物理系魔法少女、魔法少女の会合に参加する

 翌朝、昨日は紗奈ちゃんのお怒りに触れまして、熱い一晩を過ごしました。


 まだ、少しだけ舌がヒリヒリします。


 「朝ごはんも激辛サンドイッチすっか。いやまぁ、美味しいから良いんだけどさ。辛い」


 魔法で辛さを分解⋯⋯はできないよね。


 とりあえず、今日は目覚めが早かったので、魔法の検証を進めながらサンドイッチを食べる。


 俺の使える魔法はイメージしたら、色々とできたりする便利なモノとなっている。


 動物などをイメージすると、その幻影的な何かが出て来る。


 これを利用すると⋯⋯おぉできた。


 「紗奈ちゃんの幻術⋯⋯やっぱ人も行けるのか」


 あのロリっ子職員やアオイさん、他に頭に残っているのはスケルトンくらいか?


 心無しか魔法の制御も上手くなっている? レベルアップの影響かな。


 「スキルがないのに魔法が使える理由が分からないけど、魔法少女でも使えるようにして欲しいぜ!」


 紗奈ちゃんとギルドに向かう。


 更新頻度を決めていた訳では無いので、失踪説が早くも出ている。


 しかし、当分はしないつもりだ。ネタ切れ⋯⋯ってよりも今はレベル2のダンジョンに慣れたい。


 「紗奈ちゃん」


 「お断りします」


 「まだ何も言ってない」


 「どうせ特定の日に誰かに会いに行くんですよね?」


 なんで分かったの?


 「違うよ。実は紗奈ちゃんとの関係⋯⋯」


 「了承します! ええ、全力で了承します!」


 「⋯⋯を壊したくないんだけど、今週の日曜日に少し出かけるね」


 「⋯⋯」


 やめて。その目で見られるのは怖い。


 紗奈ちゃんには笑顔でニコニコしている方が似合ってるよ!


 そんな戦闘者の目をしないで。


 「それで、日曜日って仕事?」


 「⋯⋯ええ」


 「そっか。来週の休みって何時?」


 「火曜日」


 「良かったらで良いんだけど、どこか行こうか?」


 俺もだいぶ財布が潤って来たのだ。多少豪遊しても問題ない。


 「⋯⋯一緒に、居たい」


 「そっか」


 じゃあ決まりだ。


 火曜日は紗奈ちゃんと一日中居る。


 時は進んで日曜日、紗奈ちゃんは仕事なので俺は午前中に移動をする。


 移動した先で人目につかない場所に隠れ、ステッキを出して変身する。


 「へっ。現実世界で変身して人と会う事になるなんて、夢にも思わなかったぜ」


 アカツキに私服をイメージする。


 女の子の私服なんて知らないので、ダブダブ黒パーカーにしておいた。


 この萌タイプ、俺好き。


 「良し、⋯⋯唐紅の髪に真っ黒な格好ってすごく厨二感あるな」


 ダンジョンやらスキルやらある世界だと、あながち自己流設定とは言えないけどさ。


 それじゃ入るか。


 会合場オシャレカフェに。


 時間は正確⋯⋯さて、どこにいるんだ?


 あの蒼い髪なら目立つと思うんだけど⋯⋯居ねぇし!


 「お客様。おひとり様ですか?」


 「あ、いや、その⋯⋯」


 おい社会人どうした?


 この程度、普通にこなせよ。


 相手は大人の女性だ。


 紗奈ちゃんよりも会話の難易度は下だぞ(失礼)。


 「アカツキさん。こっちです」


 「⋯⋯っ! えっと、あの人達の、付き添いです」


 「そうですか」


 気配を最小限に抑えながら、金髪女性の傍に行く。


 うん。外国人だ。


 声はアオイさんだった。


 「アカツキさんって、変身後もあまり見た目変わらないのね」


 ⋯⋯そっか、変わるんだ。


 確かにそれが普通なのかもしれないけど、服装だけ変わるタイプの魔法少女だってあるからさ。


 「まぁそんな些細な事は良いの。座って。何か頼む?」


 「なんでも、良いです」


 「アレルギーは?」


 「無い、です」


 「じゃあこれにしましょうか。オススメだから」


 他には二人居た。


 緑色の髪をした女性と、水色の髪をした女性だ。


 水色の方は暑い日にも関わらず、長袖長ズボン、更にはマスクをしている。


 それだけなら日焼けなどを恐れているとか、顔を見られたくないとか、分からなくもない。


 ただ、飲み物を飲む時にストローを使ってマスクを着けたまま飲んでいる。


 他の二人がパフェを頼んでいるにも関わらず、その人は飲み物だけだ。


 まるで何かを隠すような、格好だ。


 俺の考えすぎじゃなければ、ただの恥ずかしがり屋だ。


 「それじゃ、新人の魔法少女、アカツキさんに我々の事をお話します」


 「よろしくお願いします」


 「そうね。まずは大前提の共有からしておきましょう。魔法少女は天使の加護をそれぞれ得ているの」


 天使の加護?


 なんか俺、神の加護なんだけど。


 まぁ、良いか。


 真剣な彼女に水を差す勇気は無いので、話を合わせておこう。


 「我々の役目は天使に代わって世界の平穏を守る事。感情を爆発させて、戦争を起こさせようとしている悪魔を狩る事が使命。ただ、未だに一度も発見した事ないけれど」


 「そうなんですね」


 「そして悪魔を守護する存在、『使徒』。目先の敵はこれらね」


 天使だの悪魔だの使徒だの、鼻で笑いたくなる。


 天使や悪魔はダンジョンのある世界で今まで一度も、その存在を確認された事ない、真の意味で幻想的神話的存在だ。


 そんな存在、存在しないと言いたくなる。


 でも加護スキルがあるんだよなぁ。


 それに彼女達の目は真剣だ。


 「アナタはポテンシャルがとても高い。きっと今の戦況を大きく変えるはずよ」


 「あはは」


 期待されても困る。


 第一、そんな自分の目で確認した訳でもない相手の為に戦いたくない。


 俺は俺のために戦うんだ。


 金が欲しいから魔物を倒す、金が欲しいから配信する。


 世界なんて、二の次⋯⋯三の次だ。


 一は紗奈ちゃん、二は俺、三は世界⋯⋯どうでも良いけどさ。


 「それでまずは自分達と同じレベル4に、アカツキさんを上げようと思うわ」


 ⋯⋯全員俺よりもレベル上かよ!


 JKに負ける大人!


 「それじゃ、前提の話は終わった事だし、自己紹介しましょうか」


 俺が魔法少女になっている理由は分からなさそうだな。


 「この子は⋯⋯」


 「ミズノ。碧水の魔法少女。勝手によろしく」


 水色の髪の女性だ。


 「うちはミドリ、緑風の魔法少女だよ!」


 その二人はなんか、魔法少女になってもあまり見た目は変わらなさそうだな。


 「それと、この世界の仕組みを自分達に教えてくれた、先生が居るわ」


 「その先生も魔法少女なの?」


 「いいえ。魔法少女で最年長かつ先輩は自分。先生は魔女よ」


 魔女か。


 「信用できるんですか?」


 「ええ。凄く美人でクールな人なんだよ」


 ⋯⋯ほう。


 あ、パフェ来た。いただきます。美味い。


 癒されるわぁ。





【あとがき】

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