物理系魔法少女、祝いの酒を飲む!

ネーム:神宮寺星夜 レベル:2


体力:S   筋力:S

防御:B   敏捷:S

器用:E   技能:C

知力:A   魔力:FFF


スキル:【魔法少女】《神の加護:ロキ》『自己再生.2』『火系耐性.1』『魔法攻撃力上昇.20』


 「レベル2、おめでとうございます」


 「ぐす」っと涙を拭うよう音を出しながら、褒めてくれる紗奈ちゃん。


 あの長期戦で俺はレベル2になったらしい。


 「もう。生きた心地がしないから、長くダンジョンに居ないでね」


 「あぁ。ごめん」


 これからアンデッドと戦う時は何かしらの対策が必要だな。


 レベル2になったからには、より上のダンジョンに行ける。


 その場合、純粋に魔物一体一体が強くなっていくはずだ。


 「それと、リッチの魔石、サモンズ・スケルトン・ロット、クエスト成功報酬、おまけにスケルトン達の魔石を合わせて、12万円になります」


 「この場で換金します。俺は疲れたから寝るために帰るけど、紗奈ちゃんはどんな感じ?」


 「無理言って有給使わせて貰ったよ。一緒に帰ろ。入口で少し待ってて」


 「はいよ」


 それから紗奈ちゃんが来るのを待って、合流してから帰る事にした。


 「星夜さんの家だと、狭いですし薄いですし、私の家に行かない?」


 「いや。女性一人の部屋に行くのもね? 直帰して寝るわ」


 「⋯⋯星夜さん!」


 腕を強く掴まれた。彼女の目は真剣だ。


 「その。今日は、い、一緒に⋯⋯」


 「紗奈ちゃん⋯⋯」


 「星夜さん」


 「無理だ。限界」


 家までは耐えられると思ったけど、体力の限界が来た。


 魔法少女の時はまだ行けると思ったが、疲れは継続され、この身体じゃ耐えられなかった。


 あんな少女の方が丈夫だと言う⋯⋯体力の問題か?


 ただ、意識が保てん。


 紗奈ちゃんにもたれ掛かるように俺は寝た。


 「⋯⋯もう。レベル2で何かお祝いしたいね」


 あれからどれくらいの時間が経ったのか分からない。だけど、俺は目覚めた。


 とてもフカフカで柔らかいベッドの上で。


 「⋯⋯ッ!」


 一瞬でクリアになった頭はすぐさま身体中に命令を出した。


 まずは布団を剥がす。


 「臭い! 紗奈ちゃんの良い匂いだ。濡れてる様子は⋯⋯なしっ!」


 ゴミ箱が目に入ったので、速攻でチェックだ。


 ⋯⋯よーし。


 「あっぶねぇ。紗奈ちゃんをキズモノにしてしまうところだった。既成事実の確認は無し! セーフセーフ」


 もしもしてしまい、責任を問われていたら⋯⋯俺はむしろ喜んでしまったかもしれない。


 嫌だ。


 無責任な男とは思われたくない。⋯⋯昔のアレを覚えているなら、無意味な事かもしれないけど。


 「⋯⋯てか、紗奈ちゃん良いところに住んでるな〜タワマンかよ」


 部屋の窓から見える景色が凄すぎる。見よ、人間が普通に見えん。


 「魔法で望遠的な事はできないかな? できなければステッキで⋯⋯って、呑気にしている場合じゃないな」


 紗奈ちゃんを探す為に部屋の外に出ようと思う。何かを漁る気は無い。


 変に触ると凍る気がするのだ。⋯⋯だって、この部屋冷房何も付いてないめっちゃ寒いから。


 「紗奈ちゃん居ますか〜」


 「居ますよ〜」


 「うわっ!」


 な、なんで背後から!


 ま、窓が空いている⋯⋯なんでそっから入って来たの!


 つーか、ここかなりの高さだったけど、どうして登れてるの!


 そもそも、受付嬢の給料ってそんなに良いの! 普通にうらやま!


 「その。寝かせて貰って悪いね。ありがとう。めっちゃ快適だった。頭中もクリアよ」


 「それは良かった。少しだけ海の方に行ってました」


 ここ都内なんだけど⋯⋯まぁ良いや。


 「それで⋯⋯そのでっかい氷の中に入っている魚を?」


 「はい! マグロを捕まえて来ました。これで寿司でも作りましょう!」


 「それは嬉しいけどさ⋯⋯捕まえたの?」


 「はい」


 「そっか」


 培養されたマグロを買ったのではなく、野生のを捕まえたのね。魔物大丈夫だったのかな?


 紗奈ちゃんの知らない一面を堪能したところで、腕によりをかけた紗奈ちゃんの寿司ができあがっていく。


 魚を捌ける事にも驚いたが、マグロを生かしたまま、海からここに来た事にも驚いた。


 俺は紗奈ちゃんの事を全然知らないようだ。


 「時間なくて触れなかったけど、星夜さん、最速のレベル2ですよ」


 「え、そうなの!」


 「はい」


 それ言ってくれたらもっと元気出たのに⋯⋯多分。


 「それってなんかある?」


 「噂されたり、クランとかのスカウトが来たり⋯⋯ギルドからは何も無いよ。ただ、私が祝ってあげる」


 「それは史上最高の褒美だね」


 可愛い人から手作りで振る舞われる飯程、良い物は無いだろう。


 堪能しよう。


 「それと、これも持って来たよ!」


 「そ、それは!」


 「はい! 高めのお酒でぇす! 星夜さんが掛け持ちバイトして買ってくれた、私が成人祝いで貰ったお酒でーす!」


 覚えているところにも驚いたが、それを買っている事にも驚いた。


 敬語なのは⋯⋯昔のイメージかな?


 本当に今日は豪勢だ。


 それだけ心配にさせてしまったのかもしれない。反省だ。


 「「いただきます」」


 酒なんて、いつぶりかも分からない。


 睡眠の質を落とさないために酒は飲んでいなかった。次の仕事に響くから。


 そもそもそんな金も無かった。


 久しぶりの酒が高級な酒。


 テンションは最高潮だ!


 「星夜さん、改めて、レベル2と世界最速のレベル2、おめでとうございます! カンパーイ!」


 「ありがとう! カンパーイ!」


 ぐびぐび。きゃはー美味い!


 めっちゃ冷えてる! しかもオシャレな氷まで入ってるよ。


 「さ、紗奈ちゃん。暖房付けても良いですか?」


 「どうぞお客さん用の電気毛布です」


 「あ、ありがとう」

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