ÆTHER MEN
L・M・バロン
第1部 フォー・ホースマン
第1話 反旗①
その男は人気が無く、どんよりとした蝸牛の風俗さながらの路地裏で、まるで初めてバットを握ったかの様な、おぼつかない手つきで煙草に火を付け、吸った。名をジェイムズと言った。
彼は独り言の様に呟いた。「もしも…もしもだぜ?もしもだが…もし俺がお前らに『教皇をぶっ殺しちゃわないか?』って提案したら俺を殺すか?殴るか?密告するか?まぁいいや、妄想はよそう。俺の悪い癖だ…ハハッ、いや、笑い事では無かったか、そうだな、そうだったな…んで本題、そう、ズバリお前らの答え、言い分、感想を聞きたい。教えてくれ」
横から響くのはラーズの声。
「別に着いて行くのはいい、いいが、その気持ち悪い質問の仕方をどうにかしろ。ほら、この前だってレストランでそんな注文の仕方してよォ…定員のあの躾のなってない仔犬を見るような目、俺は一生忘れない」
「あいつはバイトだ、不慣れなだけだ」
「言い訳だけは一丁前だな、その頭があるならもっと別の事に使え。例えば今話題の教会とか」
「使えたらどんなに楽か、って考えてますよ、その人」
「水を指すなロバート…」
ラーズはロバートを庇うように言った。
「ジェイムズ、完全に自信無くしたな、オモシレーや」
そこへ夏場の蛙の様な騒がしい声を上げながら近づく男が一人、名をカークと言った。
「あいからわずオモロそうなことやってんなァジェイムズゥーーーーッ!!!!!!!!!俺もその話に混ぜろッ!よければそのプロジェクトに参加させろッ!」
呆れた声でロバートは言う「下手したら死ぬのに面白そうだからって理由で…」
「それが奴の長所だぜ、まぁ短所でもあるが。つまりは吹き戻しだ」述べたのはラーズ
「ハァ?死ぬだァ?そんなの聞いてねぇぞ?」
間抜けた様にカークが言った。
その場の誰もが、こいつは馬鹿だと、そしてこの逃避行がどれだけ過酷になるかをも、瞬時に悟った。
ここで1つ余談ではあるが、この場にいる全員は、あらかじめ教会から逃げる計画を立てるためにこの路地に集まったはずである。勿論カークも何をするかは分かっていたはずなのだが…。まぁいいや、あいつは諦めよう。
「解説が役割を放棄するなよ…」
カークが馬鹿なだけである。
「ところなんですけど…いつ反旗を翻すんですか?」ロバートが誰に言う訳でも無く尋ねる。
「何言ってんだ、今からやるんだよ」ラーズが返す。「おえゥ?今からァ?はぁ!?聞いてねぇぞ!おいジェイムズ!答えろォ!オイ!」
「うるさいですよカークさん……リーダー、司令を」
「全員、教皇の部屋に行くぞ」
「「「オウ!!!」」」
こうして4人は反旗を翻すべくその足を進めた―――――。
ちなみにこれは完全に余談なのだが、彼らは教皇を殺した後の計画を立てていない。それどころか、なぜ教会に反旗を翻そうとしたのかすら、彼ら自身は理解していない。
つまり、あの時までは、ただの内輪ノリであったのだ。
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