴るまでだ。


 「オラオラオラァ!」


 『レベル差なんて関係ないね!』

 『ま、まぁまだ最初のゴーレムだ』

 『奴はゴーレムの中では最弱⋯⋯次がある』


 50回は普通に殴ったかもしれない。


 本当に丈夫だった。それで手に入るのは魔石一個か。


 「ま、まぁまだ序の口よね。次があるわ! 次はきっともっと硬いから、魔法をオススメするわ!」


 「⋯⋯」


 見え見えの狙いだな。


 さて、紅と蒼の魔法少女は迷宮内を進んで、ゴーレムを見つけては倒していく。


 アオイさんの魔法なら瞬殺だが、これは俺のレベル上げも視野に入れている。


 「同じ事ばかりしていると、経験値が入りにくいわよ」


 「つっても、さっきからノーマルのゴーレムしか居ないからな⋯⋯いっそ宝箱とかあったら動画ばえしそうなのに」


 「本当にね。この辺の宝箱ポイントの場所は既に取られた後だったし⋯⋯正午には復活するけどまだ先ね」


 そんな愚痴を零しながら進んでいると、鉄人形アイアンゴーレムを発見した。


 「お、ようやく新種だ」


 「⋯⋯あ、目が金色じゃなくて赤色よ。本来よりも少し性能が高いから気をつけてね」


 「大丈夫。元を知らないから!」


 「あ、唐突に心配になったわ」


 俺はダッシュで接近した。


 今までのゴーレムよりも身体がすらっとしている。


 なんか、スピードタイプってイメージがあるな。


 「ん? 足にタイヤが」


 キキーっと言うエンジン音のようなモノと共に回転するローラー。


 動き出すゴーレムは壁を滑り、俺の背後に移動した。


 「速いっ!」


 けども、身軽な分一撃は軽いよな!


 「そらっ!」


 相手の攻撃に合わせて蹴りを繰り出して弾く。成功だ。


 「なんか違和感があるわね」


 『ドローンカメラにしたんかな?』

 『立体的に見えるよねー(適当)』

 『気づくの遅いぞ! さっき来たのか?』


 『画質が良くなって正面からも見えるようになって、それでも見えない、服の中』

 『でも分かる大きさ。無限に広がるスカートの中』

 『膨らむ想像』


 『変態が繁殖した』

 『スピードタイプだと、マジカルシリーズは有効的じゃなさそう』

 『どうする?』


 素手じゃ突破しにくそうだし、ステッキを使うか。


 バットでも良いけど、それだと味気ない。


 せっかくだし、ハンマーでも使ってみるか。


 重心が引っ張られる感覚があるな。


 「ちょ、速い相手にそれはどうなのよ!」


 「アオイさん。まぁ見ててください」


 動き出すゴーレム。


 「そらっ、当たれ当たれ!」


 俺はハンマーを縦横無尽に振り回す。


 壁を破壊し、地面を砕く。


 当然、そんな事してたらゴーレムには当たる。


 吹き飛ぶゴーレムは壁にめり込む。


 それでも倒した感覚ってのは得られなかった。


 「これで、終わりだ!」


 俺の靴は革靴なんだよ。


 飛び蹴りでさらにめり込ませる。


 「ぬお?」


 ブォンっと音を鳴らして光る赤い目。奴の手が俺の足を掴み取る。


 「ちょ、アカツキさん!」


 「わぁ!」


 アオイさんの方に向かって投げられる。かなりの速度で飛ぶ。


 回転して壁に足を着けるか。


 「⋯⋯速いね」


 ゴーレムは壁をローラーで滑って、飛んでいる俺に追いついた。


 だけどさ、ローラーって不便じゃない?


 ちょっとした段差でも簡単に躓くんだからさ。


 「らっ!」


 バットのステッキで壁を砕き、相手を地面に転がす。


 天井に足を着け、力を込める。めり込む足。


 「そろそろ沈めや!」


 蹴り、加速し、バットを振り下ろす。


 激しい衝撃が辺りを揺らす。転がる魔石。


 「まぁ、こんなもんよな」


 「⋯⋯アイアンゴーレムまで力押ししたの?」


 「どんなもんだい」


 ピースを見せておく。ついでにカメラにも。


 『うちの戦士にも見習って欲しいわ』

 『剣を一切使ってないが?』

 『剣使ってみ? ポキンって行くで』


 『うちの剣士刀でアイアンゴーレム斬ってたで? アカツキの戦いみて呆れてたけど』

 『武道家に見せたら、弱いって鼻で笑ってた』

 『なんだそいつ校舎裏呼べ』


 『まぁ技を見る人から見たら滑稽なのかもね』

 『脳筋って考えれば大丈夫』

 『力こそパワー』


 そんなコメントをアオイさんが読み上げている。


 「と言うわけで殴る蹴る以外の技が必要だと思うのよ。ゲームで言う攻撃コマンド?」


 「最近吹き飛ばすを覚えた」


 「重いゴーレム相手には通じないわよ」


 それもそうか。


 重い相手に有効的な攻撃方法ね⋯⋯落下?


 移動を再開する。


 「同接1万人⋯⋯なんでよ」


 アオイさんが睨んでくる。


 「なんかライブする度にそのくらい集まるんだよね⋯⋯」


 「自慢かよ!」


 特に他のゴーレムも同じような感じだった。


 うん。耐性があるなら、いつもよりも多く殴れば倒せる。


 落下はダンジョンの構造的に無理。


 ただ、やっぱりレベルが2だからか、素手じゃ銀以上は倒せなかった。


 メタルゴーレムとはエンカウントせず、お開きとなった。


 コラボの成果が出ると良いけども。


 アオイさんの魔法は強いけど、コメントを見る限り、やっぱりゴリ押しが目立っていたっぽいし。




 『アオイの魔法おかしくね?』

 『なんか自由自在って感じだったよね?』

 『あーあれ錯覚じゃなかったんだ』


 『途中暇すぎて犬とか作ってたしな』

 『可愛いね!』

 『自然魔法式フリーマジックって言うスキル。知り合いが持ってる。魔法を自由自在に出さたり操れるけど、その分魔力使うから燃費は悪いらしい』


 『それをあんな贅沢に使うの?』

 『レベル4なのに?』

 『ちょっと気になってきた』


 『そんな人に心配されない程、一つ上のランク帯でゴリ押ししていた魔法少女か居るそうです』

 『ダンジョン壊し過ぎだろ。いやまじで』

 『どうせ直るしね』


 『時々あった地震の元凶コイツか』

 『コイツとか言うなハゲ』

 『イキイキしてたよね』


 『やっぱり素直に倒せる方が楽しいのか⋯⋯』

 『探索に楽しさを求めるって、真の探索者だな』

 『金人形ゴールドゴーレムをゴリ押したんだぜ? それがレベル2ってなんの冗談だよ』


 『そこら辺のドリルよりも破壊力があるよね』

 『街とか破壊してそう』

 『その辺の調節はできるだろ⋯⋯多分』

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