9 チートの由来
「なんなんだ、おめえの力――人間に許された領域を、超え過ぎてやがる……!」
アルベルトさんは呆然とした顔で俺を見ていた。
えっ、俺の付与魔術ってそんなレベルに達してるのか?
「アルベルトさん、ちょっと落ち着いて。いつもあんなにドッシリ構えてるじゃない」
「……あ、ああ。そうだな。取り乱しちまった……悪いな」
アルベルトさんは俺たちに頭を下げる。
それから、あらためて語りだした。
「さっきも言ったが……おめえの剣は、少なくとも神造級レベルに達している」
と、アルベルトさん。
「もともと伝説級だったのが、おめえの付与魔術で+10000なんていう桁違いの強化までされちまったからな。
「アルベルトさん、俺はこの剣を鑑定してもらいたいんです」
あらためて要件を告げる俺。
「+10000を超える強化ポイントを注いだとして……剣が耐えられると思いますか? それが知りたいです」
「そうだな……もう一回、おめえの剣を見せてみろ。『耐久性』に絞って詳しく『鑑定』する」
「どうぞ」
剣を受け取ったアルベルトさんは、鑑定スキルを発動させ、刀身から柄までをじっくりと見ていた。
そうして二十分ほどが経過する。
「――なるほど。おめえの能力もすごいが、さすがにこいつは伝説級の剣だ。+10000くらいじゃビクともしてねぇ」
アルベルトさんが顔を上げた。
「俺の見立てじゃ、+20000までなら問題ない。だが、それを超えると剣への負担が限界を超えて、いずれは壊れるだろうな」
「伝説級の剣でも……20000が限度なのか」
「仕方ないだろ。おめえの付与魔術が規格外すぎるんだ」
と、アルベルトさん。
「一体、どうやってそんな力を身に付けた?」
「どうって――」
俺の方が戸惑ってしまう。
「特別なことは何もしてないんです。俺はもともと別のギルドで数年間、所属冒険者の武器や防具を強化し続けてきました。で、そこを追放されて……今まで強化したポイントを取り返して、自分の武器に付け直してみたんです。そうしたら、+30000まで付与可能というアナウンスが出て――」
「+30000か。どんなに腕のいい付与魔術師でも上限はせいぜいが700から1000。30000なんて数値は聞いたことがねえ」
アルベルトさんが言った。
「心当たりはないんですか、レイン様?」
リリィがたずねる。
「ああ、特に変わった訓練をしたわけじゃない。普通に強化を続けてきただけだ」
「理由は分からねえが……きっかけはあるんじゃねえか?」
「えっ」
アルベルトさんの言葉に首をかしげる俺。
「ギルド追放だよ。おめえはそれによって落胆なり失望なり、あるいは絶望したんだろ? 同時に強い怒りを覚えただろう。そいつがトリガーになった、ってことかもな」
「トリガー……か」
もしかしたら――。
ふいに思いついたことがある。
根拠なんてない、ただの仮説。
俺はこのチートレベルの付与魔術を突然身に付けたわけじゃなく。
以前からずっと俺の中にあったのかもしれない。
それが今言ったトリガーによって、使用可能になった――?
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