物理系魔法少女、ついにアレを買う

 12万円⋯⋯最低限の性能があり、レベル3推奨ダンジョンなら問題ない、カメラドローン。


 「ついに、買うか」


 ステッキを使うと、どうしても撮影が一点の視点に固定されてしまう。


 ライブを見返してみたんだが、リッチとの戦いが全然映って無いのだ。


 コメントは盛り上がっていたが、やはり同じ映像感が否めない。


 耐えた人がいるっぽいコメントもあるが、それが真実かは不明だ。


 何はともあれ、この調子なら普通に広告は付けられるだろうから、より良質な動画を届けないといけない。


 多くの人に見てもらい、金を得るにはドローンが必要だ。


 球体型で小型、追尾式でAIが付属しているドローン、このくらいの性能なら十分だろう。


 「高い出費だけど、その元をいずれは取り戻す」


 購入して、スマホと連動させておく。


 翌日、紗奈ちゃんに頼んで登録してもらい、ダンジョンに持って行ける許可を貰った。


 「ドローン買うなら、武器とかを買って欲しいんだけどなぁ。ポーションとか、アイテムを揃えて欲しい。狩りが楽になるよ」


 「まぁ、おいおいね? やっぱり出費が大きくなるのは避けたいからさ。それと今日は⋯⋯」


 「はいはい。たまたま偶然出会った人とパーティ組んで、一個上のダンジョン、傀儡の迷宮だよね? 分かってるよ」


 仕事モードに入らない紗奈ちゃんを見ると、少しだけ拗ねているような気がした。投げやり感を感じる。


 「⋯⋯気をつけてね、本当に。レベルが1違うだけでも大きな差になるからさ」


 「ああ。ちゃんと定時帰りはするから、待ってて」


 「うん」


 もう周りの目とか面倒で気にしないでいる。


 ゲートを通り、俺はダンジョンに入る。


 「明るさはある程度あるな」


 鉱山と違い、ここは明かりが確保されていた。


 自衛隊の人達もゲート付近に居て、俺を見て笑うのを我慢していた。


 ⋯⋯ヒラヒラな魔法少女衣装でダンジョン来るって、そりゃあ笑うよな。


 少し離れる。


 「えっと、こうやって設定して、電源ボタンを押せば⋯⋯お、飛んだ飛んだ」


 飛行石って言うダンジョン産の石が埋め込められているらしく、魔力で飛んでいるらしい。


 もちろん、撮影とかに電気が必要なんだけどさ。


 「後はアオイさんを待てば良いか」


 アオイさんがやって来た。


 衣装を隠すためか、ローブを羽織っていた。


 俺は手に持ってないと意味ないから、その方法は使えないな。


 継続されるし、入る前に衣装を外で変更させておけば良いかな?


 面倒そうだ。


 「またせたわ」


 「いやまぁ、まだ約束の時間前ですし大丈夫ですよ。それじゃ、コラボライブ始めますか」


 「頼むわ」


 俺がするのは純粋にチャンネル登録者数が多いからだ。


 告知はしたけど、変に思われない事を祈る。


 『魔法少女グループ』と言う謎の単語は既にできあがっている。


 「えっと、今回は⋯⋯」


 「どうもみなさーん。おはようこざいまーす。気高く熱い、蒼炎の魔法少女、アオイでーす! 知ってるかな?」


 「⋯⋯」


 だ、誰だ貴様!


 そんな高いトーンでテンションアゲアゲのギャルっぽい女、俺は知らねぇーぞ!


 え、そんなにキャラ作ってるの! 嘘でしょ!?


 こっちは素なのに⋯⋯ズルいってよりも恐怖だよ。


 ここまで豹変するとは⋯⋯。


 「恐ろしいな魔法少女⋯⋯ごほん。今日は推奨レベル3のダンジョンで、レベル4の魔法少女、アオイさんと一緒に攻略するよ。俺はレベル2だから、それとコラボなのでそこんとこもよろしくって事で。行きますか」


 「そうだねぇ」


 ああ、違和感が凄い!


 『魔法少女の二人!』

 『アオイちゃんのファンなので嬉しい!』

 『アオイちゃんとか馴れ馴れしいと思います。しっかりとした距離感を保ってください』


 スマホで少しだけ確認したけど、ミズノさん居ない?


 「えっと、一応ここについて聞いても良いですか?」


 「もちのろんよ」


 傀儡の迷宮でエンカウントする魔物は主に岩人形ゴーレム


 物理攻撃耐性が高く、魔法攻撃に弱い特性を秘めている。


 身体に利用されている鉱石によって、その強さが分かる。


 ここで出て来るのは、普通の岩、鉄、銀、金、白金である。


 時たまにレア魔物として金属メタルが居るらしい。


 金属人形メタルゴーレムを倒すとレアメタルが大量に落ちるとか⋯⋯そして硬くて物理攻撃無効と言われているらしい。


 「後は迷宮特有のトラップ、宝箱、ボーナスエリアがあるね。トラップには気をつけてね。宝箱は中身が復活していたら取れるけど、あまり期待はできないね。ボーナスエリアはランダムだから」


 「ふむふむ」


 迷宮特有とか、あるんだね。


 そんな基礎知識みたいな事を言われても、初めて知ったわ。


 紗奈ちゃんもこれは知っている前提で俺と話していたのかな?


 ダンジョンにも複数の種類があるのね。


 「と、早速出たわね」


 「見た目は鉄かな?」


 「いや、あれは銀人形シルバーゴーレムね。だいたい鋼色は遠目だと分かりにくいモノよ。それじゃ、まずは自分が行くね!」


 その、キャピキャピはやめて欲しいな。


 『殴るのか!』

 『どう戦う?』

 『マジカル!』


 「蒼炎!」


 熱が籠る心配があったが、壁にその辺は吸収されているらしい。


 ゴーレムは炎の中で溶けていく。


 「これで魔石と運が良ければ銀が落ちるわね。さらに運が良ければ、ゴーレムコアが手に入るわ。それは一つ20万よ」


 めっちゃ欲しい!


 『普通に魔法使うのかよ』

 『新鮮に見える』

 『注意、これが普通です』


 『金の額聞いてからアカツキちゃんの目が輝いている』

 『中身本当に少女かね?』

 『約一日活動しているのに姿が変わらなかったから、間違いなくJKです⋯⋯多分』

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