7 A級昇格クエストで無双


 魔族の放った衝撃波が俺のところまで飛んできた。


 俺は──避けない。


 ばぢぃっ!


 眼前で弾け散る衝撃波。


 俺だけは直撃を受けても無事だった。

 着ている布の服はその後も強化ポイントをつぎ込み、今は剣と同様に+10000の防御強化を施してある。

 それに加え、状態異常を防ぐ魔法のアクセサリーを三つ身に付け、これらも当然+10000の強化済み。


 もっとも、それで手持ちの強化ポイントはほとんど使い果たしているから、他の装備品は付けていない。

 今後の討伐クエストでまた強化ポイントを貯めたら、次の装備品を考えるつもりだ。


 ──ともあれ、今は中級魔族戦である。


「なんだ……? 貴様、今何をした」


 中級魔族が怪訝そうな顔をする。


「防御魔法を使った様子もない。防具を身に付けているわけでもない。どうやって俺の攻撃を防いだのだ……!?」

「防具なら身に付けてるよ、ほら」


 俺は自分が着ている服を指し示す。


「! 貴様、俺を愚弄するか!」


 魔族がキレた。


「いや、本当にこの服が防具代わりなんだけど──」

「うるさい! 今度こそ殺す! この俺の最強魔法でぇっ!」


 魔族は両手を突き出し、巨大な光弾を放った。

 俺は、またも避けない。


 ばぢぃぃぃぃぃぃっ!


 結果は先ほどと同じ。

 魔族の最強呪文らしい光弾は、俺の布の服にあっさりと弾かれた。


「馬鹿な! ええいっ!」


 さらに光弾が飛んでくる。

 俺は避けない。


 ばぢぃっ!


「えええええいっ!」


 さらにさらに光弾が飛んでくるが、俺はもちろん避けない。


 ……そんな攻防を十度ほど繰り返し、


「はあ、はあ、はあ……な、なぜ……どうなっている……!?」


 さすがに魔力を激しく消耗したらしく、魔族は肩で息をしていた。


「ちょっと強化してあるだけだ──じゃあな!」


 剣を振り下ろす。




 ごうっ……!




 衝撃波が吹き荒れた。


 切り札である【虹帝斬竜閃こうていざんりゅうせん】を使うまでもない。

 空間をも切り裂く斬撃衝撃波を食らい、魔族は一撃で消滅した。


「魔族を倒したし、昇格クエストをクリアってことでいいんだよな?」


 あっけなさすぎて、今一つ実感がわかないけど──。


 これで俺はA級冒険者になれるってことだよな、うん。


「す、すごい……!」


 マーガレットが呆然とした顔で俺を見ていた。


「何者なんだ、あんたは……リリィ先輩が騒ぐわけだ……!」

「いや、まあ」


 ちょっと照れてしまった。


「あんたみたいなやつがS級に行くんだろうな……」


 ぽつりとつぶやくマーガレット。


「俺は今回、ほとんど何もできなかった。最終的な裁定は待たなきゃいけないけど、たぶん昇格クエスト未達成と判断されるだろう。というか、達成者はあんただけになると思う」

「え、そうなのか?」

「このクエストは中級魔族との戦いにおいて、どの程度貢献したのか、っていうのを判断するんだ。戦いの様子は遠隔視呪文で確認してるそうだからな」

「そういう仕組みなのか……」


 よく知らないまま、半分勢いでこのクエストに参加してしまった。


「次は俺も絶対に受かってみせる。先にA級に行ってまってろ、レイン」

「……ああ、分かった」


 彼女が差し出した手を、俺は強く握り返したのだった。

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