2 一対多数でも無双する


『フレイムアーマードオーク』たちが一斉に俺の方を向く。

 次の瞬間、どどどど、と地響きを立てて、奴らが殺到した。


「付与魔術、第三術式起動──」


 さっき見せてもらった、マルチナの剣術スキルを思い出しながら念じる。


『マルチナ・ジーラの剣術スキル【乱れ斬り・百刃乱舞】を学習ラーニング

『強化ポイント「+3000」を消費し、スキルを強化したうえで、術者レイン・ガーランドに付与する』

 モンスターたちはもう目の前まで迫っていた。

 俺はすかさず剣術スキルを発動した。


「【乱れ斬り・万刃乱舞ばんじんらんぶ】!」

 刹那――。


 俺の動きは音速を突破した。


 ごうっ!


 衝撃波をまき散らしつつ、モンスターたちの間を駆け抜ける。

 すれ違いざまに一撃、また一撃――。


 まさしく万の斬撃を『フレイムアーマードオーク』すべてに満遍なく浴びせていく。

 多少の衝撃波は発生するものの、遺跡内を壊すほどじゃない。


「がっ……ぐ、あ……」


 奴らは反応することも、おそらくは認識することさえできなかっただろう。

 自身が斬殺されたことを。


 数秒後――。

 動きを止めた俺は、静かに剣を収めた。


 同時に、すべてモンスターが倒れ伏す。

 無数の肉片に斬り刻まれて。


 リリィのスキルをもとに、対単体では最強クラスの【虹帝斬竜閃こうていざんりゅうせん】を会得したように――。


 今回はマルチナのスキルを進化させ、対多数での最強クラスの剣術スキル【乱れ斬り・万刃乱舞ばんじんらんぶ】を習得完了だ。




「すごかったです、レイン様……! 今の動き、あたしにも完全に目で追うことはできませんでした……」


 リリィが感激した様子で俺のところまで駆け寄ってくる。


「悔しいけど、あたしも」


 マルチナがふうっと息をついた。


「あたしのスキルをあそこまで進化させられるなんて。ちょっと、すごすぎじゃない」

「スキルを強化する付与魔術だ。マルチナのおかげで敵を突破できたよ。ありがとう」

「えっ、あ、い、いえ、そんな」


 礼を言うと、マルチナが顔を赤くした。


「べ、別にお礼なんて……いいけど」


 意外と照れ屋なんだな、マルチナって。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る