第3話 初めての浮気心

傾く感情、その瞬間




舌を絡ませ白いうなじに指を這わせ、息づかいが闇に消えて行く。


通りすがりのヘッドライトで尚光の福耳が露になる。「見えてるかな・・・。」孝の眼を見た。「見えて無いよ?」コクりと頷いた孝に「好き。」 言葉の反射で舌を差し入れる。


もう20分くらいそうしている。「脚が帰りたがらないの。」尚光の言葉が愛しい。もう一度抱いた。


「これから何処か行く?」ううんと、首を横に振り「だって11時半だからお父さんが心配するわ。」ごもっともな意見だった。西福尚子(にしふくしょうこ)を愛してしまった。もう後戻りは出来ないと薄薄、感じていた。




孝が離れた。身体の温もりが消えて行く。




11月30日、夜半の事だった。


午前1時を回った頃、帰宅。


妻の顔を見ずに、「ただいまチビは寝た?」


202号室の重い鉄玄関ドアを開いてそそくさと2人の娘の顔を見て入浴。




「では次の日曜日に!」いつの間にか恋人になっていた。


「眼にゴミが入ったの・・・。」


仕方なく孝は両手で尚子の顔を近づけた!でも、見えない。


午後が終わりかけだったからだ!


ルームライトの力を借りて見ようとしたが、顔を再接近せねば探す事が出来ない。


いつの間にか「取れちゃいました。」と、言われたが、尚子のメイクが崩れていないか心配した孝は顔を再接近させた。


その拍子に眼を閉じた。尚子が可愛くて成り行きで唇を重ねた。


孝のパッションが尚子に傾いた刹那だった。


俺でも出来るじゃん彼女が!


ちょっぴり自信とかやる気とかフルパワーで漲っていた。


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