物理系魔法少女、ゴリ押しができるなら問題ないと思う

 数が多い時の対処法として、フリスビーなどを利用した投擲範囲攻撃を俺は持っている。


 だが、広範囲に広げる為には『溜め』の時間が必要となる。


 しかしお相手のリッチさんはそれを知ってか分かってか、今のところ『溜め』の時に魔法を使ってきやがる。


 俺のマジカルシリーズも全て、全力の攻撃を出すために『溜め』の時間が必要なのだ。


 「脳が無いくせに俺よりも考えている事多そうだな」


 片手間で破壊できるスケルトンは脅威では無いが、問題はスケルトンナイトだ。


 倒せない程ではないが、残り四体居る。


 しかも、厄介な事にあいつら学習能力を持ってやがる。


 盾を破壊して倒す戦法も一回で対策されたし、剣の攻撃のキレも上がっている。


 避ける事を優先して来たので、攻撃が当てずらい。


 「ここまで攻撃を避けられるとは⋯⋯何が原因なんだよ」


 「ドコマデタエラレル」


 「お前はカタコトだな! どこぞのネクロマンサーなんて一年でペラッペラの日本語で会話してくれたぞ!」


 弱いダンジョンじゃない場所でアイツが生まれていたら、結構ピンチだったのでは無いだろうか?


 俺は攻めきれないが、相手も俺に致命傷を与えられない。


 どっちも突破力に欠ける。


 「身を切る覚悟で突撃した方が早いか?」


 スケルトンナイトを全滅させれば、奴らはそれ以上復活はされない。


 とりあえずピンチに追い込まないとな。


 「ふぅ。まずは手前のお前からだ!」


 スケルトンは突進で破壊しながら突破し、スケルトンナイトに肉薄する。


 ステッキを捨てる。細かい動きはこっちの方がやりやすいからだ。


 「パンチ!」


 盾を粉砕するだけに終わったパンチ。後ろに飛ぶスケルトンナイト。


 強く地面を踏みしめ、蹴る。


 加速した勢いを利用して、突き刺すような殴りを腹に決める。


 「ふぅ。あと少し⋯⋯別に脅威じゃないな」


 そう呟いた矢先、残り三体のスケルトンナイトが同時に攻めて来た。


 一体は盾を構えて、残りの奴らは背後に居る。


 「⋯⋯ッ!」


 今、リッチとの間にスケルトンナイトが居る。死角になっている。


 一体が肉の壁ならぬ骨の壁となって、攻撃終わりに残り二人が攻撃するつもりなんだろうが、そうはいかない。


 今のお前じゃ、『溜め』の時に魔法を撃てねぇよな。


 バットを握る。


 「必殺マジカルシリーズ、本気振りマジカルスイング


 「ボーンウォール」


 「なにっ!」


 骨の壁が目の前にいきなり生えて、俺の攻撃を防いだ。


 いや、防いと言うよりも勢いを殺したせいで、盾を破壊する程度の威力しか残されていなかった。


 三体当時に攻撃される!


 『相手の方が賢いのなんなん?』

 『リッチについて無知なんだなぁ』

 『リッチは眷属と色々と共有しているって実験結果あるから』

 『ピンチなのに誰も焦ってねぇw』


 同時に振り下ろされる刃。


 「うっらああああ!」


 スイングは斜め上を狙って振るっていた。


 止まるな。進め。


 さっきの攻撃の残った勢いを力に変えろ。


 「ああああああ!」


 回転力を使ってスケルトンナイト共の剣を破壊する。


 「武器の無いお前らに、何ができる!」


 「ボーンウォール」


 囲むように骨の壁が出て来るが、さっきので簡単に破壊できる事くらいは知っている。


 破壊できるなら、いくら重ねようが破壊して突破するだけだ。


 「オラオラオラオラ!」


 壁を破壊して、見えたスケルトンナイトの身体を粉砕する。


 『粉砕』

 『玉砕』

 『大喝采』


 「はぁはぁ。残りは雑魚と大将のみだな」


 「⋯⋯ダークネススフィア!」


 無数の黒い球体を高速で飛ばして来る。球体だ。


 「今の俺なら、ホームランを何十回打てると思ってんだ!」


 避けて、弾き返すのを定めたら、片手でバットを振るう。


 「弾けて、吹き飛べ!」


 相手の魔法を跳ね返して、倒す。


 「成功だ。魔石、貰うぜ」


 「ミズカラ、ツカウ、マジュツ、シヌ、ハ、マヌケノミ」


 「お前も復活するのかよ」


 「マリョクアルカギリ、ワレ、ヨミガエル」


 ⋯⋯あ、マジで?


 本体復活するなら、何かしらの対策しないと倒せないと思ったけど、なんだよ普通に倒せんじゃん。


 「じゃあ、魔力尽きるまで、てめぇを殴る」


 バットなんて要らねぇ。拳で十分だ。


 ステッキをマフラーにして巻いておく。邪魔だけど、捨てて放置もできん。


 魔法少女の衣装も軍服とかに変えたいが、配信中なので遠慮する。


 「それじゃあ、我慢比べと行こうか」


 「アイスショット」


 「しゃらくせぇ」


 相手の魔法を裏拳で破壊する。


 一歩、また一歩と進む。


 魔法を弾き飛ばしながらリッチに肉薄する。


 そして、拳を突き出して破壊した。


 「げっ、風圧で吹き飛ぶのかよ」


 ちょっと面倒だな。それでもやる事は変わらない。


 「そら、もっかい!」


 復活する度に破壊する。


 「ムイミ」


 こいつ、どっから喋ってるんだよ。


 「ワレ、マリョク、ボウダイ、チカラツキル、キサマ、サキ」


 「あぁそうかよ。でも俺も体力には自信あるぜ。なんせ、一度も体力切れを経験した事がねぇからな」


 あ、もちろん魔法少女の時である。


 この身体、体力が無限かと思う程に疲れを知らない。


 「メンタルだってある方だぞ」


 こちとら元ブラック企業の社員だぞ。


 「何時間だって付き合ってやるよ」


 体力切れ、期待すんなよ。


 それから何分、何十分、何時間経過したか分からない。


 本当にリッチの魔力は多いらしく、ひたすら殴って倒した。


 雑魚が近寄って来ても、その度に風圧で砕いた。


 相手の復活に掛かる時間はコンマ五秒。約一秒で二回倒せる。


 それを淡々と繰り返す。


 吹き飛ぶのが面倒だったが、その度に肉薄しては倒した。


 それを繰り返す。


 時々言葉を出したが、今は昔のように、心を殺し、無であり作業を熟すように、淡々と破壊した。


 『脳筋⋯⋯ちょっと怖いわ』

 『わぉ。まだやってた。もう朝の二時よ?』

 『人はそれを深夜と言う』


 『安定のゴリ押し』

 『何も対策してないのはおかしいって』

 『削れるなら倒せる理論』


 『リッチ既に魔法使ってねぇ』

 『再生優先してんのかなぁ』

 『アンデッド対策が必須な理由がはっきり分かったね』


 『誰か助けに行かないのかな?』

 『別に勝てるだろ』

 『疲れ知らずの魔法少女』





【あとがき】

お読みいただきありがとうございます!

この度、20話を超えました!

魔法の使えない魔法少女、中身は元サラリーマンの魔法使い、今後ともよろしくお願いします!

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