2 出立と告白1


「旅に出ようかと思ってるんだ」

「えっ、またですか?」


 ニーナが不満げな顔をした。


「……寂しいです」

「ごめん、ニーナ……」

「あ、いえ、今のは私の個人的な気持ちですからっ」


 俺が頭を下げると、ニーナは慌てたように両手を振った。


「すみません。レインさんに不満を言うつもりはないんです。その、どこを旅するつもりなんでしょうか?」

「ああ、実は昨日夢を見て――」


 俺は夢で見たことをすべて話した。


 俺を呼ぶ、謎の声。

 オーロラが輝く場所と、そこに集まる人々。


 その全員が体の一部に紋章を持っていた。

 そう、おそらくは『天の遺産』を持った連中だ――。


「俺は、俺の力のルーツと向き合いたいのかもしれない」

「……もっと強くなるために、ですか?」

「えっ」

「なんだか、レインさんの目がそう言っているように思えます。より強大な力を求めて……飢えたように……」


 ニーナが俺を見つめる。


「レインさん、少し怖いです……」

「ニーナ……」

「あ、ごめんなさい……」


 ニーナはハッとした顔になる。


「そ、その、そういうつもりじゃ……」

「いや、いいんだ。ニーナの言う通りかもしれない」


 俺は苦笑交じりにうなずいた。


「光竜王を倒したんだし、さしあたっての『世界の危機』なんてのは存在しない……はずだ。俺が力を求める意味はないのかもしれない」

「……もしかして、光竜王以外にも『世界の敵』がいるんですか?」

「いや、マルチナにも聞いたけど、そういう動きはないってさ。明確に世界に敵意を向ける存在を『世界の敵』って言って、勇者の家系にはそういうのを感知できる能力があるって」

「じゃあ、マルチナさんは『世界の敵』の気配を感じ取れる……?」

「そうらしい」


 俺はうなずいた。

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