物理系魔法少女、録画中だと思っている
「これ、ちゃんと撮れてるのかな? あ、挨拶考えるの忘れてた⋯⋯後付けで良いかな?」
魔物を倒しながら考えてみよう。
紅き魔法少女、アカツキ⋯⋯ん〜なんかしっくりこないな。
「それにしても、ダンジョンとは思えない程、ちゃんとした木って感じだな。うん。木だ。何言ってるんだろ」
ちなみにこれ、抜き取ったりできるのかな?
『ぐぎゃ!』
『ぐかっ!』
「緑の餓鬼、ゴブリンだよね。うっし、いっちょ殴りますか」
あ、弁当は一度木の近くに置いておこう。
ゴブリン、俺のパンチをくらえ!
「魔法少女の拳はダイヤよりも硬い!」
ゴブリンの頭に向かって放つ。
「オラッ!」
ぶちゃ、ごぎっ、肉が弾ける音と骨が粉砕される音、それが同時に俺の鼓膜を揺らす。
たったの一撃でゴブリンの頭が綺麗に吹き飛んだ。いや、木っ端微塵にした。
「魔石が手に入るのはありがたい」
金稼ぎは二つだからね。
魔物を倒すと手に入るのはキルポイント、ドロップアイテムの二つだ。
『ぐかっ!』
「ふんっ!」
ゴブリンの棍棒くらいなら防ぎ切れるね。
「次は蹴り!」
蹴飛ばす力も強いので、案外楽に二人のゴブリンを倒す事ができた。
だけど、腹を攻撃するのは今後は控えるべきだな。
魔石が手に入らん。
「お、奥に進んで行きます」
配信に慣れてないけど、こんな感じで良いのだろうか?
まぁ、後から色々と頑張って編集するつもりだし、今は良いだろう。
パソコンなら家でも仕事するためにあるしね。
「空気が綺麗なのか、息苦しい感じがしないな」
ん?
視界の左端で何かが光ったような。
バチッ、木がへし折れる音と共に、俺の腕に命中した矢が折れた。
うげっ、ちょっとだけ血が流れた。
「弓矢使えるゴブリンって居るんか。あ、口調設定考えるの忘れてた。後で良いか」
弁当を持って、ステッキが一定距離を保つイメージをしながら追いかける。
「地の利は相手の方が有利⋯⋯木のせいで全然追いつけない!」
あーくそ!
「逃げるなバカ!」
⋯⋯俺も木の上に登って、忍者の如くぴょんぴょんしたら追いかけられるか?
矢は木陰に隠れて躱しますっと。
「まずは木を登るか」
包みを口で加えて、木に登るためにめいっぱい力を込める。
「うそん」
ボキッとそこそこ大きいであろう木が折れた。
その驚きの光景で弁当を落としそうになったので、急いで拾い上げる。
「力のコントロールができて無いのか? 自分の身体なのに、自分の身体じゃないみたいだ」
だがあのクッソムカつく笑みを浮かべているゴブリンの攻略方法が思いついた。
「これが、悪質タックルじゃ!」
俺はゴブリンに向かって直線でタックルで進む。
俺の突進は目の前の障害物、木を粉砕して無理やり進んで行く。
少しの減速はあるが、それでも追いつけない程じゃない。
「追いついたぜゴブリンさんよぉ」
『ぐぎゃ!』
「おせぇ!」
この近距離で弓を構えても意味ねぇよ!
その弓、蹴飛ばしてやる!
あ、風圧で本体が吹き飛んだ。
まじで力のコントロールを覚えないと、外では永遠に使えないな。
使う気はないけど、もしもの時があるからね。
練習は必要だ。
「弁当持ってるから、足で終わらせてやる」
武器を持ってないゴブリンなんざ、敵じゃねぇ!
「かかと落とし!」
ふぅ。
あ、頭から腹までの攻撃になっちゃったから、また魔石が落ちなかった。
報酬が減る。
「あ、傷が治ってる。これがスキルの力かね。怖いけど頼もしいな」
ま、普通に痛みは感じるからあんまり使いたくないスキルだけどね。
ステッキが使えたら、もっと戦える方法はあっただろう。
ぐっ、この身体とスキルに早々に慣れ始めている自分が嫌だ。
「ゴブリンの群れとか、そこら辺を見つけたいな」
悪質タックル突進移動は目立つしうるさいので、使わないで普通に進んだ。
「見つけた見つけた」
ゴブリンの十体の群れ発見。
一体だけ杖を持ってるけど、もしかして魔法を使ったりするのか?
魔法少女の俺は魔法が使えないってのによ。
敗北感があるわ。
「魔法少女らしく、不意打ちで一体倒す」
まずは準備だ。
お、すぐに終わった。
まずは近くにある手頃な石を持ち、弁当は安全な場所に放置、バレてないうちに弓兵のゴブリンに向かって石を全力でシュート。
見事に命中して頭を貫いた。
当然、それで気づく。
「オラッ!」
瞬時に近づいて手前のゴブリンの頭を粉砕、そいつの足を掴んで他のゴブリンに向かってぶん投げる。
それで作った隙で肉薄して、膝を頭にぶち当てて粉砕する。
「棍棒も、粉砕じゃ!」
背後からの棍棒の攻撃を固めた拳で粉砕し、爪を立てて顎を狙って振り上げる。
うん。
予想通り五本の爪痕のような感じで身体を引きちぎれたわ。
「これぞ魔法カッコ物理だ」
と、魔法が来た。
火の球体か。
横にステップして回避。
「って、あっちの方向は弁当がある!」
間に合え!
間に入り、自分の身体を盾にして防ぐ。
「熱いな」
また来やがった。
俺の攻撃は強くて衝撃波でもゴブリンを吹き飛ばせた。
なら、衝撃波で魔法を吹き飛ばす事もできるんじゃないか?
「吹き飛べや!」
思いついたら即実行!
「オラアアアアア!」
プニィ、何か柔らかくも熱い、不思議な感触が拳に当たり、水風船が割れるような音と共に弾けた。
『ぐきゃ?』
「うそん」
俺は素手で魔法を粉砕したらしい。
『脳筋!』
『力押し嫌いじゃないぜ』
『初見です』
『初見さんいらっしゃい』
『これどう言う状況?』
『生配信を録画と勘違いしている可愛い自称魔法少女が殴って魔物を倒す、脳筋生配信』
『正義の味方らしく、不意打ちを綺麗に成功させたぞ』
『魔法が変な形になってから粉砕しとる』
『ああはならんだろ』
『つええええ』
『ゆーて相手ゴブリン』
『片手で頭粉砕できるパワーは中々ない。Aではない』
『初心者の筋力Sなんか?』
『障害物は超えるんじゃない、壊して突破だ!』
『脳筋スコー!』
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