第6章 伝説級の剣、集う

1 訪問者マルチナ

 しゅおおお……んっ。


 しばらくして『燐光竜帝剣レファイド』から光が消えた。

 突然の発光現象に俺は戸惑う。


「なんだったんだ、今の……?」

「伝説の剣……」


 ミラベルがつぶやいた。


「ん、知ってるのか? これは『光竜の遺跡』ってところで手に入れた『燐光竜帝剣レファイド』だ」

「聞いたことがある。伝説級の剣の中でもAクラスに位置する最強剣の一つ」


 目をキラキラさせている。


「Aクラスの剣……すごい」

「ミラベルってそういうのに興味があるのか?」

「高く売れる儲かる」

「金が理由だった!」


 思わずツッコむ俺。


「伝説の剣が突然光る……なんて、何かの前兆かしら?」


 ブリジットさんが首をかしげた。


「前兆……」

「古代からの由緒ある剣でしょ、それって」

「ああ。元々は勇者が持っていた剣らしいからな」

「神とか魔王とかそういう超越的な何かが目覚めたとか」


 ブリジットさんが楽しげに言った。


「おとぎ話じゃないんだし、さすがにそんなことは……」


 ない、と思いたい。




「なるほど──あたし、分かっちゃった。伝説級の剣同士が共鳴しているのね」




 ギルドに誰かが入ってきた。


 振り返ると、一人の女が立っている。


 年齢は二十歳過ぎくらいだろうか。

 たぶん、俺より一つ二つ年上だろう。


 足元まで伸ばしたオレンジ色の髪に、瞳の色は燃えるような真紅。

 溌溂とした雰囲気の美女だった。

 スレンダーな体に身に付けているのは青い騎士服だ。


「で、君がその中心──『燐光竜帝剣レファイド』の剣士ね。あたし、分かっちゃった」

「君は……?」

「あたしはマルチナ。ウラリス王国から来たの」


 女が名乗る。


「君に会うために、ね」

「俺に……?」

「本来あたしが継承するはずだった『燐光竜帝剣レファイド』を、君が代わりに持ってるって聞いたから。ここまで来たのよ」

「君が、この剣を継承……?」

「予定よ、予定。別に君の剣を取り上げに来たわけじゃないから、安心して」


 笑うマルチナ。


「それに、今のあたしにはこれがあるし」


 と、背中の剣を抜き放つ。

 刀身も、柄も、すべてが青色の剣だ。


「伝説級の剣『蒼天牙ファイザ』。さっき、この剣が光ってたの」


 マルチナが告げる。


「君の剣もでしょう? たぶん伝説の剣同士が共鳴しているのよ」

「共鳴?」

「大いなる敵の目覚めに対応して、ね」

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